全日本インカレ直前特集、最終回は、全日本学生個人選手権(全日本個選)の470級で優勝を果たした田中美紗樹(スポ4=大阪・関大第一)、スナイプ級で連覇を飾った松尾虎太郎(スポ3=山口・光)による対談。満を持して両クラスのエースが登場です。お…

 全日本インカレ直前特集、最終回は、全日本学生個人選手権(全日本個選)の470級で優勝を果たした田中美紗樹(スポ4=大阪・関大第一)、スナイプ級で連覇を飾った松尾虎太郎(スポ3=山口・光)による対談。満を持して両クラスのエースが登場です。お二人は今年、東京五輪出場をかけたオリンピックキャンペーンに参加し、数多くの国際大会を経験しました。その経験についてや、エースから見た部の環境について、お話を伺いました。

※この取材は10月24日に行われたものです。

オリンピックキャンペーンを経て


オリンピックキャンペーンについて振り返る田中

――新チーム発足から現在までを振り返っていただけますか

田中 上の代がいる時から、下級生も含めてレギュラーになりうる選手が多かったので、戦力ダウンはあまりないんじゃないかと思っていたんですけど、ほかの大学も戦力ダウンが小さかった分、春イン(関東学生春季選手権)とかで470チームが大きく負けてしまうことがありました。でも関東個選(関東学生個人選手権)で5艇全艇が全日本個選(全日本学生個人選手権)を決めることができるなど、いい点も多かったので、目立っていい選手はあまりいないかもしれないんですけど、チームとしてはこのまま全艇が切磋琢磨(せっさたくま)すれば、総合優勝に向けていけるんじゃないかというのは夏のはじめくらいから考えていました。その後の夏合宿とかは私いなかったんですけど、全日本個選とかで掲げていた目標をあまり達成できなくて、それぞれの艇の課題を明確にして、そこに注目してアドバイスをすることを個人的には心がけるようにしました。それが直接結果に繋がったのかはわからないですけど、秋イン(関東学生選手権)では、スナイプに助けられた形ではありましたが、470チームも少し点差を縮められたんじゃないかなという面では良かったと思うので、このまま全日本インカレでもそれぞれの持ち味を生かせればいいなと思います。

松尾 この新チームになった瞬間から部を抜けて、休部っていう形だったんですかね? 470でオリンピックを目指す活動に参加していて、部に本格的に戻ってきたのは9月なので、すごく長い期間部を空けていた上にまだ戻ってきて1ヶ月ちょっとしか経っていないので、今年1年チームがどれだけ頑張ってきたかということを僕は直接知らないんですけど、絶対みんなは頑張っているだろうなと思っていたし、僕自身もすごく頑張りました。部に戻ってきてからも470もスナイプもどっちも乗って、僕が知ってるみんなの姿がまだまだ昔のままで止まっていたので、それに比べるとみんなすごくヨットの技術も生活面でも成長していたので、すごくいいなと思いながらやっていました。あととにかくみんな仲がいいので一緒に合宿生活をしていても楽しいなっていうふうに思って、みんなに会うのが楽しみで合宿に行けるのですごくいい状態だなと思います。僕がオリンピックキャンペーンをしていた時から、「いいなあ部活に戻りたいなあ」と思えるくらいのメンバーです。

――田中選手もオリンピックキャンペーンに参加していましたが、部活動との兼ね合いはどのようにしていたのですか

田中 私は松尾と違ってどっちも参加してという形だったんですけど、冬は長期の合宿で沖縄に行っていて、その間は部を離れていました。オリンピックの選考大会が3大会あって、3月のスペインの大会と、8月に2大会あったんですけど、それ以外の期間は基本的に部活にいて、強化合宿とかも挟みつつ、学生の大会にはすべて参加していました。だから帰ってきたり出て行ったりという感じで、逆に毎日いるとわからないような部の中期的な成長速度を明確に把握することができました。

