文・写真=鈴木栄一

Bリーグ4年目のB1開幕ゲームは、川崎ブレイブサンダースと宇都宮ブレックスの一戦となる。昨シーズンと主力メンバーは同じで継続の強みを見せる宇都宮に対し、川崎は新ヘッドコーチに就任した佐藤賢次の下で、変化の真っ最中だ。篠山竜青、辻直人、ニック・ファジーカスとチームの顔である3人と他のメンバーが連携不十分なまま開幕を迎える不安はないのか。大きな注目を集める一戦を前に佐藤に今の心境、チーム作りへの手応えを聞いた。

「お前たち、リーダーシップを持っているのか?」

──まずは、開幕を控えた現在のチーム状況を教えてください。

順調に来ていて、不安はあまりないです。開幕までにやらなければいけないことはたくさんありますけど、それをどうやっていこうかに集中している感じです。故障者が何人か出てしまったのは残念でしたけど、選手はギリギリのところでやってくれていました。

チームがこれから進んでいく方向が分かるロードマップを示して、選手は理解してくれています。その軸があるので気持ちは強く持てますし、マップが作れたことでメンタル強化に繋がります。すごく強度の高い練習を繰り返しやっていて、開幕にはメンバーもだいたい揃いそうな感じなので、楽しみにしていてください。

──川崎はこれまで篠山竜青選手、辻直人選手、ニック・ファジーカス選手が中心となってきました。ただ、この3人は代表活動や故障によって、オフの間ほとんどチーム練習をこなせていません。新しいチームを作る準備期間にこの3人が不在という現状をどう見ていますか?

伝統と変革というテーマがあり、チーム練習をスタートした時は変革に重きを置いて、意識改革からスタートしました。そこから積み重ねてきたものはとてつもなく大きく、この取り組みに選手が意識高くついて来てくれている感覚もあります。どちらかと言うと、ここまで作っていたものに3人(篠山、辻、ファジーカス)がちゃんとついて来てよというイメージです。

ただ、どうしてもその3人がメインだったことに変わりはないので、オフェンスで他の選手が3人を見てしまう状況になってしまいがちになるのは大きな課題です。それを改善できるようにいろいろとやっています。開幕の頃には、この問題が解消されて融合しているようにしたいです。

──「3人について来てよ」ということは、他のメンバーが3人にオフシーズンの間ずっと作ってきたシステムはこうだと、指示するような状況になっていくことだと思います。ただ、これまでの川崎の様子を見ると、そのような光景は想像しづらいです。

そこは難しいところです。僕としては今までやってきたメンバーが自信を持って3人に教える。ここはこうだと、引っ張ってほしい。藤井(祐眞)、長谷川(技)、鎌田(裕也)たちが、竜青に指示をする。そのように変えたいし、変えます。それをやらないと優勝はないと思っています。ただ、現状は自分の目の前が空いていてもニックがノーマークだったらパスをしてしまう、竜青や辻が攻めるとコーナーで待ってしまう。それを「チームとしてないでしょ」と言って、必死になって変えているところです。

これは長谷川(健志、元日本代表ヘッドコーチ)さんから教わったことで、リーダーは組織としての役割として必要だけど、それに関係なく全員がリーダーシップを持っていないとチームはうまくいかない。それと同じことを選手たちに言っていて、7月から青木(保憲)、林(翔太郎)にも「お前たち、リーダーシップを持っているのか?」と言い続けています。

新加入の大塚&熊谷「変革の一端を担ってくれています」

──ケガ人も多く、アーリーカップではベンチメンバーが出場する時間も多かったです。チームの底上げとして大事な彼らの成長ぶりについて教えてください。

プログラム的にアーリーカップで疲労はピークで、ジョーダン(ヒース)が故障で出られなかったのは予想外でしたが、代役を務めた鎌田の成長はうれしい誤算で、びっくりしました。青木と林も成長しています。

以前の鎌田は出るとすぐファウルをするイメージが皆さんにもあったと思います。それがファウルを取られなくなってきたのは、身体が強くなってきたから。最初のコンタクトであたり負けると押し返してファウルになってしまうけど、今は押し負けないようになってきている。本人が自信を持って、顔つきも変わってきています。プレータイムの配分は綺麗に一列にはならないけど、ただ、ここまでの成長があって使わないのはもったいないので、そこは考えています。

──ワールドカップでの篠山選手とファジーカス選手をどう見ましたか?

