「意地でも出ます」。東京六大学秋季リーグ戦(秋季リーグ戦)第6カードの初戦でプレー中に靭帯のけがをした小藤翼副将(スポ4=東京・日大三)。出場が危ぶまれているが、それでも最後の早慶戦へ向け強い決意を口にした。優勝もなく、プロ野球ドラフト会…

 「意地でも出ます」。東京六大学秋季リーグ戦(秋季リーグ戦)第6カードの初戦でプレー中に靭帯のけがをした小藤翼副将(スポ4=東京・日大三)。出場が危ぶまれているが、それでも最後の早慶戦へ向け強い決意を口にした。優勝もなく、プロ野球ドラフト会議(ドラフト)での指名もなかった。それでも、この一戦だけは負けられない。大学最終カードを前に何を語るのか。

※この取材は10月23日に行われたものです。

ドラフトを終えて


取材に応じる小藤

――ドラフトを終えていかがですか

 選ばれなかったことはすごく悔しいですし、(東京)六大学でも同期は選ばれていたのですごく悔しい気持ちはあります。ですが、まだ2年後に挑戦できるので、今は2年後に向けて切り替えてやっていこうかなと思っています。

――ドラフトを終えてどなたかとお話はしましたか

 高校の小倉監督(全由・日大三高監督)から電話を頂き、「2年後がんばれ」というお話をしていただきました。

――社会人での目標は

 社会人野球では、都市対抗野球というのが大きな大会だと思います。しっかりとそこに出て、活躍するというのが現時点での目標です。

――どんな社会人になりたいですか

 まずは社会人として恥ずかしくない立ち振る舞いをしたいと思います。

――今季はチームトップの6打点を挙げています。早慶戦前のアンケートには「得点圏が元々好きでその感覚が戻ってきた」と書かれていましたが、得点圏での打席が嫌になった時もあったということですか

 やはり春は得点圏であまり打てていなかったので、変に意識してしまい、自分の中で少し嫌だなと感じてしまっていました。

――元の感覚が戻ったきっかけは

 森下(暢仁主将、明大4年)からタイムリーを打ったことで自信を取り戻せたと思います。

――開幕後打てなくなった原因は、「体の軸がぶれていたこと」とお話しされていましたが、それはご自身で気付いたのでしょうか

 自分ですね。開幕前に少しけがをしてしまい、調整不足な面もありました。自分でも感じていましたね。

――夏季オープン戦からけがなどがあり、調子を崩してしまったということですか

 そうですね。

――それは一人で直しましたか

 徳武さん(定祐コーチ、昭36商卒=東京・早実)からバッティング指導などをしていただき、オープン戦の時の調子のいい状態に戻すことができました。

――「基本的に狙い球は定めない」と話していました、どのような時であれば定めますか

 確信があるときですね。森下から打った時は本当に確信があったので張っていたのですが、基本は張らないので。ここは絶対に来る、というときは張ることにしています。

――では普段はどのようにして打席に入っていますか

 自分は足を上げた時にタイミングを取り、ある程度のものは想定して、あとはタイミングを取るという感じで待っています。どの球にでも対応していけるように思っています。

――コースなども絞らないということですか

 コースは際どい所以外は振っていこうと思っています。

――球種を絞れるようなったのは高校2年時ということでしたが、その時のことを教えてください

 その時にちょうど『ダイヤのA』(寺島雄二、講談社)という漫画を読んでいて、そこに出てくる御幸一也というキャッチャーが打席で「自分だったらどのようにして投げさせるか」を考えて打っているのを見ました。自分もやってみようと思い、練習試合でやったところうまくはまったので(笑)。それがきっかけです。

――初めから当てられたということですか

 そうですね(笑)。初めから当てられました。

――立大1回戦では神宮球場で人生初、リーグ戦でも初の本塁打を記録しました。4年目にして打つことができた要因は

 春は「ホームランを打ちたい」という気持ちもあり、狙っていました。そういう部分で大振りになってしまい、打てていなかったのですが、あの打席は前の回がダブルプレーで終わるなど流れが良く、相手ピッチャーの田中誠也(副将、立大4年)がどんどんストライクを取ってきていたので、「初球から振っていこう」と鈴木太郎(新人監督、スポ4=静岡)や山野(聖起、法4=岡山・金光学園)と話して決めていました。とりあえず強く振るということを考えて立った結果がホームランで。何も考えずに入ることができたのが良かったと思います。

――これまでは本塁打のことを考えて打席に入っていたということですか

 ちょっと心の中にはあって(笑)。欲が出過ぎていたのかなと思います。

――高校時代は本塁打も多く打つ打者だったと思いますが、その頃は考えていなかったということですか

 そうですね、自分が高校3年生の春に大会(春季東京都高等学校大会)でホームランを結構(5本)打ったことがあったのですが、その時もあまり考えずに入っていたので。その気持ちが大事なのかなと思います。

