連載最終回を飾るのは、チームをけん引する加藤雅樹主将(社4=東京・早実)と檜村篤史副将(スポ4=千葉・木更津総合)。主将と副将、4番と5番を担い、今の早稲田はこの二人なくして語れない。東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)で浮き彫りになっ…

 連載最終回を飾るのは、チームをけん引する加藤雅樹主将(社4=東京・早実)と檜村篤史副将(スポ4=千葉・木更津総合)。主将と副将、4番と5番を担い、今の早稲田はこの二人なくして語れない。東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)で浮き彫りになった課題、つかんだ手応え。そして、ラストシーズンとなる秋季リーグ戦での優勝を渇望する思いーー。お二人の現在の心境に迫る。

※この取材は9月5日に行われたものです。

「リベンジすべきことが残った」(加藤)


今春の東大2回戦で本塁打を放つ加藤

――春季リーグ戦を振り返ってどのような感想をお持ちですか  

加藤  チームとしては明大戦が一つのヤマ場となって、あそこで勝ち切れなかったところが最後まで響いたかなと思います。早慶戦も負けてしまいましたし、秋でリベンジすべきことが残ったなと思います。個人的には、首位打者を取り切れなかった中でもベストナインでいい成績を残せたので、取り組みが成果となって結果に出たという意味で、いいシーズンになったかなと思います。

檜村 勝てる試合を落として、ミスなどもあって勝ち切れなかったというところで3位という結果になったと思います。個人としては、早慶戦でがくっと打率が落ちてしまいました。最後まで詰め切れなかった部分があったので、結果的にベストナインは取れましたが、自分の中ではベストではなかったかなと思います。

――印象に残っている試合や打席はありますか

加藤  明大2回戦の初回のスリーベースが自分的にはすごく4番の仕事をしたなと感じました。その試合で負けてしまったというのが、一番心に残っています。

檜村 打席は、東大初戦の1打席目のライト前に抜けた先制タイムリー、試合は明大戦で逆転ホームラン打たれた場面が印象に残っています。

――東大戦の打席が印象に残っているのはなぜでしょうか

檜村 やはり初戦ということと、簡単に2アウトを取られたのですが、つないで1点取れたというところが大きかったです。

――明大が日本一を取ったことはどうお考えですか

加藤  明大は試合を追うごとにどんどん粘り強く、勝負強くなっていったので、負けるべくして負けたのかなと。点差以上に力の差があったのかなと思います。

檜村 自分たちよりも1点に対する姿勢が強くて、勝ちにこだわる思いも強かったのかなと思います。

――早慶戦はいかがでしたか

加藤  早慶戦は初戦勝って、その勝ち方もすごく良かったので、気持ちが浮ついた部分はあったのかなと思います。相手の迫力を受けてしまったのかなと。

檜村 個人的に、全然打てなくて仕事ができなかったなと思います。

――チームとして春季リーグ戦で出た課題を教えていただけますか

加藤  細かいところだと思います。打線だとヒットは出ても得点にならないので、いかに点を取るかというところが課題です。守備はちょっとしたミスが後々響いてくるという場面がよくあったので、些細なミスを限りなくなくすということを意識したいです。

――春季リーグ戦で感じた手応えはどのようなことですか

加藤  初回の攻撃は良かったです。

檜村 柴田がホームラン打たれた時に、けん制を入れていなくて相手の間で野球をしてしまっていたので、そういうところで間を取っていこうという意識をするようになりました。

――春季リーグ戦終了後、夏に向けてどのような目標を立てていましたか

檜村 バテたという面もあったと思うので、体力を強化してリーグ戦を通して自分のスイングができるようにという目標を立てていました。

加藤  自分も、終盤にかけて調子が落ちていたのでそこの体力と、フォームがだんだん崩れていったのでそこもはまるようにという思いを持って練習していました。

――春を通して内野陣で取り組んでいたことは何ですか

檜村  ボール回しですかね。シートノックのボール回しもそうですし、アウト取った後に速いボール回しをしっかりして隙を見せないというところを意識していました。

――それは今年から取り入れたことですか

檜村 そうですね。そういうところでミスをすると、点を取られてしまうことにつながると思ったのでミスを減らすために始めました。

――外野陣はいかがでしたか

加藤  ラインに投げようと言っていました。高い球は良くないよねということで、とにかく低い球でラインを合わせようとしています。ずっと言われていることなのですが、今年もそれを目標にやっています。

――夏の間、個人としてどのようなことに取り組んでいましたか

加藤  自分は逆方向にあまりいい打球を打てなかったので、慶応の髙橋(佑樹、4年)との対戦も意識して、逆方向にいいヒットが出るように2カ月間ほど練習しています。

檜村 フォームが崩れてしまうことがあるので、自分のスイングをコーチと話し合いながら作り上げています。進塁打を打たなくてはいけない場面もあるので、右方向のバッティングを意識してやっています。

