Perfecta Naviをご覧の皆様、後閑信一です。今回はヤマダグリーンドーム前橋で行われた、G1第28回寛仁親王牌・…

Perfecta Naviをご覧の皆様、後閑信一です。
今回はヤマダグリーンドーム前橋で行われた、G1第28回寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメントについて書きたいと思います。

寛仁親王牌は毎年、全日本プロ選手権自転車競技大会で各競技を勝ち抜いて出場権を得た選手たちが優先的に選抜されます。5月に松山競輪場で行われた全プロ競技大会の結果、スプリントは横山尚則(茨城100期)選手、1㎞TTは南潤(和歌山111期)選手、そしてケイリンは山田英明(佐賀89期)選手がそれぞれ優勝し、初日に行われる日本競輪選手会理事長杯の出場権を勝ち取りました。
寛仁親王牌の開催地である地元・群馬からは111期の蕗澤鴻太郎選手が1㎞TTで3位に入賞して特選シード権を勝ち取ると、同じく113期の小林泰生選手も4㎞個人パーシュートで3位に入賞して出場権を獲得!さらに小林泰正選手の叔父にあたる45歳の大ベテラン・小林潤二(群馬75期)選手はエリミネイションで3位に入賞して鉄人ぶりを発揮!『G1タイトルに近い男』木暮安由(群馬92期)選手を筆頭に、地元・群馬勢に期待は集まりました。

初日に目を引いたのは6レースの佐々木龍(神奈川109期)選手と12レースの清水裕友(山口105期)選手です。佐々木選手は残り2周の赤板から先行態勢に入ると、関東2車の吉澤純平(茨城101期)選手―神山雄一郎(栃木61期)選手を打鐘で迎え入れて、絶好とも言える3番手の位置を確保!脚を溜めて息を整えます。最終ホームでは先行する関東勢を山本伸一(京都101期)選手―稲垣裕之(京都86期)選手―内藤宣彦(秋田67期)選手のラインが叩きにいくと、1コーナーで神山選手が山本選手をブロック。その際に神山選手が外帯線を外してしまいました。ライン2車なので仕方のないことだと思いますが、その空いた内のコースを佐々木選手がシビアに突いて、レジェンド・神山選手を躊躇(ちゅうちょ)なく捌きました。この気合いと捌く技術から、お父さん譲り(佐々木龍選手の父は、長きに渡りS級1班に在籍した筋金入りの名マーカー・元人気競輪選手である佐々木龍也さん)のDNAを感じました。これから佐々木選手には先行で脚を作りながら、勝負の時は今回のようにシビアに攻めるなど、自分の色があるレーススタイルを確立して頑張ってもらいたいものです。


そして、度肝を抜かれたのは日本競輪選手会理事長杯12レースの清水選手です!対する近畿ラインは繰り上がった三谷竜生(奈良101期)選手が加わって、南選手―三谷選手-村上博幸(京都86期)選手―村上義弘(京都73期)と、昨年までの近畿の勢力を思い出させる強固な布陣でした。横山選手―平原康多(埼玉87期)選手の関東ラインと清水選手-山田選手のライン、単騎の浅井康太(三重90期)選手が果たして太刀打ちできるのか?という観点で、非常に興味深いところでした。
レースは全開で平原選手を引っ張る横山選手を近畿勢がカマす展開となり、清水選手は後方に置かれて近畿勢の後ろ。最終ホームでは南選手の力が尽きた瞬間に、間髪入れず三谷選手がインから捲り発動!清水選手にとっては万事休すの状態かと思いましたが、捲る近畿勢の上をさらに捲り上げてしまったのです!しかも後ろにマークした山田選手がついていけないほどの加速力で、これには私も驚きました。清水選手は今年初旬、別府G1全日本選抜競輪で落車し、自身初の鎖骨骨折を経験。先の見えない不安の中でも、シッカリと向き合ってきた成果でしょう。復活と、呼べる大きなインパクトを残した清水選手らしい破壊力だったと思います。


2日目は台風で順延となりましたが、108名の選手達は思い思いの調整で1日を過ごしました。ヤマダグリーンドーム前橋は競輪場に選手宿舎が併設されておらず、選手はバスで競輪場とドームを往復するのですが、順延の日は10名が宿舎に残り、98名の選手がドームにやってきました。その内の94名がバンクで自転車に乗り、残りの4名は自転車の整備や雑談などで雰囲気を感じている様子でした。私は自転車に乗らずにいた中川誠一郎(熊本85期)選手と話す機会がありました。ご存知の通り、中川選手は既に今年のG1を2度、優勝しており、年末のKEIRINグランプリの切符を手にしていますから穏やかな笑顔を絶やさずに対応してくれました。