――オリンピックキャンペーンを通して成長を実感した部分はありますか

田中 競技に対する考え方。去年、おととしと海外遠征には行かせてもらっていたんですけど、今年は本格的にしっかりペアを固定して、お金とかも頼る部分はあったんですけどしっかり自分たちでやりくりして、船とかセールとかも自分たちで何とかしてという感じで、企業で活動している人たちに比べれば力不足ではあったんですけど、一通りの流れを自分たちで精一杯こなせたというところは、今までになかった学びでした。あとは、これは多分毎年言っているんですけど、レベルの高い人たちの中でチャレンジしていくということは成長を感じた部分ではありましたし、今年に関して言えばクローズホールドの強風でのスピードが世界の中でも戦えることがわかって、西宮では吹かないかもしれないんですけど(笑)、すごく自信にはなりました。

松尾 僕はオリンピックキャンペーンで去年まで画面越しでしか見ていなかったようなスーパースターたちと一緒にレースして、初めはすごくビビっていたんですけど、だんだんレースをしていくうちにしっかりその人たちと戦えるようになっていったし、その人たちとコミュニケーションもとれるようになっていたし、そこは成長した部分ですね。僕は美紗樹さんとは違って企業のチームに属して、そのチームで海外遠征をしていたので、僕以外の大人の人たちは海外経験が豊富な人もいたので、その中で時間の使い方を勉強したりしました。技術面では、これと言ってこれが上手になったということはそんなにないんですけど(笑)、自分の中で余裕は生まれてきて、学生のレースだと心の余裕が持てるようになったことくらいですかね。

――オリンピックキャンペーンから部に戻ってきて、チームに還元したことはありますか

松尾 僕はスナイプ級スキッパーとして全日本学生個人選手権(全日本個選)に出て、その後は僕が470級のクルーをして、一緒に乗るスキッパーに「こうした方がいいよ」ということをフィードバックすることで、470チームのレベルアップに繋がったらいいなと思っていました。繋がったかどうかはちょっとわからないんですけど(笑)。

田中 1回部活に戻ったタイミングで、自分たちが今までオリンピックキャンペーンで経験してきたセーリングに対する取り組み方のレベルと部活の取り組み方のギャップが想像以上にあることに驚いて、まずいねという話を松尾としたことがあって、それからはそれまで以上に妥協しない取り組みを率先してやるということを徹底するように心がけました。

松尾 今美紗樹さんからギャップの話があったのですが、僕は(強化合宿が行われる)座間味に行くのが美紗樹さんより1年くらい遅くて、部にいるときは部活でのトレーニングがかなりきついように感じていたので、美紗樹さんから「座間味の合宿はこんなものじゃないよ」と聞いて「そんなわけないじゃん、これよりきついのなんてできるわけないよ」と思っていました。でも実際にキャンペーンを始めて座間味のトレーニングに参加したら、異次元なくらいきつくて、毎日吐きそうになるくらい辛くて、美紗樹さんが言っていたことがわかるようになりました。

――座間味の海は波が荒くて船が度々沈むと聞いたことがあります

松尾 でも海の上よりも陸の方が辛いです。海は確かに波が高いんですけど、高いといっても「江ノ島の方がたちが悪いよね」と(オリンピックキャンペーンでペアを組んでいた)颯くん(小泉颯作氏・平28スポ卒=現トヨタ自動車東日本)といつも話しています。

田中 座間味は深くて、波長がすごく大きいので大きい滑り台の中にいるような感覚なんですけど、江ノ島は波長が短いのに陸に近づくにつれて波がすごく高くなるので、傾斜が急でたちが悪いです。

松尾 でもとにかくきついのは陸でのトレーニングです。二度とやりたくない。

――二度とやりたくないとおっしゃっていますが、次のオリンピックは目指すのですか

松尾 僕は次の一年は部活にずっといるので何も考えていないんですけど、そろそろヨットを続けるかどうかというところから考えないといけないなと思っています。

田中 私はパリに向けてやりたいと思っています。ただ、今までは470級は男女別種目だったのがパリでは同じになる予定で、そのことが原因であまり他のチームも本格的には活動を始められない状態です。特に日本は開催国ということもあって東京オリンピックにフォーカスしていて、東京五輪に向けて頑張ってきたベテランの選手が多く、一気にやめてしまうこともあって結構難しい状況ですね。

松尾 確かインカレ中に決まるんですよね?

