いよいよ来年は東京2020オリンピック・パラリンピック! チケット販売でもすでに盛り上がりを見せているが、まだまだ知られていないのが「パラリンピック」の面白さ。そこで今回は、伊集院光氏やスポーツジャーナリストの増田明美氏といったパラリンピッ…
いよいよ来年は東京2020オリンピック・パラリンピック! チケット販売でもすでに盛り上がりを見せているが、まだまだ知られていないのが「パラリンピック」の面白さ。
そこで今回は、伊集院光氏やスポーツジャーナリストの増田明美氏といったパラリンピックに魅了された著名人、現役の国内トップ選手やパラリンピアンの視点から見た「パラリンピックの見どころ」をご紹介。去る9月17日、東京・有楽町朝日ホールにて行われた、障がい者スポーツシンポジウム『応援しよう、目の前で感じよう』にて、「パラリンピックって実はめちゃめちゃ面白い!」と語られたその知られざる魅力とは?
興味のポイントは「純粋に面白いかどうか」でいいまず、パラリンピックというと、あまり馴染みがないこともあって、どんな競技があるのか? 競技のどんなところが面白いのか? なんだかよく分からないという人も多いだろう。
この日の障がい者スポーツシンポジウムでは、東京2020パラリンピックで注目度が急上昇中の「車いすラグビー」、「ブラインドサッカー」、「車いすマラソン」を取り上げ、それぞれの競技の国内トップ選手である池崎大輔選手、加藤健人選手、パラリンピアンの花岡伸和さんが登壇し、プレゼンテーション&デモンストレーションが行われた。
「車いすラグビーは動画を見ただけでヤバイ、面白そうだと思った」四肢に障がいのある選手が行う「車いすラグビー」とは、ラグビー、バスケットボール、バレーボール、アイスホッケーなどの要素が組み合わされた競技で、バスケットボールと同じ広さのコートを使用する。試合は4人対4人で行われるが、車いす同士で唯一ぶつかり合うことが許されたパラリンピック競技であり、別名”マーダーボール(殺陣球技)”と呼ばれるほどに過激な試合展開を楽しめる、と人気急上昇中だ。日本は現在、世界ランキング2位の強豪国ということもあって、東京2020パラリンピックでの金メダル候補としても注目されている。
車いすラグビーの動画を観た伊集院さんは、「自分はこの競技、面白そうかどうか、というのが興味の純粋なポイントなんです。世の中にはパラスポーツを面白いだけで観てはいけない、という空気がちょっとあるんです。でもそうじゃないと思うんですよ、こんな面白い競技があるんだ、という純粋な興味でいい。車いすラグビーは動画を見ただけでヤバイ、面白そうだと思ったので、早くルールブックを取り寄せたい」と興奮気味に語っていた。
車いすが転倒することもしばしば。そのタックルの衝撃レベルとは?会場では、車いすラグビーの醍醐味であるタックルはどのくらいの衝撃なのか、池崎選手の提案で増田さんが体験することに。実際にぶつかると、“ゴンッッッ!!!”という爆発のような音が会場に響き渡り、増田さんも「すごい衝撃!」と驚き、そのインパクトに会場も騒然。池崎選手は「試合の一割くらいの力で当たった」と言っていたが、十割の力ならどれほどの衝撃があるのだろうか。海外の試合ではみんなビール片手に声援を送り、激しくぶつかって転倒したときが一番盛り上がるそうだ。本気のタックルの衝撃音と迫力をぜひ生の試合観戦で体感してみたい。
「ブラインドサッカーには、 “消える魔球” のような技もあるんですよ」「ブラインドサッカー(5人制サッカー)」とは、視覚に障がいのある選手が行うサッカーで、転がると音の鳴るボールを使用し、5人対5人で試合が行われる。フィールドプレイヤー4人はアイマスクを着用し、ゴールキーパーは晴眼者か弱視者が行うのがルールだ。また、ゴールの後ろには、声でゴールの位置や角度、距離などを伝えるコーラーと呼ばれるガイドがいるのも特徴。
視覚を完全に遮断された状態でどのようにプレーするのかというと、ボールから出る音やガイドの声を情報の一つとし、自分がどこにいてどこにボールがあるのか空間をイメージしてプレーしている。