――あまり考えない方がうまくいくということですか

 そうですね。

――立大カードは2回戦以降、けがでメンバー外となりました。いつもとは違う場所から試合を見たことで気付いたことなどはありますか

 徳武さんと見ていたのですが、徳武さんはいつも早稲田側ではなく、早稲田のベンチが見える相手側から見ています。(今回そこで一緒に見たことで)ベンチの盛り上がりなども見えて。盛り上がっている時はいい雰囲気でやっているのですが、どうしても負けていると少し落ちてしまい、雰囲気も少し悪いなと感じました。そこは自分が早慶戦で(ベンチに)入った時に自分自身で改善したいなと思います。

――岩本久重捕手(スポ2=大阪桐蔭)はいいプレーをしていましたが、どう見ていましたか

 自分がけがをしてしまい、急きょ(出場)だったので申し訳なかったのですが、いいプレーが出て、自分自身でもうれしかったです。そういう意味では感謝したいですね。

――投手陣は現在本調子とはいえない選手もいますが、どう見ていますか

 調子は悪い選手もいると思いますが、本来の力であれば絶対に抑えられると自分自身受けていて思いますし、絶対的に力はあるので、最後の早慶戦で修正をして本来の力で投げてくれればいいなと個人的には思います。

――今西拓弥投手(スポ3=広島・広陵)はいかがですか

 月曜日に投げたのを見て、デッドボールで少し崩してしまったのですが、岩本から聞いても調子が悪いころに比べると少しずつ戻ってきていると聞いています。土曜日とかその前よりは修正できているかなと思うので、早慶戦に向けてもう一段階上げさせて、ピッチングさせられたらいいと思います。

「意地でも出ます」


明大3回戦で勝ち越しの適時二塁打を放つ小藤

――膝の調子は

 まぁ、順調です(笑)。

――早慶戦には出られそうですか

 出ます。

――捕手としてですか

 はい。意地でも出ます。

――今季の慶大の印象は

 8勝0敗という無敗の状況できていて、投打ともにかみ合っていて、今まで通り粘り強い野球をしているなという印象ですね。全勝で優勝させるわけにはいかないので、そこは慶応に勝って勝ち点を取るんだという思いでやっていきたいと思います。

――今季の慶大打線の印象は

 小原(和樹、4年)が打点をすごく稼いでいて、その前にもいいバッターがそろっています。なので、そこの上位打線をいかに抑えられるかが鍵になると思います。しっかりと集中して抑えたいなと思っています。

――対戦が楽しみな選手は

 郡司(裕也主将、4年)ですかね(笑)。

――やはり意識はしますか

 まあちょっとは意識します(笑)。

――慶大投手陣についてはいかがですか

 第2先発の森田(晃介、2年)が防御率0・00で。点を取られていないので。リリーフ陣も安定していて、なかなか点数を取るのは難しいなと思います。

――点数を取るとすれば、どのようなかたちだと思いますか

 粘り強く。2ストライクまで追い込まれたとしても粘り強く対応していき、どれだけ得点圏にランナーを進められるかが重要なので、そこでプレッシャーを掛けられればいいと思います。

――副将として今のチーム状況をどう見ていますか

 立教戦で勝ち点を落としてしまい、明治や東大に勝った後に比べると少し落ちているような感じはあります。ですが、早慶戦に向けて、4年生にとっては最後のリーグ戦になるので、今週1週空いているので、練習から士気を上げていこうという雰囲気にはなっています。

――大学最後の試合となりますが、大学野球をどう終えたいですか

 勝つのは一番なのですが、先日の試合が終わってからもやり切って終わりたいという話はしていて。ラグビーの日本代表がやり切ったと話していたので、悔いのないように全力を出し切って終わるのが一番いいのかなと思います。

――最後に意気込みをお願いします

 4年生にとっては最後の試合となるので、本当にいいかたちで終えられるように。全勝している慶応に絶対に勝つという気持ちで最後までやりたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 金澤麻由)


苦しみも多く味わった四年間、それでも前を向いて秋を締めくくります!

◆小藤翼(こふじ・つばさ)
 1997(平9)年8月6日生まれ。181センチ、87キロ。東京・日大三高出身。スポーツ科学部4年。捕手。右投左打。先日まで日本テレビ系で放送されていた『あなたの番です』には大好きな西野七瀬さんが出演していました。最終回を前に黒幕筆頭候補とされていた西野さんが、他の部員からいろいろと言われるのを聞いて、思わずかばってしまったようです。「あれは役ではなく、西野七瀬さん自身のことを言われていたので」。野球に対しても西野さんに対しても愛が強い小藤選手でした。