田中 最終決定は11月中と聞いています。ちょっと活動しにくい状況です。

――特に意識している選手はいますか

松尾 難しいなあ。でも僕は常にみんなとぎりぎりの戦いなので、たくさんいます。

田中 本当か?(笑)

松尾 でも特に意識しているのは、蜂須賀晋之介(スポ2=茨城・霞ヶ浦)と尾道佳諭(スポ2=山口・光)。レースをしていても、あの二人に対して僕が前を走ることで、先輩として示しをつけるという意味もありますし、二人ともすごく速いので負けられないなという思いもあります。あの二人はライオンと虎みたいな感じで、扱いがすごく難しいんですけど(笑)、僕は二人をうまく扱えるようなスナイプチームのリーダーになりたいなと思っています。

田中 もちろん愛さん(吉田愛・ベネッセ/東京五輪代表に内定)を意識してやっていたのですが、結果届かなかったですね。意識していたというよりは学ぼうとしていたという感じです。ライバルという意味では宇田川真乃(ヤマハ)の方が、クルー(工藤彩乃・日大)も同世代ですし、ジュニアワールドに一緒に行ったり、一緒に練習したりしていました。工藤は日大でインカレにも出るのですが、同じく日大の高山大智がスキッパーとして秋インカレ(関東学生選手権)に出てきて、一緒にレースをしてやはり男女の差はあるなと実感してしまいましたね(笑)。なのでここ最近意識し始めたという感じです。

エースの立場から部を見て

――田中選手は470級のリーダーとして、また4年生としてチームを引っ張る立場だったと思いますが、意識していたことはありますか

田中 引っ張れているのかなあ(笑)。オリンピックキャンペーンでいなくなったり帰ってきたりを繰り返していたのと、9月には女子インカレ(全日本女子学生選手権)に行っていたので、男子がメインの早稲田大学ヨット部からすると離れる時間が長くなってしまったこともあって、自分としては最大限下級生を意識していたつもりでいたんですけど、今振り返ると力不足だったんじゃないかなと思っています。チームに厳しくということと、自分がきちんと走ることで「ここまで速くなれるんだよ」という目標になり続けることを意識していました。

――470級チームの1年間の戦いぶりをリーダーとして振り返っていかがですか

田中 去年までと違って今年は、春から470チームがスナイプチームに助けてもらう戦い方だったので、そこに対して結構今まで感じたことのないプレッシャーというか、自分がいい成績を出すだけでは勝てないということを強く実感しました。他に4艇あるうちの3艇には4年が乗っているので、結構4年に対して厳しく言うこともあったし、後輩に対しては海で見ていて思ったことをその都度言うようにしてはいました。でも、最初から最後まで「チャンスを求めるものにしか与えない」ということは言い続けてきて、自分の力で成長できるようになってほしいということを意識させてきたつもりです。

――松尾選手は、スナイプチームの戦いぶりを振り返っていかがですか

松尾 関東個戦(関東学生個人選手権)、全日本個選、秋インカレとスナイプチームで出場してきて、スナイプチームはできすぎなんじゃないかというくらいよく走れていて、いいなあと思っています。その中でも、晋之介(蜂須賀)とか佳諭(尾道)がバチバチ来てくれるし、入江さん(入江裕太・スポ4=神奈川・逗子開成)も負けじと来るので、練習からすごく大変な、気を抜けない戦いですね。それがこの成績に繋がっているのかなと思います。

――470チームは練習ではどのような雰囲気ですか

田中 470はスナイプチームに比べるとそもそものレベルが劣っている状況で、前半は部内のやつに勝てばいいみたいな選手が多くて、視野が外に向いていなかったのですが、全日本個選以降は視野が外に向くようになって、他大を意識した練習が増えてきたかなと思います。スナイプチームに比べればそこまでバチバチはしてないかな…。

松尾 いや、あるんじゃないですか。凱皇(小泉凱皇・スポ2=山口・光)と宗至朗(西村宗至朗・社2=大阪・清風)も冷戦みたいな感じで、言葉に出さないバチバチが常にあるじゃないですか(笑)。直暉(倉橋直暉・スポ1=福岡・中村学園三陽)もライバル意識が高いし。

