東京六大学野球秋季リーグ戦 第5週 慶大1回戦 2019年10月14日(月) 神宮球場    台風が去り、迎えた慶大との『天王山』。その第一戦は雨中での息詰まる接戦となった。法大は2回、相手のバッテリーエラーにより幸先よく先制。しかしその…

東京六大学野球秋季リーグ戦 第5週 慶大1回戦
2019年10月14日(月)
神宮球場

 
 台風が去り、迎えた慶大との『天王山』。その第一戦は雨中での息詰まる接戦となった。法大は2回、相手のバッテリーエラーにより幸先よく先制。しかしその裏、すぐさま瀬戸西純に適時打を許し、同点に追いつかれてしまう。その後は朝山広憲(法4)、高橋佑樹の両先発が粘りの投球で得点を与えず、試合はこう着状態に。今日もロースコアの試合展開となった。しかし、その均衡が8回に破られる。この回からマウンドに上がった内沢航大(キャ4)が小原和樹に適時二塁打を許し、2点を献上した。貴重な得点を許した法大は追い上げを見せることができず、最終回は三者凡退に倒れ、1—3で試合終了。『全勝対決』の初戦は慶大に軍配が上がることとなった。

 

戦評

 今季、無傷の6連勝中の法大。今カードは優勝に向けた『天王山』とも言える慶大戦だ。3季連続で勝ち点を挙げられていない宿敵との、優勝をかけた負けられない大一番に挑んだ。

 先発は今季3勝を挙げ波に乗る朝山広憲(法4)。対する慶大はエース高橋佑樹。初回、法大は三者連続三振を喫するも、朝山も三者凡退に抑え、両先発が上々のスタートを切った。試合が動いたのは2回。5番・毛利元哉(法4)がチーム初安打を放つと、7番・舩曳海(キャ4)も続き、2死一、三塁の好機を作る。ここで迎えるは8番・佐藤勇基(法3)。先制点が欲しい中、高橋佑の投じた4球目が暴投に。この間に三塁走者の毛利が生還し、法大が先制点を挙げる。

 しかしその裏、朝山が2つの四球を与えると、8番・瀬戸西純の右前適時打ですぐさま追いつかれ、試合は振り出しに戻る。両先発の好投が続く中、先に動いたのは法大ベンチだった。5回1失点の朝山に代え、昨季慶大戦に先発し勝ち星を挙げた鈴木昭汰(キャ3)を投入。しかし、「立ち上がりが課題」と語る鈴木。先頭打者に安打を許すと、2四死球と2つの暴投で2死満塁のピンチを背負ってしまう。しかし、ここは粘り強く7番・嶋田翔を遊飛に抑え、得点を与えない。

朝山の後を受けた鈴木は満塁のピンチ作るも、粘り強く抑えた

 試合は終盤に差し掛かり、次の1点がどうしても欲しい法大は7回、先頭の3番・福田光輝(人4)が今日2本目となる安打で出塁。2つの内野ゴロで2死三塁と勝ち越しの好機を作ると、打席には、早大戦で2試合連続の決勝打を放っている6番・相馬優人(営4)。しかし、右飛に倒れ、追加点を挙げられない。慶大も好投を続けるエース・高橋佑に代え、好調の津留崎大成を6回から投入。すると、先頭の舩曳が振り逃げで出塁し、犠打と四球で1死一、二塁の好機を作る。しかし、1番・宇草孔基(営4)、代打・札葉弘樹(経4)が打ち取られ、またしても追加点を挙げられない。

好機で右飛に倒れた相馬は悔しさをあらわにした

 試合が動いたのは終盤、8回だった。再三ピンチを切り抜けてきた慶大が、法大に襲い掛かる。この回からマウンドに上がったのは今季無失点の内沢航大(キャ4)。先頭の2番・下山悠介に出塁を許し、2死二、三塁のピンチを迎えると、6番・小原和樹に投じた2球目だった。わずかに浮いた直球を左翼線に運ばれると、これが勝ち越しの左翼線適時二塁打に。2人が生還し、ここまで耐えてきた投手陣が、とうとう慶大に勝ち越しを許してしまう。最終回、法大は3番からの好打順も、三者凡退に抑えられ、試合終了。大一番の初戦を落とした。

 今季初黒星となった法大。しかし、そこに落ち込む様子はない。「負けてからが勝負だ。明日に向けて良い準備してしっかり(試合に)入ろう」と福田。勝ち点奪取に向け、気持ちを切り替え、明日の試合に臨む。

(山田陸斗)

