全日本大学グレコローマン選手権2日目。この日は決勝が行われた。決勝に残ったのはともに昨年王者の宇井大和(スポ4=和歌山・新宮)と山﨑弥十朗(スポ4=埼玉栄)の2人。早稲田最後の年で2人は見事2連覇を成し遂げた。しかし、敗者復活戦には誰もま…

 全日本大学グレコローマン選手権2日目。この日は決勝が行われた。決勝に残ったのはともに昨年王者の宇井大和(スポ4=和歌山・新宮)と山﨑弥十朗(スポ4=埼玉栄)の2人。早稲田最後の年で2人は見事2連覇を成し遂げた。しかし、敗者復活戦には誰もまわることができず、昨年の総合8位よりはアップしたものの、優勝を狙えるメンバーであったために悔しい結果となった。

 先に決勝の舞台を迎えたのはグレコローマン専門の宇井。今大会を一番の目標と語っていた宇井は何としても学生最後の年に優勝を飾りたい。前日の予選ではパッシブやバックポイントを先にとられるなどいつもとは違った展開となった。「昨日は毎試合緊張しちゃっていつもよりプレッシャーを感じてしまった部分がありました」と振り返っていて、グレコローマンの学生の最高峰である今大会への緊張感が少なからずプレーに影響した。しかし、決勝ではその緊張を跳ね飛ばすほど圧倒的な実力を見せつける。開始して数十秒でパッシブをとると、相手の腰を抱え4点の大技を決めた。その後も相手を決して逃さずホールドし続けもう一度投げの体勢に入ったが、これは投げの瞬間宇井の足がわずかに出ていて場外プッシュの扱いとなり6−0となる。技を決めテクニカルフォールで終われるところを逃し、再び組み合いが始まると思われたが、再開のホイッスルが鳴った直後宇井が相手の一瞬を突き背後をとってバックポイントを獲得。試合開始わずか1分で念願の連覇を決めた。まさに貫禄の勝利。早稲田に入学してから今大会3度目の優勝を果たした。「清々しく気持ちよく終われた」と安堵しながら話した宇井。今大会は連覇を阻む厳しい試合が何度もあったが、プレッシャーを見事はねのけ実力を存分に発揮した。


パッシブからのチャンスを活かした宇井

 宇井に続きたい山﨑。フリースタイルの選手でありながら今大会安定した試合運びを見せていたが、決勝もその展開は変わらなかった。太田監督がパッシブからの攻撃力とグラウンドでのディフェンス力がグレコローマンには必要と語っていたが、山﨑はまさにその両方を決勝で見せた。先にパッシブをとられピンチを迎えるも、山﨑の体を回してこようとする相手に対し必死に耐え抜いてポイントを獲得させない。しかし、自分がパッシブをとると、ローリングを確実に決めチャンスを活かした。また、第2ピリオドでフリースタイルのときのような素早い動きで相手のバックをとり追加点。その後堅固な守りで失点を防いだ山﨑は5−1で宇井と同じく2連覇を果たした。「2連覇できて嬉しいですね。しかも大和と一緒できた」と同学年の2人で連覇できたことに試合後喜びを見せた山﨑。しかし、チームとしての質問については「もったいないところで負けて結局点数がとれなかったです。団体ではやっぱりちょっとチームとしては残念だったなと」と主将として悔しさをにじませた。


グラウンドでのディフェンス力を発揮し技を防いだ山﨑

 宇井と山﨑が見事連覇を成し遂げタイトルを獲得した。グレコローマン専門の宇井は最後の学生の大会を制し、また8月の全日本学生選手権(インカレ)でも優勝しているため、文句なしの学生王者と言っていい。早稲田最後の年というプレッシャーのかかる場面で2人で2連覇という偉業を成し遂げた。しかし、チームとしての課題も今回浮き彫りとなった。今大会優勝したのはともに4年生。来年には当然引退してしまう。「グラウンドのディフェンスと自分のチャンスのときにポイントがとれないっていうのが明確な課題」と太田監督が振り返ったように、来年以降今大会で早稲田が総合優勝を狙うにはグレコローマンにおける全員のレベルアップが必須である。今大会の敗退を糧に今後へ繋げることができるか。

(記事、写真 北﨑麗)


優勝した宇井(左)・山﨑(右)と小玉彩天奈(真ん中)

結果

▽67キロ級 

宇井 優勝 

▽87キロ級

山﨑 優勝

▽63キロ級

吉村 8位入賞

▽130キロ級

小西 7位入賞


コメント

太田拓弥監督

――宇井選手と山﨑選手2人とも優勝されました

去年と同じようなかたちで2人とも優勝して、ただ他の者が誰も敗者復活にまわれなかったというのは…。しかも優勝した2人は4年生なので、来年以降課題が出たなというのがあります。2人は本当に自分の持ってるものを全て出して勝ったことに関してはすごくよかったなと思います。

――2人の持ってるものというのは昨日おっしゃってたパッシブからの流れですか

そうですね、はい。大和(宇井)なら持ち上げ、それでポイントとれましたし、弥十朗(山﨑)は最初相手にパッシブをとられましたけど、その後よく返せましたし、しっかりポイントを重ねて、ほぼ完勝で勝った点がよかったなと思いますね。

――山﨑選手の決勝を振り返って

やっぱり相手の方が体が大きいのでその圧力に負けてましたね。ただ相手が力任せにきてて、弥十朗はフリースタイルの選手なので、フリースタイルの前さばきでうまく相手をさばいて攻撃を防いで。また崩すことによって相手もバテてくるので、後半の2点なんかはそのさばきからの展開だったので、弥十朗らしさが出た試合内容だったんじゃないかなと思います。