田中 確かに(笑)。2年生の二人は結構バチバチなんですけど結構課題が正反対なので、そこを助け合いなさいと声を掛けてきたんですけど伝わったかな(笑)。でも倉橋は私しか見ていないらしいです(笑)。

――春インカレでは総合準優勝、秋インカレでは総合優勝を果たしましたが、シーズンを通してチームの成長を感じた部分はありますか

松尾 ベストのメンバーで秋インカレは出られたから得点を稼げたという部分はあります。あとは僕が戻ってきたら、みんな今の風の状況やどういうコースを取りたいと考えているかということを聞いてきてくれて、それを参考にレースをしてくれるので、自分で言うのも変なんですけど僕が帰ってきたことによってチームにまとまりが出たかなと思います。主に晋之介なんですけど、秋インカレで僕が取りたいコースに一緒に来てくれて、二人ともいい成績を取れたレースが多かったので、それがスコアを低く抑えられた要因かなと思います。晋之介はついてくるだけじゃなくて、僕が思い描いていることを実行できる力がついているということなのですごくいいことだなと思います。

田中 松尾が470に乗っていてくれたこともあって、スピードのレベルアップが図れたと思います。その結果、攻める方向にコースを持っていける場面が増えたことが良かったなと思います。それに加えて、サポート体制もインカレに向けてマネージャー中心に充実してきていると思います。

――田中選手はスタートが課題だと長い間おっしゃっていた印象がありますが、その点はいかがですか

田中 未だに課題ですね…(笑)。でも全日本個選では意外と自分が攻めてみたら誰も攻めてこなかったりして、いけるんじゃないかという手応えはありました。でも高山とか慶大の4年は最後まで私を攻めてくると思うので、そこに対して圧をかけられればいけるんじゃないかと思います。スタートについては技術がないというよりは、今まで失敗してきた経験が多い分メンタルが弱いのかなと思います。

――それぞれのクルーとは普段どのようなコミュニケーションを取っていますか

松尾 海老原さん(崇・法4=埼玉・川越東)と乗れることがすごく好きなので、不満に思うこともないし楽しいです。陸の上でもすごく楽しい人で、他の人から海老原さんについて聞かれるたびに褒めちぎっているんですけど、本当に乗りやすくていいペアでいいクルーだなと思っています。来年からは海老原さんとではなくなるので、いかに違う人といい成績を残せるかが大事だなと思います。

田中 私の船は基本的にスキッパーからクルーに指導するかたちになっているのですが、自分自身が470リーダーとしてきちんと成績を出すためにはクルーの育成が必要なので、厳しく指導しないといけない部分がある分、後輩が縮こまらずできるだけのびのびしてくれるような環境づくりを一応考えてはいます。あとは、レース中は動作をしながらいろいろなことを考えなくてはいけないので、動作の練習をしている時でも風の話をするなど、常に別のことを考えながら今のことをするというのを意識しながらやっています。

オフの過ごし方やヨットの魅力


ヨットを始めたころについて話す松尾

――お二人が知り合ったのはいつ頃ですか

田中 小学校の…

松尾 4、5年生くらいですかね。今でこそ美紗樹さんと呼んでいるんですけど、高校までは美紗樹って呼んでてため口でした。

田中 (松尾が)入部してきた時に、その時主将だった奎樹さん(岡田奎樹・平30スポ卒・現トヨタ自動車東日本)に怒られてから、敬語になりました。

松尾 部活の時だけは僕は敬語を使うことを徹底していて、あとは小泉凱皇、尾道佳諭、蜂須賀晋之介も、部活の時だけはなんとなく敬語を使ってくるんですけど、私生活では全然敬語じゃないです。家に来た時とかも全然敬語使わないですね。

――ヨットを始めたきっかけは

田中 両親が大学のヨット部で、兄がやっていたので始めました。

松尾 僕は小学校2年生の時に、父がやっていたので始めました。大嫌いでした(笑)。

田中 大嫌いだった。

松尾 小さい頃に海でポツンとヨットに乗るのは怖くて。

田中 幼稚園の時にはじめて一人で海でヨットに乗ったのですが、船がひっくり返って船の中に自分が入ってしまったんですよ。サメが来ると思って大泣きした記憶があります。

松尾 僕も小学校の頃、海に落ちたら基本的にサメが来ると思っていました(笑)。

――昔からの知り合いのお二人ですが、お互いの印象は

松尾 美紗樹さんは競技面では小学校の頃から常に僕の上を行き続けている人で、大会でも基本的に僕が負けていました。高校に上がっても、同じ420という船に乗って一緒に海外遠征に行ったりもして、同じようなところで戦ってきて、美紗樹さんが苦戦している時も活躍している時も見てきたのですが、その中でしっかり結果を残してきているのがすごいなと思います。