その中川選手は二次予選Bで、新山響平(青森107期)選手の先行を絶体絶命の7番手から捲り切って1着。その勢いはさらに冴え渡り、準決勝12レースでも平原選手、村上義選手、和田真久留(神奈川99期)選手を相手に、打鐘から絶妙なタイミングで仕掛けて圧勝!決勝戦へと駒を進めました。

同じく準決勝11レースではタイヤ差で4着と、惜敗という結果になってしまいましたが、佐藤慎太郎(福島78期)選手の最終4コーナーでの絶妙なコース取りと、それに負けていなかった浅井選手の冷静な走りには『日本の競輪』の醍醐味を感じました!
そして、準決勝10レースには大会前に「自分の力でKEIRINグランプリの権利を勝ち取りたい」と、コメントしていた松浦悠士(広島98期)選手が登場。力と技を兼ね備えた『今最もG1タイトルに近い男!』である松浦選手が同期・原田研太朗(徳島98期)選手をマーク。このレースに注目していた方も多かったことかと思われますけれども、原田選手は初手の位置取りから押さえるタイミングまで、日頃、あまり見られないレース運びでした。原田選手は内に包まれることを嫌い、レースを早目に動かそうと思ったのではないでしょうか?しかし、結局は勝負所で元の位置に戻ってしまい、松浦選手も仕掛けが遅れてコースがなくなり、両者とも準決勝敗退という結果に。


それでも、松浦選手は翌日の特別優秀11レースで、古性優作(大阪100期)選手、柴崎淳(三重91期)選手、和田真選手を相手に、残り2周の赤板から先行して、アッサリと、逃げ切ってしまいました。あの強さを見れば、見る程、準決勝が悔やまれます。次回からの松浦選手の走りに期待したいです。

そして、決勝です。メンバーは三谷選手―村上博選手の近畿勢、清水選手―中川選手―園田匠(福岡87期)選手の3車、小松崎大地(福島99期)選手―和田健太郎(千葉87期)選手の2車。そして、浅井選手と地元・群馬の木暮選手が単騎の競走となりました。
三谷選手は落車負傷による前半戦の出遅れが響いてしまい、タイトルを獲るしかKEIRINグランプリの出場権を得られないので、自身が勝ちにいくレースをしてくるのではないか?そうなると先行するのはライン3車の清水選手なのか?清水選手がスンナリ先行ならば番手絶好となる中川選手?そうなると3番手・園田選手の突っ込みまである?単騎の木暮選手の分断や浅井選手の一発強襲は?小松崎選手も何か仕掛けてくるはず!と、実に様々な推理が浮かんでくる非常に楽しみなメンバー構成となりました。
レースでは残り3周から清水選手が前団に上昇を開始すると、小松崎選手が中川選手の内側で粘り、単騎の木暮選手と浅井選手はその併走の後ろで仕掛けのタイミングを図ります。残り2周の赤板1コーナーから打鐘を目掛けて三谷選手が一気にカマしてスパート。清水選手は内側を締めながら走っていたことにより、スピードを立ち上げる際にパワーをロス。それでも、近畿勢を追った3番手に入り、最終バックから追いつく勢いで捲っていきましたが、脚力が回復せずに一息ついてしまいます。結果、三谷選手の番手からキッチリ差し切った村上博選手が自身3度目(4日制以上のシリーズ)となるG1制覇を達成しました。


度重なる怪我や苦難から何度も立ち上がり、諦めずに挑み続けた40歳の漢が流した涙を見て、私も胸が熱くなりました。これで年末のKEIRINグランプリは近畿から1人加わったので、現段階では脇本雄太(福井94期)選手の後位に、村上博選手がマークする近畿ラインのイメージが浮かんできます。

11月の小倉G1競輪祭まで、KEIRINグランプリの出場権争いから目が離せません!

【略歴】


後閑信一(ごかん・しんいち)

1970年5月2日生 群馬県前橋市出身
前橋育英高在学時から自転車競技で全国に名を轟かせる
京都国体においてスプリントで優勝するなどの実績を持つ
技能免除で競輪学校65期生入学
1990年4月に小倉競輪場でデビュー
G2共同通信社杯は2回(1996年・2001年)の優勝
2005年の競輪祭で悲願のG1タイトルを獲得
2006年には地元・前橋でのG1レース・寛仁親王牌も制した
その後、群馬から東京へ移籍
43歳にして2013年のオールスター競輪で7年ぶりのG1優勝
長きに渡り、トップレーサーとして競輪界に君臨
また、ボスの愛称で数多くの競輪ファンから愛された
最後の出走は2017年11月10日のいわき平F1
年末の12月27日に引退を発表
2018年1月に京王閣、立川、前橋でそれぞれ引退セレモニーが行われた
現役通算2158走551勝
引退後は競輪評論家やタレントとして活躍中
長女・百合亜は元ガールズケイリン選手(102期)である