川崎の選手という視点では見ていなかったです。やっぱり、世界の壁は厚いぞと思いました。ニックはよく我慢しているな、素直に頑張っているなと思いました。また、身体が絞れているのは間違いないです。ここ数年で最もコンディションは良いです。それは竜青もケガをしていますけど一緒です。世界とやった感覚を持って帰って来られたのはすごく大事です。

──新加入の選手がもたらしてくれる効果について教えてください。まずは日本人の2人についてお願いします。

(大塚)裕土に関しては自分のストロングポイントについて迷いがない。シュートが入っても入らなくても空いたら絶対に打つ。それが自分の武器だと思っていて、その迷いがない姿勢を見せ続けることは特に若手に対してプラスになります。守備はもともと得意ではありませんが、裕土のディフェンスで会場が盛り上がったところも、とどろきのプレシーズンでありました。そういう姿勢を貫いてくれるところは大きいです。クマ(熊谷尚也)は普段のほほんとしていますが、キーマンになっています。チームが一番苦しい時に、真ん中からドライブに行ってフィッシュしてくれますし、パスもうまいです。変革の一端を2人が担ってくれています。

──外国籍選手についてはいかがですか?例えばボール運びに長けた3番の選手を取って、実質オン3を多用する選択肢もあったと思います。実際は4番、5番タイプのジョーダン・ヒース選手、マティアス・カルファニ選手が加入しました。また、外国籍選手の枠が一つ余ったままです。

外国籍選手はいろいろなパターンがあり、ニックに対してどういう布陣にするかのパターンの一つにきちんとはまりました。2人ともベースとしてディフェンスにプライドを持っている。ずっと動き続けられるハードワーカーであり、チームにマッチしています。

考えとして3番タイプの選手を獲得して『オン3』をバリバリやるパターンもありました。ただ、そうなった時のシーズンを考えると、3番の外国籍選手が優れたボールハンドラーで、その選手がボールを持ち、ニックがスクリーンに行き、もう一人の外国籍選手がリバウンダーにいる。それで辻、篠山がコーナーに待っていて1試合35分くらいやる。選手を育てていく上で、これは違うのかなという考えはあります。すごく魅力的な一つの方針ではありましたけど(笑)。日本人が活躍しないと面白くない、そこは譲れない部分です。

外国籍の残り一人は、北(卓也)GMと相談しながらになります。今後の選択肢の一つです。レギュラーシーズンいろいろなことがあるので、それに対応できる状況を作っておくことが大事だと思います。

「100%を出せる状況を作ってあげられるコーチでいたい」

──佐藤ヘッドコーチ体制となってから、今まで以上にフィジカル、プレーの強度を重視しています。そこに対する手応えを教えてください。

ハードワークのハードルはかなり上がっていると思います。これまでは7月に始動した後も8月くらいまでは個人でのトレーニング、コンディショニングが主体でしたが、今年はスタート時からシステム作りに入りました。それ自体がキツいコンディショニングにも繋がっています。あとから合流する外国籍選手がスムーズに入れるように、先に入った日本人からコミュニケーションを取って作ってきました。7月からずっと作ってきた軸にブレはありません。

もちろんみんなに期待していますけど、長谷川、藤井、ジョーダン、マティアスの4人がうちのハードワークの心臓部分だと思っています。周りからみると、ニック、辻、竜青が華々しく活躍するのが川崎のイメージだと思いますが、このコアメンバーにくっついて他のメンバーもハードワークをするようになる。それが新しい川崎の軸です。

出だしからフルスロットルで疲れたら交代して、高いエネルギーを40分間続けていく。そういうチームになろうと選手に言っています。12人でプレータイムをシェアするのが川崎の目指すバスケットボールです。逆に5人が30分以上出ているようだったらウチのバスケットボールではない。それは他の選手がエナジーを出せていなくて、特定の選手を使い続けないといけない状況だからです。

──試合中、どんなスタイルで采配を振るのが理想だと思いますか?

常に冷静でいたい。冷静に状況を見ていて、それぞれが持っている力の100%を出せる状況を作ってあげられるコーチでいたいです。目立ちたい面も少しはありますけど(笑)、派手に目立ってみんなを盛り上げるセンスはないと思います。

ヘッドコーチの戦術のやり合いは楽しみにしています。出だし、どうやってくるんだろうか。それに対してこうやる。だとしたら後半どうなる。それを選手も理解して遂行できることが、リーグのレベルの高さに繋がります。ゲームの読み合い、流れのつかみあいなどは楽しみですね。

──最後に3日の開幕戦についての意気込み、ファンへのメッセージをお願いします。

宇都宮に対してもフィジカルの削りあいで真っ向勝負。それは、はっきりと言えます。また、60分の1であることに変わりはない。シーズンを通して成長していく過程の一つです。ただ、宇都宮にはリーグ初年度のファイナルで負けて、昨年のチャンピオンシップでも負けた相手と、特別な試合でもあります。開幕戦で、世界との差を感じた選手の意地がぶつかり合うような試合をしたい。それをシーズンを通してやり続けていきたいです。

今、ファンの皆さんも、少し今年の川崎はちょっと違うぞと思ってくれていると思います。そして代表選手が帰ってきて、どう融合しているのか。宇都宮相手に、どれだけ気持ちでぶつかっていけるのか。それをまず試合の出だしから楽しみにしてもらいたいです。昨シーズンのリベンジでもあります。ファンの皆さんにも悔しい思いをさせてしまった相手なので、何が何でも勝ちたいと思います。