クローズアップ:朝山広憲

 今季の朝山広憲(法4)は本当にたくましい。ここまで3試合に登板し3勝0敗、防御率0.59(13日時点)。数字からも分かるように先発投手として大車輪の活躍を見せている。今日の慶大1回戦でも先発として登板。5回を被安打2、1失点に抑え、先発としての役割を果たす。4回の2死二塁のピンチでは、相手打者に9球粘られるも、最後はインコースの直球で見逃し三振。持ち味の『力強さ』を活かした、強気の投球を披露した。

 今季大活躍の朝山だが、昨季は「振り返りたくないくらい悔しかった」と振り返るほど朝山にとって悔しいシーズンだった。主に中継ぎとして登板するも、本来の持っている力を出し切れず、勝負どころで打たれることが多かった。

 そこで、この夏に朝山は、もう一度自分自身を深く見つめ直した。そして、開幕直前に反省点と改善したことを伺うと、反省点としては「打者と勝負するのではなく、ストライクを取ることに精一杯で自分自身と勝負してしまっていたこと」を挙げ、改善したこととしては、「反省点に合わせてフォームを修正したこと」と、「良いときになぜ良いのかなど自分の中でしっかり考えるようになった」と話す。そこには、確実に技術面だけでなく精神面でも大きく成長した朝山の姿があった。結果として今季は「打者と上手く駆け引きしながら勝負できている」と本人も言うように、『力強さ』を前面に、走者を出しても粘る、本塁を踏ませない投球が出来ている。

 MAX149㌔の剛腕は、周囲からの注目度も高い。東大の浜田一志監督が、春先に期待の投手として朝山の名前を挙げるほどであり、その高いポテンシャルは誰もが認める。学生として迎えるラストシーズン、最後まで『力強さ』を前面に全力を尽くし、秋連覇を目指す。法大の優勝は朝山次第と言っても過言ではないだろう。

(髙橋尚輝)

選手インタビュー

福田光輝 主将

—今日の試合を振り返って

負ける時もあると思っていたので、良い意味でしっかり切り替えて、明日に挑めたら良いなと思います。

—台風で順延となりました

自分たちのやるべきことをしっかりやるだけだと思ってたのでしっかり明日も良い準備して頑張りたいです。

—自身として今日はマルチ安打でした

自分は自分の仕事をするだけと思っていたので、そういう部分では打てて良かったです。

—チームとしては1得点に終わりました

得点できてないわけではないので、気にすることなくしっかり明日に備えたいです。

—ミーティングではどのような話を

負ける時もあると思ってたので「負けてからが勝負だ。明日に向けて良い準備してしっかり(試合に)入ろう」と言いました。

—明日に向けて

やるべきことをやるだけなので、しっかり焦らずやっていきたいなと思います。

—明日に向けての意気込みをお願いします

今日も打席から多くのファンの応援が見えましたし、自分の中でも「打たないわけにはいかない」とめちゃめちゃ力になったので、引き続き応援よろしくお願いします。

 

朝山広憲 副将

—今日のピッチングを振り返って

今日もあまり調子的には良くなかったのですが、ゲームはなんとか作れたかなという評価です。相手投手も良かったので、なかなかこっちも点数が取れないということは分かっていました。そういう意味では、自分が取られてしまった1点は、無駄な先頭の四死球で出したランナーから取られたので、非常に重い1点だったと、今振り返ってすごく思います。

—コンディションについて具体的に良くなかった点というのは

ボールがあまりいってないというのと、制球に関しても自分が思ったところにいってないというところが正直なところでした。そういう意味では、本調子ではないかと思います。点数で言うとまだ50点くらいです。しかし、先発をやらせていただいている以上は、しっかり試合を作らないといけないと思っています。

—コンディションが良くない中で、4回のピンチでは嶋田選手から直球で三振を奪いました

結構粘られていて、変化球もファールにされて、外の真っすぐにも食らい付かれていました。相手バッターも変化球にも目が合ってきているのと、目付けというか、目が外にいっているかなと思っていて、そこでキャッチャーの伊藤がインコースの真っすぐでサインを出してくれたので、フォアボール出しても良いというような気持ちで思い切って投げました。

—試合後のチームの雰囲気は

今日負けてしまったのですが、福田を先頭に誰一人下を向かず、全員前を向いて切り替えていたので、そういう意味では負けは負けですが、明日に生きる負けかなと思います。

—次戦に向けて意気込みをお願いします

今日打たれてしまったのですが、しっかりゲームは作れているので、そういう意味ではピンチでもう一つ粘る投球をピッチャー全員で意識して、明日は勝ちたいと思います。

 