――徳武定祐コーチ(昭36商卒=東京・早実)からのアドバイスではまったなと感じることはありましたか

加藤  いっぱいありますよ。自分が元々持っている感覚に加えて、いろいろ試して「これいいな」と思うものを選べるので、とてもいいなと思います。言われたことをまずやって、その上で本音で意見を言って、どうしようかと話し合うことができるので、やりやすいなと思います。

――檜村選手は選球眼の成長が顕著だったと感じたのですが、いかがですか

檜村 リーグ戦では結構見極めがしっかりできていて、ファウルで粘れるようになったという実感はありました。

――それは技術的に成長したことがあったのか、それともメンタル面で変化があったのかどちらですか

檜村 メンタルですかね。フォームとかが少し後ろめで見られるようになったというのはあります。

――落ち着けるようになったきっかけや理由はありますか

檜村 練習の時からボールの見極めができるようになって、そこで付いた自信が本番でも出るようになったのかなと思います。

――夏の間、どのような練習に取り組んでいましたか

加藤  チームとしては基本的なノックとかバッティングとかをひたすらやっていました。あとは走塁での状況判断を練習する新しいメニューを作っていました。打つ人も守る人もいる中で、走る人がメインという練習ですね。

――提案者はどなただったのですか

檜村 メンバーで話し合いをして、という感じです。

――個人的に取り組まれていた練習はありますか

檜村 自分は、守備の基礎的なところを田中浩康コーチ(平17社卒=香川・尽誠学園)ともう一度確認していました。そこに関しては春とそんなに変わりなく、です。

――オープン戦で試していたことがあれば教えていただきたいです

加藤  自分は外への対応が課題だったので、外をどう打つかを考えながら立つ打席もありました。

檜村 走塁です。自分はあまり盗塁をしないのですが、ワンバウンドの球をキャッチャーがはじいた時などに、すぐ反応して次の塁を狙うというところを試合中も意識していました。

――チームとしてはいかがですか

加藤  追い込まれてからの粘り強さをテーマに掲げてやっているので、何としても塁に出るという姿勢で打席に立とうという話をしています。

――現時点での仕上がり具合はいかがですか

加藤  全然駄目ですね。間も取れていないですし、自分のスイングを打席で出せていないので根本的なところですね。

――オールスターもそうでしたが、外野への大きな打球が増えているように感じます

加藤  外野フライが多いということは、ヒットにできる球をフライにしてしまっているということもあると思うので、そういったズレがあるというか、ヒットにすべき球を打ち上げてしまっていると自分は思います。

――檜村選手は感触いかがですか

檜村 自分もあまり良くなくて、打席の中で迷いがあって振り切れないことがあるので、メンタル面をリーグ戦までに強化して臨みたいと思います。

イチオシの『ワセメシ』は…


取材に応じる檜村(左)と加藤

――高麗大との親善試合のために韓国に遠征されていましたが、そこでの思い出を教えてください

加藤 僕と檜村が同じ部屋で、高麗大の方にご飯に連れて行ってもらったりしました。

――買ったものはありますか

檜村 韓国のりと顔パックですね。

――檜村選手は美容家なのですね

檜村 いや、おみやげです(笑)。韓国は美容系が多いので。

加藤 僕も同じですね。韓国のりと顔パックです。

――会話は何語でされたのですか

檜村 韓国語です。

加藤 嘘つけ(笑)。通訳いたじゃん(笑)。

檜村 (笑)。

加藤 日本語がしゃべれる人が高麗大に来ていて、その子がいろいろ案内してくれたりして、一緒に行動していた感じです。

――辛いものは得意ですか

加藤 (檜村は)いけると思います。僕はけっこうきつかったですね(笑)。(韓国の料理は)本当に辛くて、キムチが特に……。ホテルでの食事は初日がプルコギだったんですけど、まずそれが辛くて。キムチも3種類くらいあったんですけどそれも全部辛くて、ちょっとレベルが違いましたね。

――食事にはみなさんが苦戦されたのですね

加藤 僕はもう、本当にやばかったです。

檜村 寿司とかも出てなかった?

加藤 寿司とかピザもバイキングにはあったんですけど、まず最初に出していただいたものを食べて、それから他のメニューを食べるじゃないですか。その最初のものが辛かったです。

――食べ物といえば、お二人は早大に通学されて4年目ですが、おすすめの『ワセメシ』はありますか

檜村 僕は春のリーグ戦が終わった時に学会(武蔵野アブラ学会。早稲田キャンパスの近隣にある油そば店)に行きましたね。オフ期間、授業の前に行って、普通盛りを食べました。

――檜村選手のおすすめのワセメシは武蔵野アブラ学会ということですね

檜村 おすすめ……他になにがあったっけ?

