写真:全農・安田常務理事/撮影:ラリーズ編集部

JA全農(全国農業協同組合連合会、以下「全農」)は、約10年に渡り卓球を応援し続ける言わば「卓球スポンサー企業のパイオニア」だ。

石川佳純選手との所属契約に加え、卓球日本代表や各年代別大会への協賛など幅広く日本の卓球を応援する。全農は数あるスポーツの中で、なぜここまで卓球に力を入れるのか?スポンサー支援の狙いと効果について、安田忠孝常務理事を直撃した。

このページの目次

1 食の訴求になぜ卓球?2 トップアスリートにとどまらないジュニア世代への支援3 今後の卓球サポートプランとは4 全農:卓球応援実績一覧4.1 トップアスリート4.2 小・中学生5 卓球×全農関連記事はこちら

食の訴求になぜ卓球?

ーー卓球への協賛はいつから?
安田忠孝氏(JA全農常務理事、以下安田):はじまりは2009年から2012年のロンドン五輪までのオリンピックスポンサー契約です。ロンドン五輪で日本選手団を食の面で支援させていただいたのをきっかけに、2011年4月から卓球日本代表オフィシャルスポンサーとなり、現在も支援を継続させていただいています。




写真:2012年ロンドン五輪卓球メダリスト記者会見での石川佳純/提供:YUTAKA(アフロスポーツ)

ーー数あるスポーツの中で卓球にここまで力を入れている理由は?
安田:正直に申し上げると、卓球による効果がここまで得られるとは当初想定していませんでした。親しみやすさと広がりの大きさ。これが卓球の魅力です。

卓球は全国各地で小さな子どもからお年寄りまで、幅広い世代が取り組む競技。裾野が広いですよね。全農のビジネスフィールドである「食」「農業」「健康」も地方の年輩の方からお子さんまで幅広い層がステークホルダーですので、そういう意味でもとてもマッチングしている印象です。




写真:2013年7月の全農杯全日本選手権カブ男子の部、張本智和(当時10歳)が優勝/提供:YUTAKA(アフロスポーツ)

私も先日全農杯ホカバ(卓球の小学生以下カテゴリ=ホープス、カブ、バンビ)の試合を見に行きましたが、正直驚きました。小学生であんなに卓球が上手だとは。そして応援に来ている親御さんも真剣で大会の雰囲気も素晴らしかった。各地域で年輩の方や親御さん世代の影響を受けた子どもたちが卓球を始める。そして頑張れば全国大会、世界へと羽ばたいていける。こういった広がりがあるのが素晴らしいと思っています。

ーー実感がこもってらっしゃいますね。卓球へのスポンサーシップを開始されてから約10年。振り返ってみていかがですか?
安田:卓球への取り組みに対して、組織内はもちろんのこと、一般の方からも極めて好評です。新入職員の採用を担当していると、「全農のことは卓球で知りました」という学生さんもいらっしゃるぐらいです(笑)。「卓球といえば全農」というイメージが定着している証拠ですね。

また昔は全農の事務所にも卓球台が置いてあったり、全国事業所対抗の社内卓球大会もあった。そういう意味でも馴染みやすかったのかもしれません。今でもその名残りで平塚にある営農・技術センターにはまだ卓球台が置いてあったりします。

ーー石川佳純選手の所属企業としてのイメージも定着しています。
安田:2011年7月、当時18歳だった石川佳純選手と所属契約を締結しました。彼女のプレーを見たことのある方ならお分かり頂けると思いますが、躍動感あふれ、粘り強く打ち返すプレースタイルが、全農の目指す「スポーツ=健康=食=全農」にぴったりのイメージでした。そして石川選手の「ごはんをしっかり食べてプレーする」姿を通じて、消費者の方々に国産の農畜産物をPRしたり、消費拡大へ繋げるという目的もありましたね。




写真:香港オープンでの遠征中に全農の直営する焼肉レストラン「純」でニッポンの和牛を頬張る石川佳純選手/提供:全農

ーー食の面での支援というのは具体的にどんな取り組みをされているのでしょうか?
安田:全農では「アスリートの活躍を『ニッポンの食』で支える」をスローガンに掲げて、活動をしています。具体的には2011年から卓球日本代表選手が海外でも普段通りのパフォーマンスを発揮できるように、お米やパックご飯、フリーズドライの味噌汁など和食を中心に提供させていただいています。日本代表選手が海外遠征する際、現地の慣れない食事や環境、衛生面で苦労している実情があるんですよね。昨年までは世界選手権が中心でしたが今年度からは通年開催されるワールドツアーでも食材を提供するなど活動の幅を広げています。

