ロッテは今季、ZOZOマリンスタジアムでの主催ゲームを対象に大好評企画「売り子ペナントレース」を開催。9月には各月優勝者5人による決勝ラウンドが行われ、売り子2年目のななさん(アサヒビール)が見事、優勝を飾った。 「売り子ペナントレース」…

 ロッテは今季、ZOZOマリンスタジアムでの主催ゲームを対象に大好評企画「売り子ペナントレース」を開催。9月には各月優勝者5人による決勝ラウンドが行われ、売り子2年目のななさん(アサヒビール)が見事、優勝を飾った。

「売り子ペナントレース」は、昨年に引き続き2度目の開催。今年はルールを変更し、勤続年数に応じて、日々の売上げ杯数にボーナスを加算する方式となった。1年目は1日の売上杯数の150%、2年目は140%、3年目は130%、4年目は120%で、5年目以上はボーナスなし。ソフトドリンク・日本酒の売上げは勤続年数に関わらず200%に設定されていた。

 さらに、月ごとの売上杯数1位の売り子が、9月の決勝ラウンドに進出する新方式も採用。決勝ラウンドでは、110人の参加者の中から各月の優勝者5人が頂点を目指し、熾烈なデッドヒートを繰り広げた。ZOZOマリンのレジェンドで売り子歴24年の近藤晃弘さん、元カンパイガールズのリーダーで売り子歴12年の今井さやかさんといったベテラン勢に競り勝ち、頂点に立ったのが2年目のななさんだった。

「Full-Count」では、決勝ラウンドで3811杯(2年目のため売り上げ杯数の140%で計算)を売り上げた“女王”ななさんを直撃し、優勝の喜びを語ってもらった。

「実感が沸いていなかったんですが、ニュースを見た友達や同級生などから『おめでとう』というメッセージをもらって、1位になれた実感がだんだん湧いてきました」

 そう笑顔で話すななさんは、昨年8月初旬から売り子を始め、実質1年2か月で100人の頂点に立った。8月のチャンピオンとなり、最後の1枠で滑り込んだ決勝ラウンド。「いつもより気合が入っていました」とやる気全開で臨んだが、同時に「球場にもいつもより早く来て、リラックスする時間を作ったりしていました」と、シーズン佳境を戦う野球選手のようにプレッシャーも感じていたようだ。

 しかし、蓋を開けてみると途中経過発表では常に1位。最後まで首位の座を明け渡さない横綱相撲でレースを制した。それでも「最後まで1位になれる自信は全然なくて、いつどのタイミングで抜かされていてもおかしくないと思っていたので、最後の最後までドキドキしていました」と、全力投球で1か月を駆け抜けた。

ペナントレースが佳境の9月19日、マーティンの逆転3ランがまさかの直撃

 決勝ラウンドの最中には、まさかのアクシデントにも見舞われた。9月19日のオリックス戦。4回に2点を追うロッテは、2死一、三塁からレオニス・マーティン外野手が逆転3ランを放った。頼れる助っ人が運んだ鋭い打球はぐんぐんと伸び、なんとライトスタンドで販売していたななさんの足を直撃。「近くに飛んできたことは何度かあったんですけど、直撃は本当に初めてでびっくりしました(笑)」と明るく振り返るが、怪我の具合では決勝ラウンドを途中棄権しなければならない緊急事態だった。

「何が起こったのかわからなくて、とりあえず痛いので半泣き状態でした……。でも、お客様に『大丈夫?』って声をかけてもらって、やっぱりそこで痛いのを表に出してしまわないように、笑顔で『全然大丈夫です~! 行ってきま~す!』って、すぐに販売しました。全然休むことはなかったですね。ペナントレースをやっていたことも意識していたので、ここで休んでいられないっていう気持ちがあって、すぐに販売しに行きました」

 打球が直撃したふくらはぎには青あざができたが、「販売中は痛みは気にならないです。アドレナリンが出ています」と気合いでラストスパート。最終日の前日、福浦和也選手の引退試合だった9月23日の日本ハム戦では自己最高記録を更新する370杯を売り上げた。

 そして迎えた最終日。2位のりかさん(サッポロビール)に75杯差をつけていたが、「最後まで気が抜けませんでした。朝からお腹がキリキリして……。でも。最後だからどういう結果であれ悔いのないようにやろうと思って。集大成ということで、今まで以上に頑張りました」

 りかさんとは、決勝ラウンドを通じて激戦を繰り広げた。「気になりました。(売れ行きは)どうなんだろうと思って……。お客様が隣同士になって、その場に2人で行って販売とかもありました」。真剣勝負ゆえに互いに意識し合った末、「気まずささえありました」と明かすが、最終日には自己記録を大きく更新する412杯を売り上げ、リードを94杯に広げて勝ちきった。

優勝賞品はホノルル往復ペア航空券、自腹で2人分を足して4人家族でハワイ旅行を計画

 決勝ラウンド開始前には、同じアサヒビール所属の大先輩、今井さやかさんに続く2位に入りたいと謙虚に話していたななさん。ハンデつきで優勝を飾ったが、純粋な売上げ杯数では今井さんが1位だった。「やはり杯数だけ見ましたら、さやかさんが断トツなので、尊敬する気持ちは変わらないです」と、今でもレジェンドへのリスペクトは変わらない。終了後には、「お疲れ様。おめでとう」と声をかけてもらい、「レース中でもピリピリした空気はなく、気さくに話しかけてくださるのは変わらなかった。人間的にも尊敬できる方だなと思いました」と目を輝かせた。

 売り子ペナントレース優勝者には、「販売杯数No.1」の栄誉と優勝賞品「ハワイアン航空 成田-ホノルル往復ペア航空券」がプレゼントされた。航空券の使い道について聞かれると「家族で」と即答。「4人家族なので、あとの2人分は自分が売り子で頑張ったお金で連れてってあげたいなと思ってます」と、家族思いの一面も見せる。

 ロッテはわずか2ゲーム差の4位でクライマックスシリーズ進出を逃し、オフシーズンを迎えた。「お客様や売り子の仲間に半年会えないのは寂しいです」というが、宮崎フェニックスリーグや石垣島キャンプにも出掛ける予定。もちろん、来季も「売り子をやらせていただけたらと思っています」と声を弾ませる。

 来年は売り子として3シーズン目を迎え、後輩も迎えることになるだろう。「今年1年間、先輩方にすごく色々なことを教えていただいたり、優しくしていただいた。来年は、私が新しく入ってきた子たちにそういうふうに接してあげられたらと。それを意識して過ごしたいと思っています」と、先輩から受け継いだ“優しさ”のバトンを後輩にも繋ぐことを目標とする。売り子ペナントレースの連覇については「できたら嬉しい気持ちはありますね」と笑顔を見せた。

 最後に、ななさんからシーズンを通じて応援してくれたロッテファンへのメッセージが寄せられた。

「今年3月から始まって、当初から応援してくださっていた方もいらっしゃいましたが、ペナントレース中には色々な方と知り合う機会が増え、様々なお客様から励ましの言葉をたくさんいただきました。怪我をしてしまったり、声が枯れてしまった時もありましたが、頑張れたのはお客様の温かいお言葉があったからです。応援してくださり、ありがとうございました!」