加藤 オトボケ(キッチンオトボケ。早稲田キャンパス近隣にある定食屋。)良いよね。よく行きます。ジャンジャン焼きがおいしい。

檜村 オトボケか。ん~、自分はじゃあ、学会でお願いします。

――加藤選手はいかがですか

加藤 自分は以前、パソコンでホームページを作る授業を取っていて、その時に高田馬場から早稲田までのラーメン屋を取材したんですよ。3軒くらい行ったんですけど、一番有名な三歩一(高田馬場駅近隣にあるラーメン屋)が一番おいしいなと思いましたね。

――たしかに早大生の間で有名ですね

加藤 そうですね。あと柳屋銀次郎って知ってますか? それも行ったラーメン屋さんなんですけど、そこの辛つけ麺がすごかったですね。辛かったです。

檜村 韓国のキムチとどっちが辛い?

加藤 それは……韓国(笑)。

――ラーメンと言えば、野球部の中で『ラーメン二郎』がはやっていたとも伺いました

加藤 二郎はもう、信者がいっぱいいるので(笑)。ここにも信者が(檜村を指さして)。

檜村 自分は今年は抑え気味で……(笑)。食べ過ぎると良くないので。

「何とか優勝したい」(檜村)


一塁手に向かってジャンピングスローをする檜村

――主将、副将としてお互いに助かっているところがあれば教えてください

加藤 檜村は寡黙で一生懸命にやる男なので、口数が多いわけではないですけれど、言ったことで空気が締まるというか。だらしない人がいたりすると、パッと言葉を掛けてくれるので、そこがありがたいですね。

檜村 (加藤は)まとめる力があって仲間思いなので、メンバーかメンバー外かにかかわらず、「頑張っていこう」といつも言ってくれるキャプテンです。

――逆にご自身の主将、副将としての反省点などがあれば教えてください

加藤 自分は今、オープン戦で打てないことが多くて、自分の世界に入ってしまっている部分が多少あります。それがみんなに申し訳ないですし、そういう姿勢を見せていたらチームも乗っていけないと思うので、そこを残りのオープン戦で直したいです。「自分のことはどうでもいい」というくらい、そういう(落ち込んでいる)姿勢だけは見せないようにしたいです。

檜村 気付いたところをもっと(口に出して)言っていかないといけない、と思います。あまり言えていない部分もあるので。そういったところで後悔がないようにしていきたいです。

――下級生とのコミュニケーションのとり方で意識している点はありますか

加藤 自分は下級生に興味を持って、出身校や『どういう人間なのか』ということを理解するように努めています。そういうことができないと他人に思われてしまいますし、キャプテンとしてチームをまとめるなら『知る』ことが大事だと思うので、それを心掛けています。

檜村 自分は今までそれほど下級生と話すタイプではなかったので、何を話したらいいか最初は分からなかったです。でも4年生になってからは、少しずつですけれど話すようになって。一緒に練習したりアドバイスしたり、少しでもコミュニケーションをとるようにしています。

――加藤選手にとっての『理想のリーダー像』を教えてください

加藤 自分だったら、嫌いな人には付いていきたいとは思えないです。好きな人に付いていきたいと思うので、親しくなることを心掛けています。嫌いな人に付いていこうと思う人はいないので、コミュニケーションを大事にしたいなと考えています。

――秋にどうチームを引っ張っていきたい、という考えがあれば教えていただけますか

加藤 自分たちはラストシーズンですしまだ優勝していないので、全てを出し切りたいです。みんなで野球ができるのは最後なので、一瞬一瞬をかみしめて全力でやること。それがチームの勝利につながると思いますし、自分としてもしっかり結果を出して、チームを引っ張れるようにしたいです。

檜村 春は劣勢の場面で声が出なかったりしたので、そういうことがないように。全力でプレーして、引っ張っていけたらと思います。

――加藤選手にお聞きします。春季リーグ戦の際に「凡退した時に下を向いてしまう選手が多い」と言われていましたが、現在はいかがですか

加藤 それ(打ち取られたときに落ち込んでしまうこと)はもう、みんなにあることだと思っています。自分も今、調子が上がらなくて下を向きたくなることもありますし。でもそれは心掛け次第で変わると思いますし、自分がこういう状態(調子が上がらない)だからこそ、自分が変われば「あ、変わったな」と気付いてもらえると思うので。そういう姿勢を示して、言葉でもどんどん言っていきたいなと思います。

――メンタル面のコントロールはやはり難しい問題なのですね

加藤 ある意味で『そういうもの』というか。凡退したら誰だって悔しいし、誰もが下を向いてしまうんですけれど、自分がとにかくそういう姿勢を見せないことで、なんとかチームをプラスの方向に持っていけるように。自分から取り組みたいと思っています。

