第58回全日本50km競歩高畠大会 兼 東京2020オリンピック日本代表選手選考競技会10月27日(日)高畠まほろば競歩コース・日本陸連公認競歩コース(1周2kmの往復コース)一般男子50km1位   川野  …

第58回全日本50km競歩高畠大会 兼 東京2020オリンピック日本代表選手選考競技会


10月27日(日)高畠まほろば競歩コース・日本陸連公認競歩コース(1周2kmの往復コース)


一般男子50km

1位   川野   3:36'45    ※日本新 ※学生新 ※東京五輪日本代表内定


一般男子20km

9位 成岡 1:26'88

10位 長山   1:26'88

DQ    野村


一般女子20km

7位  竹中1:43'55


日本新記録を樹立した川野

積極的にレースを進めた


両手を上げて喜びを表す


表彰台では笑顔を見せた



    「東京五輪出場」。高校時代から抱いてきた目標がついに現実となるときが来た。川野(総3=御殿場南)が第58回全日本50km競歩高畠大会(以下、高畠大会)で日本記録更新となる3時間36分45秒で優勝し、東京五輪代表内定を果たした。


    高畠大会は日本陸連が定める標準記録を突破し、日本人トップでゴールとなれば東京五輪出場内定が決定する重要なレースとなった。昨年の高畠大会、今年4月に行われた全日本競歩輪島大会(以下、輪島大会)に続き3回目の50kmとなった川野。スタートの号砲が鳴ると川野、小林(新潟アルビレックスRC)、丸尾(愛知製鋼)の3人が飛び出し、日本記録更新ペースでレースは進む。16km過ぎ、先頭争いをしていた川野が揺さぶる。2kmのラップタイムが8分05秒となるほどのペースアップで先頭に立ち、単独首位となる。その後30km付近で2位を歩く丸尾が再び川野に追い付くも、川野は「想定内」と落ち着いた歩きで丸尾の揺さぶりに対応した。並走状態に動きがあったのは42km過ぎ。川野が丸尾に勝つタイミングを見計らい、丸尾の前に出るとそのまま離しにかかる。さらに差を広げ、輪島大会で川野を抑え優勝した鈴木(富士通)の持つ日本記録を2分以上更新し、日本初の3時間36分台で1位のゴールテープを切った。


   酒井瑞穂コーチがレース前に川野に掛けた言葉は「自分を一番信じなさい」。実は川野は2月に行われた全日本競歩能美大会(以下、能美大会)、4月の輪島大会と2大会連続でトップを譲り2位となっていた。タイトルを取れずにいたが「それをプラスに変えていこう」と夏はフォーム作りに重点を置いた。目指すは最後まで崩れないきれいなフォーム。瑞穂コーチとともにフォームを正し、スタミナやスピードにも力を入れた。そして、あらゆる試合のパターンを想定し戦略を練ったという。試合では警告ゼロ、そして戦略通りのレースで優勝。努力が実を結んだ結果であった。また、川野は高畠大会の4日前に21歳の誕生日を迎えた。「誕生日兼という感じで楽しもうと思う」と自身への最高のプレゼントとなったことだろう。


   東洋大競歩ブロックはロンドン、リオ、そして東京と3大会連続で学生の五輪出場を果たした。また競歩20kmで東京五輪出場を目指す池田(済3=浜松日体)は先日世界陸上競技選手権大会に出場し、6位入賞。競歩王国の伝統は今もなお受け継がれている。「伝統」の2文字だけではなく「『輝かしい伝統』と付け加えられるようにしたい」と酒井監督。東京五輪まで1年を切った。今大会で最後となる50km競歩での1番輝く金メダルへ向けて、川野、そして東洋大の新たな挑戦が始まっている。



■コメント

・酒井監督

東京五輪出場は狙って挑んだ。また日本記録更新での東京五輪出場権獲得と、東京五輪で勝負するんだという内容だった。東京五輪出場が叶って良かった。具体的な指示はコーチの方から戦略的なことは言っているが、やはり優勝すれぱ東京五輪内定なので。今までやってきたことを信じてやろうと言った。あとは序盤のスパートとかは選手とコーチで戦略を練ってやってきたこと。追い付かれるのも想定内だし、戦略的にもハマったなと思う。気温も低かったし小雨だったので十分記録が出るコンディションだったなと思う。3大会連続で競歩は輩出となった。これまでの伝統にさらに輝かしい伝統という言葉を付け加えられるようにしたい。(川野選手に掛けたい言葉は)まずはおめでとう!と。ここは通過点なので開催地が決定すれば戦略を立ててやっていきたい。


