日本時間10月6日夜に、ヨーロッパの大一番、GI凱旋門賞(フランス・パリロンシャン/芝2400m)が幕を開ける。今年はエネイブル(牝5歳)による史上初の3連覇がかかっており、さらに日本からも3頭が参戦。加えて武豊も地元の3歳馬、ソフト…

 日本時間10月6日夜に、ヨーロッパの大一番、GI凱旋門賞(フランス・パリロンシャン/芝2400m)が幕を開ける。今年はエネイブル(牝5歳)による史上初の3連覇がかかっており、さらに日本からも3頭が参戦。加えて武豊も地元の3歳馬、ソフトライト(牡)に騎乗するなど、見どころが多い。

 3連覇を狙うエネイブルだが、欧州の主要ブックメーカーは軒並み2倍を切るオッズをつけている。今年も3戦無敗。出走が12頭と少なくなって紛れの確率も減った。しかも、ブックメーカーで5番、6番人気となっているマジカル(牝4歳)やヴァルトガイスト(牡5歳)を今年のレースで一蹴しているのだから、当然といえば当然かもしれない。では、本当に凱旋門賞3連覇は可能か。筆者は「大いにアリ」と見ている。




凱旋門賞3連覇を狙うエネイブルは、今年も3戦無敗と好調

 過去に凱旋門賞を連覇したのはエネイブルを除いて6頭。しかし3連覇がいないため、大いなる壁があるように見える。しかし、実際に3連覇に挑戦したのは4年前のトレヴ(当時牝5歳)1頭で、ほかの5頭はみな、2連覇を果たした凱旋門賞をもって引退している。つまり、「3連覇の難しさ」の正体は、「3連覇に挑戦することの難しさ」なのである。

 また、今回の挑戦が、連敗の最中であればもっと懐疑的になっていただろう。しかし今年は3戦無敗で、ヨーロッパの超一線級を相手にしての勝利なのだから、非のつけどころがない。

 仮に敗れるとしても、今年のエネイブルの成績を見る限り、よほどのアクシデントがない限り馬券圏を外すとは到底考えられない。エネイブルと初めて対戦するジャパン(牡3歳)やソットサス(牡3歳)のほうが懐疑的な部分がある。エネイブルを中心に、相手関係が荒れる、と考えて高配当を狙うのが得策だろう。

 その上で重要なファクターが馬場だ。この1週間、パリでは毎日のように断続的ながら降雨があり、パリロンシャンの馬場はかなり渋りそうな予測が出ている。パリロンシャンの馬場は、乾いていればヨーロッパでも高水準の高速決着になり、一方で渋ると途端にパワーが要求される二面性を持つ。

 今年のパリは、夏場は降雨がほぼなく、7月の3歳GIパリ大賞(パリロンシャン/芝2400m)や、3つの前哨戦が行なわれた9月15日の”トライアルデー”では典型的な前者の馬場であった。実際に、この4レースはいずれも2分27秒台と、過去の凱旋門賞と比較しても、速いタイムで決着している。今年の凱旋門賞はそれとは真逆になりそうだ。

 パリ大賞を含めた同じコースでの4つの前哨戦は、スローラップになりやすいことを加味しても、タイムが出やすい馬場でありながら2分27秒台を切ることができなかった。これらのレースの勝ち馬は、凱旋門賞で上位を狙えるレベルではないように思えるため、ほかの路線からエネイブルの相手を探していこう。

 まず狙いたいのが、ガイヤース(牡4歳)だ。これまで7戦5勝。GI勝ちは前走のバーデン大賞(ドイツ・バーデンバーデン/芝2400m)のみだが、その勝利が単騎先行から直線では後続を引き離し、14馬身差でぶっちぎる圧勝劇。一方で今年の春には、今回と同じくパリロンシャン競馬場で行なわれた、GIガネー賞(パリロンシャン/芝2100m)でヴァルトガイストに敗れ3着。さらに前走が「ドイツでのレース」というだけで、日本のオッズでは評価を落とすと考えられる。

 しかし、バーデン大賞の勝ち馬は、凱旋門賞でも結果を出しやすい。また、2100mではヴァルトガイストの標的にされたその先行力も、2400mであれば逆に追いかける相手を消耗させやすい。バテるのを待っていては、そのまま逃げ切られる可能性のほうが大きくなるからだ。渋った馬場でのスタミナ勝負に持ち込めば、大金星まで考えられる1頭だ。

 着狙いということでは、ナガノゴールド(牡5歳)とソフトライト(牡3歳)がその候補だ。ともに追い込み馬で、渋った馬場での消耗戦は大歓迎。前者は、2走前のGIIハードウィックS(英国・アスコット/芝2390m)で、GI級のメンバーを相手に、待機策からGI馬デフォーに次ぐ2着に食い込んでみせた。武豊が騎乗する後者は、前走のGIIドーヴィル大賞(フランス・ドーヴィル/芝2500m)で、やはり後方待機策からの直線一気でナガノゴールドに先着の2着と気を吐いている。

 もう1頭は、凱旋門賞を4勝しているオリビエ・ペリエが騎乗するフレンチキング(牡4歳)。目下4連勝ながら、その内訳がカタール1勝、ドイツ3勝と”格落ち”感は否めないが、いずれもフランスからの遠征となると価値も上がる。前走はドイツのGIベルリン大賞(ドイツ・ホッペンガアルテン/芝2400m)で、着差こそ少ないものの、余裕たっぷりに抜け出しての完勝だった。見た目以上に終いの伸び脚を持つ。

 加えて、騎手のペリエはカタール王族である同馬のオーナーと騎乗契約を持つが、凱旋門賞ではほかの”勝負になる馬”を優先させてきた。しかし今回はあえて騎乗することから”勝負気配あり”と見ていいだろう。

 今回の凱旋門賞は、エネイブルの3連覇はもちろんだが、それを追う実力馬たちにも注目したい。