内沢航大 投手

—今日を振り返って

絶対に抑えないといけない場面で、今まで全てのピッチャーが踏ん張ってきた中で、投手責任者という立場で自分が打たれてしまったのがかなり不甲斐ないと思いました。

—台風で試合が順延してしまいましたが、どのような調整を

練習はしっかりできましたし、ピッチングは全員やりました。

—今日は気温がとても低い中での試合でしたが、ブルペンで対策したことは

グラコンなど上に羽織るものを各自持ってきて冷えないようにしています。

—8回に惜しくも決勝点を許してしまいました

終盤であり、監督にも任せたと言われていた中で打たれたのでかなり悔しいです。しかし、優勝が消えたわけではないので明日明後日、しっかり勝っていきたいと思います。

—明日への意気込みをお願いします

今日は打たれてしまったので、明日は必ず抑えてチームも勝てるように頑張っていきたいと思います。

 

鈴木昭汰 投手

—今日の試合を振り返って

今シーズンずっと接戦が続いている中で、慶応ということで、絶対に接戦になることはわかっていたので、そこを勝ちきれなくて悔しいです。

—同点の場面での登板でした

朝山さんがいい形でつないでくれて、終盤に差し掛かるところで、次の1点が決勝点になると思って、気を引き締めて投げていました。

—ピンチを背負った中でしっかりと抑えました

立ち上がりのところで、慶応がそこをついてきて、でもなんとかゼロに抑えられたのが大きかったです。

—慶大打線の印象は

本当に『打線』というか、つないでくるイメージで、嫌なイメージがあります。

—チームは今季初黒星となりました

負けに関しては全然気にしてなくて、ずっと勝ち続ける方が厳しいので、そこは割りきって、明日勝てばいい話なのでそこは大丈夫です。

—明日以降の戦いについて

大一番になると思うので、とりあえず明日、一戦必勝で頑張りたいと思います。

 

相馬優人 内野手

ー慶大戦が今季最大の山場となりましたが、対策は

データを分析したりだとか、高橋佑樹に似ているピッチャーに投げてもらって対策をしました。

ー武蔵小杉は台風の影響を受けましたが、グラウンドの状況は

全然大丈夫でした。みんなで整備をしたりしました。

ー5回表で慶大の選手と交錯しました

全身を打ちました。打撲で済んだので、アイシングをしっかりすれば明日は全然平気だと思います。

ーピンチの時のピッチャーへの声かけは

「いつも通りやれば大丈夫だ」と声かけをしました。

ー明日に向けての意気込みをお願いします

明日負けてしまったら、ここまで6連勝した意味がなくなってしまうので、何としても勝ちます。

 

舩曳海 外野手

—試合の率直な感想は

(今季)初めて負けたので、それは悔しいなと思います。

 

—高橋佑投手、津留﨑投手の印象は

低めを突いてくるピッチャーばかりで、その低めの見極めをしっかりしないと打てないと思うので、そこは明日やっていきたいです。

—第1打席で安打を放ちました

バッティング練習でも良い感じに振れていたので、今日はいけるかなと思っていました。1打席目に一本出たのでそのままいきたかったんですけど、だめでしたね。

—打撃の調子は上がってきている

そうですね。結構自分の形で振れているかなと思います。

—5回の走塁死はエンドランのサインだった

はい。エンドランなのでちょっとスタートを遅らせ気味でいったら普通にアウトだったので、もうちょっと足を速くしようかなと思います。

—明日の試合に向けて

明日もロースコアだと思うので、ワンチャンスをものにして、しっかり勝てるようにやりたいと思います。

 

毛利元哉 外野手

—今日の試合を振り返って

慶応戦ということで、絶対に負けてはいけない一戦目を落としてしまったことが非常に悔しいです。

—台風で順延となり、調整が難しかったと思います

そうですね。でもやることは変わらず、慶応に絶対に勝つための練習はやってきたので、そこは変わりなくできたのかなと思います。

—雨の中の試合となりました

かなりボールは見にくかったです。ゴロの対処も難しかったですね。

—打線は好機を作った中で、あと一本が出ませんでした

自分が2回のチャンスを潰してしまったので、それが良くなかったと思います。

—チームとしては今季初黒星を喫することとなりました

それが一番悔しいですね。黒星がついてしまったというのが。全部白星でいきたかったので、悔しいです。

—ミーティングではどのようなことを

今日のことはもう切り替えろと。明日勝とうという話をしました。

—明日に向けての意気込みをお願いします

もう落とせないので、一戦必勝で、勝ちます。


フォトギャラリー

今日も1安打で好調を維持する毛利は規定打席に到達し、現時点での首位打者に
2回に安打を放ちチャンスメイクをした舩曳は「自分の形で振れている」と語った
先発復帰した安本は3三振と未だ苦しい状況から抜け出せず
主将の福田はチーム唯一の複数安打で打線を引っ張る
4年生が中心となり、盛り上がりを見せるベンチ
リリーフとして粘り強い投球を見せる鈴木
8回、小原に勝ち越し打を許した内沢
今季初黒星も「負けてからが勝負」(福田)と明日に向け気持ちを切り替えた