ついに本格的なシーズン開幕を迎えた。一段と多くの観客が詰めかけた今大会から、全日本選手権への道が始まる。まずは東京都で活動するスケーターたちが名を連ね、気合いのこもった演技を披露した。早大勢はシニア男女のショートプログラム(SP)に出場。…

 ついに本格的なシーズン開幕を迎えた。一段と多くの観客が詰めかけた今大会から、全日本選手権への道が始まる。まずは東京都で活動するスケーターたちが名を連ね、気合いのこもった演技を披露した。早大勢はシニア男女のショートプログラム(SP)に出場。永井優香(社3=東京・駒場学園)は優雅な演技で1位に輝き、小室笑凜(スポ1=東京・開智日本橋学園)は23位だった。石塚玲雄(スポ2=東京・駒場学園)は2大会連続でパーソナルベストを更新し、4位につけた。


最後のポーズを決める石塚

  石塚玲雄は、SPで『ロシュフォールの恋人たち』を披露。大きな歓声の中、リンクに登場した石塚は、冒頭のダブルアクセルを美しく着氷した。その後も落ち着いた表情でトリプルトーループ-トリプルトーループの連続ジャンプを無事着氷。スピンなど、ジャンプ以外の要素でも会場全体を飲み込んでいく。演技後半のトリプルフリップで転倒するも、終始スピードと流れのある滑らかなスケーティングで観客を圧倒した。演技終了後、納得のいった様子ではなかったが、石塚に送られたたくさんの声援が演技内容を表していた。「ジャンプの確率と共に滑り自体もスピードを出して演技できるようになっている」と語り、得点は前回の試合に引き続きパーソナルベストを更新して、61.65点をマーク。「いつでもミスのない演技をできるという余裕がもっと欲しい」と話すも、焦りを感じさせない演技で、観客の応援に応えた。ジャンプで1つミスがあったものの、毎回完成度が高まるこのプログラム。次戦でのさらに磨きのかかった演技に期待したい。また、FSに向けては「滑り込んできて、体力と共に自信があるので、まずは今日の悔しさを明日に繋げて演技したいと思います」と意気込んだ。

(記事 岡すなを、写真 小出萌々香)


優美に表現する永井

 シニア女子SPでは、早大勢は最終グループでの演技となった。はじめに、柔らかな空気感をまとった永井がリンクに立った。『白夜を行く』の音の美しさを拾って、しっとりと演技を開始する。冒頭のトリプルトーループで着氷に詰まったが、「2回転だったらきれいに降りて加点ももらえると思ったんですけど、まあいつの間にか回ってたかな」とトリプルジャンプをつけてみせた。開放感のある振り付けを伸びやかに見せると、見事なトリプルルッツを流れるように決めた。残るダブルアクセルを着氷し、ステップでは背中のラインを美しく見せながら大きな動きで表現した。終盤を飾る2つのスピンでは、どちらも最高評価を獲得。レイバックのポジションが、綺麗な弧を描いていた。丁寧にフィニッシュポーズをとった永井に、大きな拍手が湧き起こった。SP1位に輝き、会場から感嘆の声が上がる好演技となったが、振り返って出た言葉は「本当にまだまだで粗い部分がたくさんある」。あすのFS、さらには「今までノービスBから一度も途切らせずに全日本に出てきたので、絶対に出場したいと思っています」という全日本選手権に向けての思いが高まる。