ーーワールドツアーの現地で選手たちにお話を伺うと、ホテルのお部屋で日本食を重宝していると聞きます。
安田:全農は国内のイメージが強いかもしれませんが、実はグローバル展開を進めています。全農の海外拠点や世界中の提携レストランを使えば、卓球ナショナルチームに対しもっといい食事サポートが出来ると思い、活動を強化しています。6月の香港オープンでは現地で本会が営業している焼肉レストランで食事会を開いたほか、本会が輸出した日本産米を使用しているおむすび屋さんと提携し、補食用のおむすびをご提供しました。

また、先日10月のドイツオープンでは現地の日本食レストラン、選手の宿泊先と協力して、会場で選手が利用する食事エリアにどんぶりを提供し、サポートしました。日本代表選手だけでなく海外の代表選手にも「ニッポンの食」をPRする機会にもなったと思います。

トップアスリートにとどまらないジュニア世代への支援

ーートップアスリートだけでなく小学生以下への支援も幅広く実施されています。
安田:子供たちは未来を担う貴重な世代。その子供たちにおいしくて体にいいものを食べてもらう。そして真剣にスポーツを楽しんで健康でいてもらうというのは日本の未来を作ることに繋がります。全農は食、農業の団体ですからそこをサポートしているという構図は我々がやりたいことと、受け取る側がとてもマッチしていると思います。もちろん親御さん世代に私どもの提供する食品を買って頂きたいという狙いもありますが、それはあくまで副次的な要素ですね。

食とスポーツ、両方きちんとしているといい子が育ちますよね。全農では少年野球教室も開催していますが、親御さん向けに管理栄養士を招いて食事の指導もさせて頂いています。スポーツでいい成績を残すには技術だけでなくて体づくりも大事。そのためには「食」も大事だし、その背景にある「農」も理解頂きたい。「食農教育」の側面を重視しています。カーリング、チビリンピック、野球、サッカー、一輪車など幅広く応援しているのもそのためです。

今後の卓球サポートプランとは

ーー今後の卓球サポート計画について教えて下さい。
安田:ここまでサポートを積み重ねてきたので今後も続けていきたいですね。今年来年はやっぱり東京オリンピックだと思っています。特に今年は全農所属の石川佳純選手をはじめ東京オリンピックを目指す選手たちにとって大切な一年。海外でも最高のパフォーマンスを発揮できるよう、全農の海外ネットワークを活用して食事の面を中心に全面的にバックアップしていきます。




写真:(写真左から)張本智和、石川佳純、水谷隼/提供:全農

中長期ではトップアスリートだけでなく次世代を担う子どもたちも「食」で支える応援を継続したいと考えています。

ーー卓球へのスポンサーを検討している企業が増えてきています。先輩スポンサーとして思うところを教えて下さい。
安田:卓球は一般の愛好家からトップアスリートまでレベルに関係なく全国各地であらゆる世代が楽しんでいます。企業は自社の商品やサービスを消費者の方々に訴求したいと思いますが、卓球は幅広い年齢性別地域の方が楽しんでいるので、卓球を通じてあらゆるターゲットにアプローチできる可能性がある。そんな裾野の広さ、広がりの大きさが魅力。続けてみてそう感じています。

ーー最後に読者に向けて一言お願いします。
安田:ここ10年ぐらいで色んな方の努力があり、卓球がマイナーからメジャーに切り替わったように思います。中継やメディアでの報道を通じて楽しむことももちろんですが、生で試合を観ると実感が全然違います。全農もスポンサーしているJA全農ITTF卓球ワールドカップ団体戦(11月、東京開催)も現地で是非応援していただければと思います。

全農:卓球応援実績一覧

トップアスリート

・2011年4月からナショナルチームスポンサー契約。海外ネットワークを利用した食材提供、食事サポートを実施。
・2011年7月から石川佳純選手の所属契約。

小・中学生

・平成25年度から「全農杯全日本卓球選手権大会(小学生以下の部、通称:全日本ホカバ)」に特別協賛。47都道府県で行われる予選大会から7月の全国大会まで、地元の特産品などを副賞として提供。
・平成29年から「全日本卓球選手権大会(中学生以下の部)」の全国大会に特別協賛。入賞選手へ地元の特産品などを副賞として提供。

取材・文:川嶋弘文(ラリーズ編集長)