・酒井瑞穂コーチ

高校時代から東京五輪出場を目指していた。なんとかその夢を叶えさせてあげたいなと思っていた。最高の形で達成できて良かった。川野選手は日本記録更新を目指してやってきた。能美で山西選手、輪島で鈴木選手に次いで2番。そういう選手は一人しかいない。それを上手くプラスに変えて世界選手権は漏れてしまったがプラスに変えた練習で日本記録更新と、日本では誰も作れないような記録を狙っていこうと夏からやってきた。特にフォームは正しいフォーム。最後まで崩れないようにしなければいけないのですごく重要視した。先が長い選手だから今の癖のままでは警告もあがっていたから、全く警告ゼロの状態で50km歩けるような選手にしたくて、この夏は半分もしかしたら高畠歩けないかもしれないなと覚悟しながらフォームを直してきた。フォームを直しながらスタミナ練習。(レース前に掛けた言葉は)練習であらゆるレースパターンを想定していろんなバリエーションで練習した。だから自信を持ってスタートラインに立つように、というのと自分を一番信じなさい。自分がやってきたことなんだから自分が信じるように、と話をしました。大丈夫だよ、と。(東京五輪が決まって)まだ実感が湧かない。初めて夏合宿を1人で見た。ずっと池田と川野とやって来て、すごくいい経験になった。子供も遊ばせながら合宿をやった。あとマネジャーたちもすごく優秀なので。優秀なマネジャーにすごく救われた。私一人では絶対に指導できない。いろいろな人に支えられてちゃんとコーチができたと思う。(川野選手にどんな言葉を掛けたいか)おめでとうということと、まだまだ道は続くからこれで満足せずにもっと高みを目指して。いい目標が日本にいるから、その目標を目指してこれから頑張ろうと言いたい。


・川野(総3=御殿場南)

東京五輪出場というのを高校で競歩を始めたときからずっと目標にしていた。今回いよいよ東京五輪内定が決まる大事な大会だったので高畠への思いは強かった。夏合宿から絶対に高畠で内定してやると強い気持ちでやってきたのでうれしい。(レースを振り返って)前半で揺さぶりをかけて、後ろの選手を焦らせるというか、いつでも自分はいけるんだぞと怖い存在だと思わせたいなと思って仕掛けた。丸尾選手が追い付いてきたのは想定内。気持ちよくいければ良かったというのはあるが追い付かれるのも想定していた。追い付かれてからも動きのフォームを見直してラストスパートに備えることができて良かった。並走のときは丸尾選手が細かいスパートをかけられて強さを感じたが、冷静に一回一回のスパートに焦らずに付いた。最後は自分が決めてやるんだという気持ちだった。丸尾選手がスパートをかけていたが少しずつ勢いがなくなってきたので「今ならいける」と42km過ぎにスパートした。終盤のスパートはプラン通り。40km以降はどれだけスパートを残しておくかを考えていた。(勝因は)今回警告もなくきれいなフォームで最初から歩けた。今までなら後半狂ってしまったがそれもなく歩けた。歩型に不安なく最後スパートできた、ノーストレスでスパート出来たのが良かった。(東京五輪へ向けて)まず目標は金メダルっていうのが大事。そのなかでも日本の応援してくださる方々が感動するようなレースができたら良い。高校のときから目指していた憧れなのでしっかりと金メダルを目指して頑張っていきたい。(50kmは3回目だが急成長できている要因)自分の力ではなく周りの方々が本当に自分のためにたくさん支えてくださったのが本当にいいなと思っている。監督やコーチは池田が世界陸上で重点を置かないといけないなか、自分にも平等に見ていただいた。自分も池田も同じようにここまで育ててくださったのは大きい。あとは応援してくださる方々がすごく励みになってここまでやってこれたと思っている。(自分で点数をつけるなら)今日は100点自分にあげていいと思う。タイトルをあまり取ったことがなくていつも2番手や3番手でラストスパートで負けてしまうことが多かった。今回選考レースでしっかり勝ち抜くことが出来た。監督と奥さんと相談して想定したレース展開を守りながら最後できたので良かった。(鈴木選手へのリベンジとなるが)鈴木選手はドーハ世界陸上でも金メダルを取っていますし、レースをテレビで見させていただいたが準備だったり他の選手よりも一つ抜きん出ていると感じた。それを少しずつ残りの期間で埋めていければいい。動きの面で後半どうしても崩れてしまってペースも落ちてしまったのが課題点だったりいろいろある。また監督や奥さんと話し合って次につなげていきたい。(タイムにかんして)タイムは正直考えていなくて勝負に徹した。涼しい天候だったり周りが積極的に引っ張ってくれて36分台がでた。(東洋大で3大会連続競歩の選手を輩出したが)自分が東洋大に入学を決めた理由がロンドン五輪とリオ五輪で2大会連続学生で出場していて、自分が3大会連続で東京五輪に出場したいという思いがあった。すごくうれしい。(東京五輪が頭を過ぎった瞬間は)ありはしたがなるべく勝負に集中するようにした。東京でも札幌でも自分のベストを尽くすしかない。どっちにも対応できる力をつけたい。涼しいほうが良いが自分は比較的暑さにも対応できる。(4月の輪島からここまで)輪島が終わってから故障気味で関東インカレで失格してしまった。特に夏、一から体をつくっていくことだったり距離の練習も多めにして基礎体力を付けるような練習をしてきた。レース前にはスピード練習もしてまんべんなく行えるようにして、どんなレース展開になっても大丈夫なような練習をした。(夏合宿では)いい動きで歩ければ痛みもなく歩けたので動きのほうから直していこうとした。(先日誕生日を迎えたが新たな心境)大会前だったので誕生日らしいことはしていないが高畠が終わったので誕生日兼みたいな感じで楽しもうかと思う。(ドーハの池田選手のレースを見て)ずっと2人で五輪に出ようと話していたので今回池田が取れなかったのは自分も残念に思うが、いつも池田に引っ張ってもらって自分が結果を出すというのが今回は逆に池田を勇気づけられればいいなと思って歩いた。



TEXT/PHOTO=長枝萌華