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チーム事情から見るドラフト戦略~阪神編
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今年の夏、阪神の試合を観戦する機会があった。試合開始前、球場にスターティングメンバーのアナウンスが流れた時だ。すぐうしろに座っていた女性のファンが、思わずこう叫んだ。
「こんだけー」
この日の阪神は、糸原健斗、糸井嘉男、大山悠輔に、福留孝介がいて、さらに売り出し中の近本光司もいる。そこそこのメンバーだったはずだが、それでもその女性ファンの方には物足りなかったのだろう。

U-18のW杯で日本代表の4番として活躍した石川昂弥
かつては真弓明信、掛布雅之、岡田彰布、ランディ・バース……といった球界を代表するスラッガーがスタメンに並んでいた。その頃と比べると、たしかに打線は小粒になり、迫力も欠ける。女性ファンが叫んだ言葉に、妙に納得してしまった。
打てないチームの野球は、あまり面白くない。1点取られると不安になり、2点取られるとあきらめ気分になり、3点取られると絶望的になる。さらに相手の先発がエースだった時は、試合前からお手上げ状態である。そんな精神状態で見る野球は、疲れしか残らない。
522得点は12球団ワーストであり、チーム本塁打92本も12球団中11位(数字は9月25日時点)。ホームランが出にくい甲子園球場を本拠地にしているとはいえ、寂しい数字であることに間違いはない。
“打てないチーム”であることは自覚していて、昨年のドラフトでは1位・近本光司(大阪ガス)、2位・小幡竜平(延岡学園)、3位・木浪聖也(ホンダ)と、上位3人を野手で固めた。当然、今年も腹を括って”野手”だ。しかもターゲットは、タイムリーが打てる長距離砲だ。
森下暢仁(明治大)、奥川恭伸(星稜)、佐々木朗希(大船渡)という大物投手には目もくれず、いきなり石川昂弥(東邦)を指名し、ドラフト会場をドッと沸かせてみよう。
サードには大山がいる? そんなこと構ってはいられない。ポジションを用意したのにも関わらず、いまだ自分のものにできない選手をいつまでも待っているわけにはいかない。もし仮に、ともに一軍で使えるメドがつけば、どちらかを一塁で起用すればいいだけの話である。大山を刺激するという意味でも、石川は今の阪神に必要な存在である。
その石川だが、バッティングは高校生レベルでは群を抜いている。以前は引っ張る方向(レフト方向)にしか強い打球が飛ばなかったが、逆方向にも力強く打てるようになり、タイミングを外されてもしぶとくヒットにできる技まで身につけている。長距離砲がなりふり構わずボールに食らいつけるようになったら怖い。思い切って起用すれば、それなりの数字を残せる選手だと思っている。
2位はパナソニックの大砲・片山勢三で、もうワンプッシュだ。この片山も、主なポジションは一塁と三塁で、もろにポジションは被るが、その場合は誰かを外野に回せばいい。
片山のすばらしいところは、ボールに角度がつくこと。この技術は、教えてもなかなか身につくものではない。つまり、片山はホームランアーチストの資質を持っているのだ。順調に成長してくれれば、山川穂高(西武)のような人気者になることは間違いない。
甲子園球場はライトからレフトに吹く浜風が特徴で、これまで多くの右打者が恩恵を受けてきた。だからこそ、大山、石川、片山の右の和製大砲が揃えば、3人で100発も夢じゃない。
本当ならもうひとりぐらい大砲がほしいところだが、さすがにもう人材はいない。そこで今度は投手だ。3位で地元・大商大のエース・大西広樹の獲得を目指したい。
ピンチに強く、どっしり粘れて、自分の投球というものを確立している。このように欠点のない投手には”働き場”がある。今の阪神に見当たらないタイプだ。
2005年以来、優勝から遠ざかっている阪神。チームを劇的に変えるには、フルモデルチェンジするぐらいの気概が必要ではないだろうか。そのキーワードが”右の長距離砲”だ。はたして、今年はどんなドラフトを展開してくれるのか、楽しみでならない。