軽やかに舞う小室

 小室は『Cirque Du Soleil O』の繊細な音楽とともに、お気に入りだという肩の動きから演技を開始した。前回大会の反省を踏まえ、「絶対にパンク(ジャンプのタイミングが合わず、回転が開いてしまうこと)しない」と挑んだジャンプ。言葉通り、体を締めてパンクを0に抑える。プログラム最後のジャンプ要素として基礎点が1.1倍されるダブルアクセルは、出来栄え点でプラスの評価を獲得した。セカンドジャンプがつかないミスはあったが、トーループ、サルコーといったトリプルジャンプの曲中での形が見えてきている。夏の練習の成果が、良い兆しとして現れていた。つなぎの部分でも雰囲気を切らさない。鳥の羽ばたきを思わせる振り付けや、穏やかでスピード感のある滑りが曲の世界観を演出した。爽やかな表情で楽しんでステップを踏みながら、ジャッジ側に向けてのアピールも決める。最後はスピンで演技を締めくくった。あすのFSに駒を進め、「ちゃんと練習でやってきたジャンプの注意とかを試合でもできるようにするってことと、楽しんで滑るっていうことが目標」と明るく語った。

(記事 犬飼朋花、写真 岡すなを)

 実りある夏を経て、3選手とも前を向いて自身の戦いに臨む。まずはあすのFS、一層成熟した演技で会場を沸かせてくれることに期待したい。

結果

▽シニア男子SP


石塚玲雄 4位 61.65点


▽シニア女子SP


永井優香 1位 57.07点


小室笑凜 23位 36.07点


コメント

石塚玲雄(スポ2=東京・駒場学園)

――今日の試合を振り返ってどうですか

やはり最後のトリプルフリップを転倒してしまったのがとてももったいなかったなと思いました。

――前回の試合から良くなったところは何ですか

もちろんジャンプ自体も、ほとんど余裕を持って跳べるジャンプばかりなので、今日失敗したのも少し悔しいのですが、ジャンプの確率と共に滑り自体もスピードを出して演技できるようになっているので、そこが成長したところかなと思います。

――今後の課題を教えてください

やはり、いつでもミスのない演技をできるという余裕がもっと欲しいので、そこを課題にして頑張りたいと思います。

――フリーに向けて意気込みをお願いします

フリーも滑り込んできて、体力と共に自信があるので、まずは今日の悔しさを明日に繋げて演技したいと思います。

永井優香(社3=東京・駒場学園)※囲み取材より抜粋

――素敵な白夜行でしたが、滑ってどうでしたか

きょうは6分間の練習が今シーズン入って1番よく使えてたかなと思っています。そこで決まっていた3回転-3回転が決まらなかったのが少し悔しいんですけれども、でも練習を含めて収穫のあるSPだったんじゃないかなと思っています。

――夏の試合を経て、今大会までに調整してきたことはありますか

さっき言ったように6分間の練習の使い方があまりよくなかったので、まあ本番に跳べばいいっていう話なんですけど、やっぱりそこの練習から本番にスムーズに持っていけるようにと思って早くジャンプを仕上げる練習をたくさんしてきました。

――練習から意識して臨んだということですか

そうですね、はい。

――本当に引き付けられるプログラムだなと思うのですが、何試合か滑って表現面は現状いかがですか

うーん、自分では大きく動いてるつもりなんですけど、ビデオで見返すと本当にまだまだで粗い部分がたくさんあるので、1つ1つ動きを直していけたらいいなと思います。

――SP1位発進だと思いますが、このスタートはどうですか

自分の中で普段はあまり順位を意識していないんですけど、やっぱり東日本の中では一応頑張ってるよっていうのをアピールしたいなって思ってたので、まずは1位という結果で嬉しいなと思います。

――ここから代々木で開催される全日本選手権へ向けてスタートを切った訳ですが、代々木の全日本というのはどうですか

もちろん東京だから出たいっていうのもありますし、今までノービスBから一度も途切らせずに全日本に出てきたので、絶対に出場したいと思っています。

――あすのFSはどんな風に滑りたいですか

あすもどうなるかはいつも通りわからないんですけど、最後まで諦めないで滑りきれたらいいなと思います。

――演技冒頭、最初の3回転トーループの着氷があまりよくなかったところ
、少し強引に3回転を付けたところに気持ちの強さを感じましたが、どんな気持ちでしたか

普段の練習だったらあれくらいでも上手くいくので、むしろ1回目を失敗したときの方が2回目締めなきゃと思ってきゅっと回れるんですけど、きょうはちょっと迷ってしまったのでなかなか上手くいきませんでした。