――宇井選手の決勝は圧勝といえる試合でした

インカレと同様に決勝戦はすごいよかった内容でした。最初の投げの点が本来なら5点なんですけど4点になって、あの時点で本当はテクニカルだったんでちょっと気が落ちるところだったんですけど、すぐポイントをとりにいったのでそこはやっぱり大和強さなんじゃないかなと。

――優勝者が2人という結果について来年以降の課題を具体的にいうと何でしょうか

グラウンドのディフェンスと自分のチャンスのときにポイントがとれないっていうのが明確な課題です。これはまあグレコローマンでもフリースタイルでも同じことが言えますので、その課題をしっかり克服できるように。この後内閣(内閣総理大臣杯全日本大学選手権)ありますから、そこで1人でも上位進出者を出して総合優勝を目指したいと思います。

宇井大和(スポ4=和歌山・新宮)

――優勝おめでとうございます!

ありがとうございます!

――今の率直なお気持ちは

単純にやっぱりホッとしたという気持ちが一番大きいですね。

――インカレで今大会が自分にとって一番の目標とおっしゃってましたが、今大会をどのような心境で迎えましたか

1年生のときも優勝してて、2年で優勝できなかったんですけど、2回今まで優勝してて、今回勝ったら3連覇ではないですけど、3回目の優勝ということで確実に勝ちにいかないとなというプレッシャーもあって。そのプレッシャーのせいか分からないですけど、昨日結構試合内容的にはあんまりよくなかったのでそこで引きずらないように今日は挑んで、結果きっちり勝ちきることができたのでよかったです。

――緊張感は結構ありましたか

緊張はしましたね。いつも結構緊張するんですけど、大体いつもは何試合かしたら緊張なくなってくるのに昨日は毎試合緊張していつもよりプレッシャーを感じてしまった部分がありました。

――決勝ではパッシブから投げも決まりましたが、いけるなという感触がありましたか

そうですね、初戦や2回戦は今までのスタイルとは別に、パッシブとりにいくというよりスタンドでとりにいこうと中途半端にいっちゃって、そこで相手に技を決められたので、決勝ではパッシブを確実にとりにいこうというスタイルを徹底して行ったのでしっかりグラウンドもとれてよかったです。

――決勝での戦いをご自身で点数をつけると

90ですね。2回目のグラウンドのリフト返すときが場外の1点だけになっちゃったので、あそこをしっかり。決めていればテクニカルだったし、100点だったんですけどね。けどその後のバックをとれたのはたまたま決まってよかったなと。

――最後のバックポイントはたまたまだったんですか

たまたまですね笑。インカレのときもやってたんですけど、決まるかなと思ってやったら運よく決まったのでよかったです。

――試合終了のブザーが鳴った直後の心境は

終わったって感じですね。まだ大会は一応12月の全日本があるんですけど、学生の大会はもう全日本グレコで終わりなので、まだ引退ではないですけど、清々しく気持ちよく終われましたね。

――天皇杯があと2ヶ月でこれが早稲田の選手として最後の大会になりますが、最後に意気込みをお願いします

全日本の舞台ではまだまだ優勝を狙える実力はないので、本当に挑戦者として最後に自分の実力を全て出し切りたいと思います。

山﨑弥十朗(スポ4=埼玉栄)

――優勝おめでとうございます

ありがとうございます!

――率直なお気持ちは

2連覇できて嬉しいですね。しかも大和と一緒にできたので。まあ去年と同じなんですけど、その中でもやっぱりなかなか2人で2連覇というのは出ないと思うので、ある意味偉業を達成したのかなと思ってます。

――予選から相手を圧倒していた印象ですが、勝因はどこにあると思いますか

グレコローマンの試合でしたけど、自分のフリースタイルの基本的な動きをできたというのは大きくて、グレコだからグレコに染まるんじゃなくてフリースタイルの自分が持ってる力を存分に出せたというのがよかったと思います。

――グレコローマン専門ではないですが、今大会にはどのような意気込みで臨みましたか

去年優勝したのでしっかり2連覇とれるように意識してました。

――チームとしての今大会への意気込みはどのようなものでしたか

今回は優勝できるメンツで、それこそ皆上位を狙えると思ったんですけど、僅差で負けてしまって、その僅差で負けた相手がまた僅差で負けてというようなことが多かったので、そうやってもったいないところで負けて結局点数がとれなかったです。団体はやっぱりちょっとチームとして残念だったなと。

――僅差で負けてしまった具体的な敗因とは

皆フリースタイルの動きをしてグレコローマンをやろうとしたんですけど、専門的な話になると、グラウンドのところでやっぱりフリーとグレコで専門性があって、グレコローマンはどうしてもダイナミックな技に対応しきれないというのがフリースタイルの弱点としてあるので、そこを突かれてしまったのがやはり痛かったのかなと思います。

――来年以降はそこを修正できるように

そうですね、チームで話し合ってそういう結論になりました。

――来月全日本大学選手権がありますが、そこに対する意気込みをお願いします

去年も負けてしまって、インカレと今回の全日本グレコ優勝できたので、この流れにのって優勝目指して頑張ろうと思ってます。

――チームとしては

もちろん優勝狙っていって、65キロ級の安楽と2位の吉村、3位の岩澤とか強いメンバーが揃ってるので、優勝目指して頑張っていきたいと思います。