田中 小さい頃は結構バカなことばかりやっているなというイメージで、私もそれに乗っかって色々やっていたのですが、高校ではアジア大会で銅メダルを取るなど、私が届かなかった目標に対して結果を出しているシーンが多くて、すごいなと思いました。中学より前は選手として意識していることはあまりなかったんですけど、高校に上がってからは選手として尊敬する部分もありますし、しっかり結果を出しているところを見てきて、今では470級でオリンピックキャンペーンに参加した直後にスナイプ級で結果を出していて、わけがわからないなと思っています(笑)。

――オフの日はどのように過ごしていますか

田中 買い物に行ったり、遠征続きの時は家でダラダラしたり、最近では卒論書かなきゃと思ったりしています。

松尾 自然がすごく好きなので、江ノ島に住んでいる時はオフはサーフィンに行ったり、冬はスノボに行ったりしています。1日家でじっとしているのは苦手なので、1日空いている時も少し走りに行ったりトレーニングをしたりしてしまいますね。

――ヨットの魅力はどのようなところですか

田中 友達が増える。最初は本当にそれだけでやっていましたね。ヨットそのものは好きではなくて、嫌々やらされていたので。友達に会いに遠征に行っていました。親は相当大変だったと思います(笑)。

松尾  友達が全国にできるというのもあるし、小学校の頃はいい成績を取ったらお父さんお母さんがご褒美を買ってくれることがヨットを頑張る理由でした(笑)。ヨットの魅力は…スピードが速いのが楽しい。人とレースをして競い合うことよりも、速いヨットに乗って一人で自由に楽しむということが好きです。

田中 スナイプに乗っているのに?(笑)

松尾 スナイプは結構遅い船なんですけど(笑)。でも、スピードが魅力ですね。

――松尾選手は、どのような経緯でスナイプ級に乗ることに決まったのですか

松尾 多分その時の部の内部状況を考えて4年生の判断で決まったんですけど、今考えると470級のスキッパーをできる体重に僕はなれないので。470級のスキッパーは50キロ台後半から60キロ台前半が適性の体重とされているんですけど、僕が今75キロくらいでどれだけ減量を頑張ってもそこまでいけないですし、スナイプで良かったと思います。スナイプに乗ることが決まった時から別に嫌ではなかったです。むしろ楽しみなくらいで。晋之介とか佳諭はスナイプに乗ることが決まった時嫌だったって言ってませんでした?(笑) 470の方がスピードも出るし、オリンピック種目でもあるのでかっこいいなという印象があると思うんですけど、僕はどっちも楽しいし、今では結構スナイプのレースの方が好きですね。

田中 私もスナイプに乗ってみたいなと思います。

松尾 470はフィジカルの面が大きくて、自分がどれだけ速いスピードを出せるかの勝負になってくるのですが、それに比べてスナイプはもちろん体を使いますけど、風を見ながら、スマホのヨットゲームのような感覚でレースをできるのが特徴だと思います。ゲーム性が高いです。

――早大ヨット部の強みはどこにありますか

松尾 スキッパーの実績がすごいことですかね。高校時代の実績を並べるとびっくりするような選手がそろっているので。日本代表を経験している人もすごい数いるので一番はそこかなと思います。あとはみんな仲がいいことです。

田中 いろんなことができる。私もそうなんですけど、部を離れて外に出してもらえるところなど、挑戦できるチャンスを快くつかみにいかせてくれるところが魅力かなと思います。

