写真:木造勇人(琉球アスティーダ)/撮影:伊藤圭19歳の木造勇人が琉球アスティーダに加わった。鳴り物入りの入団であることは間違いない。インターハイ優勝に大学インカレでも圧巻の優勝とド派手な成績を引っさげて、新星がTの舞台に参戦する。紛れもな…

写真:木造勇人(琉球アスティーダ)/撮影:伊藤圭

19歳の木造勇人が琉球アスティーダに加わった。鳴り物入りの入団であることは間違いない。インターハイ優勝に大学インカレでも圧巻の優勝とド派手な成績を引っさげて、新星がTの舞台に参戦する。紛れもなく日本卓球界の次代を担うアスリートだ。

「先輩が多いですから。チームだと多分いじられ役になるんじゃないかな…」とはにかむ木造。30代のベテラン台湾勢に26歳の吉村真晴とともに、昨シーズンは最下位に終わった琉球の立て直しを誓う。




写真:木造勇人(琉球アスティーダ)/撮影:伊藤圭

「プレッシャーはない。全員がチャレンジャー精神をもって臨めたら勝ちに近づいていくんじゃないかなって思ってます」

目指すのは琉球再生だけではない、何よりも自分の成長を見据えている。

「やっぱり強くなりたいっていうのはあります。自分に足りないのはタフさ。勝ちきれないところがある。やっぱり上の世代見てるとタフですよね」と自己分析する。これまで勝ち続けた木造が身につけたい“タフさ”とは一体。それを解き明かすには木造の歩んできた歴史を振り返る必要がある。

木造は華やか“すぎる”キャリアを「最強集団・青森山田不在」の中で積み上げてきた。

青森山田不在の中での優勝




写真:日本卓球界を牽引する水谷隼も青森山田高校で腕を磨いた/撮影:アフロスポーツ

卓球ファンの間では知らぬものはいない青森山田。故・吉田安夫監督の体制の下、1997年から強化を開始、各学年に日本代表クラスが名を連ね、24時間卓球に打ち込める環境で腕を磨いてきた。

青森山田の歴史はそのまま日本卓球の歴史とシンクロしている。坂本竜介に始まり、張一博、水谷隼、丹羽孝希…。数々の名選手を輩出してきた。




(図表はラリーズ編集部が作成)

しかし、愛工大名電の木造がインターハイのシングルスで初優勝した2016年には、すでに青森山田の存在感はなかった。

「やっぱり自分が小学生・中学生のときは強い青森山田を見てましたね。丹羽(孝希)さんに森薗(政崇)さん…。やっぱり青森山田は憧れですよ」。

タフさを感じた水谷隼との試合




写真:木造勇人(琉球アスティーダ)/撮影:伊藤圭

ちょっと意地悪な質問を投げかけた。

「この世代とインターハイのとき一緒だったら?」

ちょっと考え込んでこう答える「うーん…。間違いなく、この年に生まれなくてよかったな…」。それほどまでに上の世代は「高い壁」として立ちはだかっている。

事実、ジュニア世代では負け無しの木造も年齢関係なしの大会になるといまだ勝ち星に恵まれていない。

2019年1月の全日本選手権では準決勝で水谷隼に対して1ゲームを先取しながら、そこから4ゲームを連取され敗れた。この大会のコンディションを「3割程度」と語っていた水谷に完敗を喫したのだ。

「あれで3割って。さすがにウソでしょ笑!ていうかウソって思いたいすよ」

上の世代の底力、タフさを感じさせられた1試合だった。

見据えるのは2020のその先




写真:木造勇人(琉球アスティーダ)/撮影:伊藤圭

自分に足りないものはわかった。そこから柔軟にアクションを取れるのは若さの強さだ。

「Tリーグではいろんな海外の選手と打ち合って、強くなるしかないんですよ。その点今年のTは楽しみ。若手だとモーレゴード。あいつは仲いいんですが、すごいやりにくいんですよ」。

他にも木造の口からは林昀儒(リンインジュ・チャイニーズタイペイ)など台頭著しい若手の名前があがる。そう、木造が見据えているのは2020の「その先」だ。2024年、28年には木造はアスリートとしてピークを迎える。

水谷ら日本卓球第1世代から木造たち「第2世代」へ、黄金世代のバトンが継承できなければ、日本の卓球は一過性の「ブーム」で終わるだろう。いつだってスポーツを「カルチャー」として根付かせるのはトップアスリートたちだ。木造は次代の開拓者になるか。柔らかな笑顔の下に潜む「その先」を見たい。

文:ラリーズ編集部