ラグビーワールドカップは10月12日(土)、台風19号によりニュージーランド対イタリア、イングランド対フランスの2試合が中止となった。唯一の開催となった福岡・東平尾公園博多の森球技場では、日本と同組となるプールAのアイルランドとサモアが対戦…

ラグビーワールドカップは10月12日(土)、台風19号によりニュージーランド対イタリア、イングランド対フランスの2試合が中止となった。唯一の開催となった福岡・東平尾公園博多の森球技場では、日本と同組となるプールAのアイルランドとサモアが対戦した。

アイルランドは2勝1敗の勝点11でプールAの2位。4トライ以上の勝利で決勝トーナメント進出が決まる。サモアは1勝2敗の同5で4位、5大会連続でのプール戦敗退が決まっているが、最後に意地を見せたいところ。過去の対戦成績はアイルランドの5勝1敗。台風の影響で試合開始前から強風が吹くなか、互いのプライドをかけた一戦が始まった。

先制したのはアイルランドだった。前半3分、敵陣5mラインでのラインアウトから一気にモールで押し込み、キャプテンのHOローリー・ベストがトライ。SOジョナサン・セクストンのコンバージョンキックも決まり7-0と先制する。サモアのHOセイララ・ラムが危険なタックルでシンビン(10分間の一時的退出)となり数的有利が生まれ攻勢となると、同8分に縦に仕掛けたPRタイグ・ファーロングが鋭く体を回転し、タックルをかわして加点し14-0とする。

幸先よく得点を重ねたアイルランドは、今度は軽快なランで観客を魅了する。前半20分にSOセクストンからパスを受けたFBジョーダン・ラーマーが細かいステップで相手をかわし、SOセクストンがリターンパスを受けて一気にゴール。コンバージョンゴールも決まり21-0となる。

サモアはチーム全体の統率が取れず劣勢が続くが、前半25分に密集からNo.8ジャック・ラムが力づくでインゴールに飛び込みトライ。コンバージョンキックは外れたが21-5とする。

前半28分にCTBバンディー・アキが危険なタックルでレッドカード、一発退場となったアイルランド。残り時間を14人で戦うこととなったがFWが奮起する。同39分に敵陣5mライン手前でスクラムを組み、最後はSOセクストンがボーナスポイント獲得となる4トライ目を挙げ、26-5とリードを広げて前半を終えた。

後半もスクラムやラインアウトを起点に圧倒するアイルランド。7分にラックを起点に大外からFBラーマーがトライ。SOセクストンが再びコンバージョンキックを決め33-5と大きく突き放す。

その後もアイルランドが主にサモア陣内で試合を進めた。後半24分に肉弾戦で強さを発揮し、ゴールラインの密集からNo.8のCJ・スタンダーが押し込みトライを奪うと、29分にキックパスをCTBアンドリュー・コンウェーがトライで仕上げた。その後、スコアは動かず47-5で試合は終了した。

今大会全ての戦いを終えたサモアのスティーブ・ジャクソンHC(ヘッドコーチ)は、「もう少しコンテストに参加したかった」と率直な感想を漏らし、「私たちの規律はもっと良くなければならない。イエローカードもらってはいけないし、14人でプレーしてはいけない。チームとしてもっと一緒に時間を過ごすことができ、もう少し多くプレーできるといいのだが」と今後のチーム強化に必要なことを語った。

日本戦の敗北から立ち直り、決勝トーナメント進出を決めたアイルランドのキャプテンHOベストは「日本戦の後、私たちは10点取れば通過できることは分かっていた。サモアはプレッシャーがなく、アタックでもディフェンスでも襲いかかってくることは分かっていた」と話した。

退場者を出し14人で長い時間を戦ったことについて、「過去にレッドカードを乗り越えたことがある。それは理想的ではなかったが、一人少ない時、どのように適応するかがチームの特徴を示すと思う。最終的にはパニックは起こらず、チームで攻撃を続けることができた」と胸を張った。

また、アイルランドのサポータについて、「代表としてプレーすることの素晴らしさは、どこへ行っても、日本代表の試合を除いて、本当にアウェイの試合のようには感じられないことだ。それは、信じられないほど特別だ。どこへ行っても緑のジャージがある」と感謝した。

総勝ち点を16に伸ばしたアイルランドは決勝トーナメント進出を決めた。明日13日(日)開催予定の日本対スコットランドの結果で、準々決勝の対戦相手がニュージーランドか南アフリカのいずれかに決まる。4位以下が確定したサモアは、2023年の大会は予選から参加することになった。

◇22歳の新星がプレイヤー・オブ・ザ・マッチに

プレイヤー・オブ・ザ・マッチには、鋭いステップで観客を魅了し、80分間フル出場したFBラーマーが選出された。前半21分に細かいステップで相手をかわし、SOセクストンのトライをお膳立て。後半7分にはタッチライン際を一気に駆け抜けトライを決めた。

昨年2月に代表ビューした22歳は、長年チームの大黒柱を務める同じポジションのロブ・カーニーの後釜として、プール最終戦で猛アピールに成功したが、「サモアはとてもフィジカルが強くタフだったが、自分たちのパフォーマンスに満足している。今日の試合はFWの頑張りであり、我々に勢いを与えてくれたのは彼らのおかげだ」と仲間への感謝の気持ちを忘れなかった。