「全米オープン」(アメリカ・ニューヨーク/8月26日~男子9月8日・女子7日/ハードコート)大会12日目、男子シングルス準決勝で、第5シードのダニール・メドベージェフ(ロシア)が世界78位のグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)と対戦。メドベージェフが7-6(5)、6-4、6-3のストレートで勝利し、自身初となるグランドスラムの決勝進出を果たした。

メドベージェフは、今季の北米でのトーナメントシーズンに入り、「ATP500 ワシントンD.C.」と「ATP1000 モントリオール」の2大会で準優勝、続く「ATP1000 シンシナティ」で優勝と、快進撃を続けている。そんな彼を支える1人の女性が、スタジアムのボックス席で彼の試合を観戦した。通常は家族や友人のための席に座ったフランシスカ・ドウザ氏、実はメドベージェフのメンタル面をサポートするスポーツカウンセラーだ。

米紙New York Postによると、ドウザ氏は自身の仕事内容について、「秘密です」とコメントしているとのことだが、2人をよく知る関係者の話では、彼女はメドベージェフの精神安定のために帯同しており、時には、ジョン・マッケンロー(アメリカ)やロジャー・フェデラー(スイス)のように、怒りをうまく利用していいプレーを引き出せるよう、メドベージェフのチームの一員として働いているのだという。

「全米オープン」では、“Good Vibes—いい雰囲気”と書かれたシャツを着たドウザ氏が、メドベージェフの試合を観戦しながら、綿密にノートを付けているところを頻繁に目撃されている。しかし、フェリシアーノ・ロペス(スペイン)と対戦した3回戦は、“いい雰囲気”とはいえないムードだった。

メドベージェフは、ボールパーソンからタオルを無理やり奪い取り、さらにそれをコートに投げつけたり、審判の方向にラケットを放り投げ、さらには頭の横で中指を立てる仕草を見せるなど、一連のスポーツマンらしからぬ行為で9千ドル(約96万円)の罰金が科せられており、New York Postには「新しい悪役」と報じられた。

コート上での振る舞いは称賛に値しないものの、彼の大躍進は目を見張るものがある。選手として大きく一皮むけたように見えるメドベージェフ、ドウザ氏も「彼は人間としても、選手としても成長する必要がありました。現在の成績を見れば、彼の成長は明らかです」と彼の進化には前向きな見方をしている。

ドウザ氏は通常パリに在住しており、メドベージェフとはフランス語で会話する。彼女は週に数回のセッションを通してメドベージェフのメンタル面を支えている。「彼女にはとても支えられているんだ」とメドベージェフが語るドウザ氏のアプローチは、漢方と瞑想、そして少林拳の戦士たちから着想を得たという。

「少林拳の使い手は、周りを見回すことすらしません。彼らは周囲で起きていることを、感じ取ることができるのです」と語るドウザ氏。彼女はメドベージェフに、少林拳の達人たちと同じ、精神の統一と鋭い感覚を身に着けてほしいと願う。

メドベージェフは今大会以前にも、2017年の「ウィンブルドン」2回戦での敗退後、自分の財布からコインを取り出し、主審席へそのコインを投げるという問題行為に及び話題になっている。メドベージェフは、主審が賄賂によって誤審を繰り返したことを、その行為で暗示したとされているが、本人はそれを否定している。

「カウンセラーとその問題については話し合った。あれ以降もうコインは投げていないでしょう?」とメドベージェフは後に語っている。

メドベージェフの成功のカギは、彼自身の「怒り」にあると言う専門家は多い。「怒り」を利用することで、プレーの質を上げることが彼には可能であり、スポーツカウンセラーの役割は、その方法を導き出すことにあるようだ。

メドベージェフは、決勝戦でラファエル・ナダル(スペイン)と対戦する。彼らは8月の「ATP1000 モントリオール」決勝で対戦しており、その際はメドベージェフがナダルに完敗している。しかしメドベージェフは、準決勝後の記者会見で「どのようなプレーをしてくるか、そしてそれについて何を準備するべきかは分かっている」とナダルとの再戦について強気なコメントをしており、自身初のグランドスラム優勝を前に準備は万全のようだ。

(テニスデイリー編集部)

※為替レート:2019年9月8日時点

※写真は2019年「全米オープン」でのメドベージェフ

(Photo by Tim Clayton/Corbis via Getty Images)