伊集院さんは以前よりブラインドサッカーの熱心なサポーターであり、その魅力を「ブラインドサッカーには、僕がやっているラジオという職業の表現方法のためにすごいヒントがたくさんあるんです。本能的にうれしいことがあると騒ぐというのもスポーツの楽しみ方だけど、ブランドサッカーの場合、ひいきのチームがゴールに向かって頑張っている時に、声を出して邪魔をしてはいけない、という観客側のマナーがあるのも面白くて。ゴールの瞬間、やっと声をあげられるという歓喜で、俺らも一緒に戦っていると本当に思えるんですよ。初めて観戦したとき、こんなに面白いスポーツがあっていいの!?と思いましたね」と語っていた。
それから「ドリブルでボールにあまり回転を与えないで、中に入っている鈴を鳴らなくするという、とんでもない技を持っている選手もいる。(音がしないからボールの所在がわからない)これって、我々目が見える人間に置き換えると、消える魔球なんですよ。そんなことが目の前で行われているんだと気付いたときに、鳥肌が立つのが面白い」という通ならではのテクニックに注目した見方も教えてくれた。
加藤選手は、「日本ブラインドサッカー協会は障がいのある、なしに関係なく交ざり合う社会というものを目指しています。そのビジョンの共有が大事になってきますね。パラスポーツも障がい者が頑張っている、という見方ではなく、一人のスポーツ選手として観てほしいですね」と、アスリートとしての想いを熱く語っていた。
「車いすマラソンは腕の力だけじゃなく、実は麻痺している下半身も使うんです」車いすマラソンのルールは簡単。競技用車いすに乗り込み、一般のマラソンと同じ42.195kmを競い合う。競技用車いすはオーダーメイドの三輪タイプで、車輪も含めると70~80万円するという。花岡さん曰く、平坦な道で車輪を漕いで出せる限界は約40kmだそうだが、コースに高低差があるボストンマラソンの下りでは、なんと時速80キロが計測されることもあるそうだ。ペース配分や駆け引きなど戦略も見どころであり、逃げやロングスパートなど選手によって得意な戦法も様々。世界記録は1時間20分14秒で、一般のマラソンの記録よりもはるかに速い。
車輪は腕の力だけで漕いでいると思いきや、花岡さんによると「腕だけではなく、全身を使っているんです。下半身が麻痺しているところも利用しないとパフォーマンスが上がらないんですよ。上から押すように漕いでいるけど、自分の体重をフルに活かしているんです。重力を味方につけるというか。例えば宮本武蔵は剣で相手にもたれるという表現をしていたんですけど、それはまさに剣や自分の重さを利用しているんですね。そういうテクニックを使っています」と興味深い技も教えてくれた。
この日、会場で選ばれた観客の男性が競技用車いすを体験。「実際に漕いでみると、全身で動かすという意味が分かりました」と感想を述べていた。
最近は競技用車いすに乗れる体験イベントも多く開かれ、より身近になった車いす競技。VRで車いすに乗って走る感覚になれるものもできているとのことで、近い将来、ゲームセンターなどで気軽に体験できる日が来るかも!?
今回の障がい者スポーツシンポジウムに登壇したパネリストすべてが共通して口にしていたのが、とにかくパラスポーツを生で観戦してほしいということ。目の前で観ることによって伝わる競技の面白さ、ひらける新たな世界。現在、東京2020パラリンピックを目前に控え、出場枠を狙う選手たちによるレベルの高い大会が目白押しというから、生で観戦するには絶好のタイミングだ。自分で足を運んで体験し、今回のパネリストのように独自の視点でパラスポーツの面白さをぜひ発見して欲しい。
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https://www.parasapo.tokyo/scheduletext by Jun Nakazawa(Parasapo Lab)
photo by Tatsuhiro Haraji