全日本インカレを目前にして


終始笑顔の絶えない対談になった

――全日本インカレまで10日を切りましたが、今の心境は

松尾 僕はまだインカレが近づいてきているという実感があまりないですね。例年26日の決起集会でみんな士気が高まって緊張してくるのですが、それがまだなので。

田中 全く逆ですね。秋インカレの前から全日本インカレに向けて緊張しています。もし秋インカレを突破できなかったらどうしようということが頭をよぎって、3年生までそんなことはなかったので、インカレを自分が意識しているんだなと思いました。あとは、台風の時に前回の西宮インカレの動画を見たり、記事を読んだり、その時の部員の先輩方や監督のレポートを読んだりしたのですが、前回の西宮インカレの時は高校の練習で海の上にいたこともあって、本当に具体的にその場面が頭に浮かんできました。前回の西宮で早稲田が負けたこともあってレポートは反省が多いので、それが今の代にも当てはまる所があるんじゃないかなどと考えてしまって、結構不安な状況ですね。

――インカレでキーマンになりそうな選手はいますか

松尾 僕これ聞かれると思って考えてきたんですよ。ただ、一人に絞れていないんですけど…。僕がインカレでキーマンになると思うのは2年生全体です。今年の早稲田は戦力の大きな部分を2年生が占めているので、だからこそ2年生が陸でも海でもどれだけ頑張れるかというところで、早稲田全体の成績が決まってくるのではないかなと思います。あんまり言うとプレッシャーかな…でも2年生は能天気な人が多いのでプレッシャーに感じることもないと思うんですけど(笑)。レギュラーになった2年も大事だし、陸の上でも2年生に頼ることも多くなると思います。2年生はどちらかというとうるさい学年なので、盛り上げてくれるといいなと思います。

田中 4年の…入江かなと思いつつ嶋田(篤哉・文構4=神奈川・鎌倉学園)ですね。私は2年生の時のインカレで「自分が走らないとチームが走らない」というプレッシャーを感じてしまって、結果リコールに繋がってしまったという経験があるのですが、嶋田のスキッパーで2年の小泉もプレッシャーを感じて大きく崩してしまう可能性があると思うので、嶋田がいかにメンタルをコントロールできるかということが大事になってくると思います。

――最後に全日本インカレに向けて意気込みをお願いします

松尾 インカレは1年の時に負けて泣いて、2年の時は勝って泣いて、今までどんな試合でどんな成績を取っても、負けて悔しくて涙が出たり、勝って嬉しくて涙が出たりすることがなかったのですが、それくらい自分の中で大きな大会だということをわかっているので、だからこそ絶対に勝ちたいと思います。自分が勝ちたいということとは別に、やはりインカレで勝って一番喜ぶのは4年生なので、今の4年生にいいかたちで終えてもらいたいという気持ちが強いです。そのために最初からガツガツ優勝を目指して頑張っていきたいなと思います。

田中 私も2年生の時に負けを経験してから、ヨットレースの結果で涙するというシーンが増えて、今年も最後だと思うと結構感情が湧き上がってくる場面が多かったです。インカレでは、自分が勝ちたいという思いもあるのですが、2年生の時に味わった悔しさを後輩たちに味合わせたくないという気持ちもすごく強いので、地元インカレで謎のプレッシャーもかかると思うんですけど(笑)、それに負けることなく全員で総合優勝を取りにいきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 町田華子、山田流之介)


最後にそれぞれの抱負、好きな言葉を書いていただきました。田中選手は全日本個選、全日本女子インカレ、全日本インカレの「三冠」を目指します。松尾選手は字の綺麗さには自信があるのだそうです。

◆田中美紗樹(たなか・みさき)(※写真左)

1997(平9)年11月23日生まれ。154センチ。大阪・関大第一高出身。スポーツ科学部4年。趣味は背伸びをすることと答えてくれました。小柄な女子選手ながら、男子に負けない強さを見せてきた今季。集大成となる全日本インカレを笑顔で締めくくってほしいです。

◆松尾虎太郎(まつお・こたろう)(※写真右)

1998(平10)年10月28日生まれ。178センチ。山口・光高出身。スポーツ科学部3年。趣味はサーフィン、スノボ、お話をすることだそう。その言葉通り、対談でも気さくな語り口が印象的でした。全日本インカレでも走りではもちろん、持ち前の明るさでチームを盛り上げてくれることでしょう!