――以前から繰り返し『準備』の重要性を口にされていますが、その進捗状況はいかがですか

加藤 全然思い通りにいっていない部分が多いので。そことしっかり向き合って、どこが駄目でどうしたらいいのかをしっかり考え抜いて、すっきりした状態で(秋季リーグ戦に)入っていけたらと思います。

――同じく以前から口にされている、チーム内の『気』の徹底に関してはいかがですか

加藤 技術どうこうという部分はあまり変わらないと思うので。「こういう場面はこういう気持ちで打席に入る」とか「こういうときはこういう気持ちで守ろう」という話は、試合後のミーティングでも出ていますし、段々徹底できていると思います。

――加藤選手は春に好成績を残す『春男』の印象も強いと思いますが、秋季リーグ戦に向けての意気込みはいかがですか

加藤 本当にその通りだと思います。春が好きということもあるのですが、でも季節は関係ないというか。秋だから打てないというわけではなくて、単に打撃が崩れているから打てないというのが事実だと思います。なのでそこは自分のバッティングを見つめ直してやっていけば、春男という(秋に成績が下がる)少し不名誉な称号も取れるのではないかと思います。

――早実高時代から長年親しんだエンジのユニフォームにもいよいよ別れを告げることになりますが

加藤 早実とは少し違いますけれど、早稲田の名前が入ったユニホームを7年間着させていただきました。それを着るのがアイデンティティというか、自分の中で当たり前になっているので、それを脱ぐことがちょっと想像できないです。でも本当に寂しい気持ちですし、何とか最後にもう一花咲かせたいと思います。

――檜村選手にお聞きします。最後のシーズンに懸ける特別な思いなどはありますか

檜村 大学生活最後のリーグ戦ということなので、悔いのないように全力で取り組んで、何とか優勝したいと思います。

――チームの中で果たしたい役割はありますか

檜村 内野をまとめるというか、野手の中心となって、守備面で声掛けなどをしていきたいです。

――具体的な目標はありますか

檜村 どうしても点を取られたときに声が出なくなったり雰囲気が暗くなってしまうので、上を向かせるような、「まだまだいけるぞ」みたいなポジティブな声掛けができればと思います。

――秋季リーグ戦において、チームが勝つためにいま何が必要だと考えていらっしゃいますか

加藤 もう、執念とかになってくると思います。今は点も取れていないですし、なかなか勝てない中ですが、いざ公式戦になったら4年生の意地や最後に懸ける思いも発揮されると思うので。執念でいかに相手を上回れるかが大切になってくると思います。

檜村 同じく、気持ちの面ですね。

――個人として、ラストシーズンに懸ける思いはありますか

檜村 最後なので、キャリアハイを目指したいです。個人の目標はプロ野球選手になることなので、そのための結果を残すということをやっていきます。

加藤 個人的には自分が残してきたキャリアを各項目で越えられるように。『過去の自分を越える』というのが目標です。それと、打点が一番チームの勝利のためになると思うので、とにかく打点にこだわっていきたいです。

――秋季リーグ戦に向けた意気込みをお願いします

檜村 大学最後のシーズンですし、優勝もしていないです。自分の結果を残せば、おのずとチームの結果も付いてくると思うので、しっかり勝って優勝したいと思います。

加藤 優勝に向けて、本当に執念を燃やしていきます。自分としても、背中でも言葉でもみんなを引っ張っていきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 望月優樹、村上萌々子)


ラストシーズンに懸ける執念がひしと伝わってきました!

◆加藤雅樹(かとう・まさき)(写真左)
1997(平9)年5月19日生まれ。185センチ、87キロ。東京・早実高出身。社会科学部4年。外野手。右投左打。春季リーグ戦後、実家に一度帰られたという加藤主将。おふくろの味といえば、との質問には、サラダと答えてくださいました。「めちゃくちゃ多いブロッコリーと、かいわれ大根、サーモン。そういうサラダを見ると、帰って来たなという気分になります」とのこと。いつも見守る家族のためにも、ラストシーズンに執念を燃やします!

◆檜村篤史(ひむら・あつし)
1997(平9)年11月6日生まれ。182センチ、85キロ。千葉・木更津総合高出身。スポーツ科学部4年。内野手。右投右打。カメラの前で笑顔を作るのは苦手だという檜村選手。色紙を持った写真では、頬をあげる準備をしてから、素敵な笑顔で写ってくださいました。色紙に書いた言葉は、事前に考えていたという『決心』。ついに迎えたラストシーズン、悲願の優勝への強い『決心』で攻守にわたってチームを鼓舞していくでしょう!