――2回目を2回転にするか迷いましたか

そうですね、ちょっとどうしようと思って。2回転だったらきれいに降りて加点ももらえると思ったんですけど、まあいつの間にか回ってたかなという感じです。

――スピンとステップにも磨きがかかっていると感じましたが、いかがですか

スピンはすごい下手くそなので、なるべく貸切の終わりがけの時間に練習したりとかしてて。ステップに関しては本番だといつも足が震えて下手くそになっちゃうんですけど、ちゃんと足首を使ってと思って、いつも通りというか、落ち着いて滑ればできないことやってる訳じゃないなと思って滑りました。

――ことしの夏は意欲的にローカル大会に3試合出場していましたが、このような調整は今までやっていましたか

きょねんも、おととしかな、3試合出たんですけど、げんさんサマーカップ(サマーカップ)に出るというのが自分の中で大きな挑戦というか、まあそこに意欲が表れたのかなと思います。

――サマーカップは西日本の選手を中心にレベルの高い試合となりましたが、夏の間からああいった選手たちと滑るのは刺激になりましたか

やっぱりローカル大会だと思うとそんなに気負う部分はなかったんですけど、きょねんの全日本のときに顔ぶれからちょっと引いちゃってる自分がいるなというのを感じてたので、夏に一回滑ったという経験をできたのは大きいのではないかなと思います。まだ全日本に出場してみないとわからないんですけど、良い経験ができたなと思います。

――メンタル面は強くなったと思いますか

メンタルは相変わらず変わらないと思うんですけど、まあでもきょうはわりと落ち着いていけたかなと思います。ちょっとまだまだなんですけど。

――会場から「うっとりする」「泣ける」という声が聞こえましたが、それについてどう思いますか

この演技で泣けるのかってちょっと不思議なんですけど(笑)、そうやって言ってもらえると本当に励みになりますし、そう思ってもらうように練習をしているので、すごくありがたいなと思います。

小室笑凜(スポ1=東京・開智日本橋学園)

――演技を振り返ってのご感想をお願いします

今までちょっと試合でパンクが続いてしまっていたので、そのパンクがなかった点と、あとステップで楽しんで滑れたのがよかったかなと思います。

――ジャンプの調子はどうでしたか

6分間(練習)でも、全部1回ではまってすごく調子が良かったです。そのままちゃんと跳べればプログラムもノーミスできるのかなと思ったんですけど、やっぱり本番と練習のジャンプの感覚の違いっていうのがまだ自分のものになってないので、そこがちょっとまあ課題かなと思います。

――ステップは具体的にどのような点が良かったですか

今まではただ音をはめることに必死だったんですけど、今日は視線とか表情とかエッジワークとかも意識して踏むことができたのでそこが良かったかなと思います。

――今大会で一番意識した部分はどこですか

とりあえずジャンプは絶対にパンクしないっていうことと、なるべく練習通りやるっていうことを意識して今日の試合は挑みました。

――練習で工夫してきたことはありますか

徹底的に自分を追い込むように、ジャンプのつなぎをやったりとかするようにしていて。やっぱり普通に練習とかでは跳べていてもプログラムで飛べないことが多かったので、貸切とかでそのプログラムの曲をイメージしてやるっていうことを誰よりもやってきて、やっとここまで、まだ全然だめなんですけど、ここまでやっと来られたかなっていう感じです。

――FSに向けて意気込みをお願いします

フリーは、ショートばっかりやっていたので2週間くらい全然練習できていなくてすごい心配なんですけど、自分がフリーでもやるべき課題っていうのはショートと一緒です。ちゃんと練習でやってきたジャンプの注意とかを試合でもできるようにするってことと、楽しんで滑るっていうことが目標なのでそこを頑張りたいなって思います。