前 佑囲斗(まえ・ゆいと)
●守備 投手 ●身長・体重 182cm・87kg
●生年月日 2001年08月13日 ●所属 津田学園高
●球歴 津田学園高 ●出身地 三重県 ●投打 右右
【写真提供:共同通信社】

 8月13日、甲子園に「ハッピーバースデー」の歌が広がった。

「誕生日を甲子園という最高の舞台で祝ってもらって幸せだなと思った」

 前の18度目の誕生日だったのだ。しかし、履正社との2回戦、目を潤ませ、ほろ苦い記念日になった。

「履正社打戦はすごかった」

 3回裏に5安打集中され5失点。この回で降板することになった。3イニングで9安打を許し、5本は自信のあったストレートを打たれたものだった。

 1回戦、同じ東海地区の静岡と当たる。球数160球と多くなったが、被安打7、11奪三振で完投勝ちした。

「前のボールはスピード以上にベースの上で球の勢いがある。ストレートで空振りが取れる」とスカウトは言う。

「ストレートの回転数を意識している」と本人はいう。140キロ辺りのストレートにキレがあり、打者が戸惑うシーンをよく見かけた。スピードよりもキレが大事。

 そのために工夫を凝らした練習をしているそうだ。ゆったり体を大きく使った力まないフォームからリストを意識してリリースの瞬間を速くする。脱力したワインドアップの始動が特徴的だ。

 昨年、甲子園を沸かせた金足農の吉田がスピン量で注目された。前も吉田を参考にしたという。ピンチの時は球速をアップさせて抑える。「得点圏にランナーがいるときはギアチェンジしている」とチームメイトは言う。

 それは甲子園で戦った静岡の選手も言っていた。

「こっちがチャンスの時のボールはホップしていた。球速以上に、ボールの質がよかった」

 1年の秋から背番号11でベンチ入りするが、入学当時の最速は128キロ。そこから毎晩、白米を1・2キロ食べることを自分に課す。甲斐あって体重は20キロアップした。そしてなにより球速も20キロアップした。最速は3年夏の県大会で出した152キロだ。変化球はスライダー、カット、フォーク、カーブを投げる。

 WBSC U-18ベースボールワールドカップの代表にも選ばれ、3試合に登板した。

 日本の初戦となったスペイン戦、2点を先制された後に登板し好投。逆転につなげた。アメリカには打ち込まれたが、スーパーラウンドのオーストラリア戦では5イニング、9奪三振、無失点と好投した。

甲子園に話は戻るが、履正社戦、最後の9回に再び、マウンドに上がる。

「チームメイトがもう一度、戻してくれた。最高の瞬間でした」

 いい思い出と、まだ通用しない現実と。高校時代に積んだ経験を携えて上のレベルに。

「阪神の藤川球児のような質のいいストレート」

 そんな天性のものを持って、花開くはずだ。

(文・清水岳志)