F1第13戦・ベルギーGPのホンダは、最高位がアレクサンダー・アルボン(レッドブル)の5位。待望のスペック4を投入したことを考えれば、期待外れな結果だったと言わざるを得ない。スペック3のまま戦ったマックス・フェルスタッペン(レッドブル)とピエール・ガスリー(トロロッソ)も、予選・決勝ともに思うような結果を残すことはできなかった。



レッドブル移籍直後のレースで5位入賞を果たしたアルボン

「今日の僕らにとっては、最高のシナリオでも5位、最悪のシナリオでも5位だった」

 そう語るフェルスタッペンは、パワーユニットの出力を抑えて走ることを余儀なくされたことが結果に影響した、と指摘した。

「今週末はずっと通常のパワーモードを使えなくて、エアロ(空気抵抗)とパワーのバランスを見つけ出すのが難しかった。だから予選でも、かなりコンサバティブに走らざるを得なかったし、通常のモードに比べてもパワーの低下を余儀なくされていたから、それだけでコンマ数秒は失っていた。

 ポジティブだったのは、それでもメルセデスAMGとのギャップが小さかったということ。ただ、今週末のフェラーリは完全に別の次元だからね」

 ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターによれば、順位が変わるほどのパワー抑制ではなかったと言う。ただ、フェラーリとメルセデスAMGに敵わないのが明らかだったからこそ、最初から5位狙いでパワーをセーブし、パワーユニットにかかる負荷を抑えた。

「予選は(パワーユニットの使い方が)ちょっとコンサバだったところもありますが、それでポジションを失うレベルだったかというと、そういうレベルの(パワーの抑え方)ではありませんでした」

 そして予選・決勝では2台ともにスペック2に載せ換えて走った。これは、今シーズン残り8戦のことを考えてだ。

「どちらのドライバーも、決勝ではスペック4は使わなかった。2台ともスペック2を使ったんだ。アルボンも金曜日にスペック4を使い、ペナルティを消化しただけだ」(クリスチャン・ホーナー代表)

 レッドブルも、トロロッソも、すでに年間3基の規定数を超えてしまっている。そのため、パワーユニットを投入するたびに、最後尾グリッドスタートのペナルティを科されてしまう状況下にある。

 そこでホンダは、ベルギーGPとイタリアGPで投入する新品スペック4と、これまでに使ってきた中古のスペック2やスペック3とをやりくりして、残りのレースを走り切るつもりだ。そのためにパワーを抑えて、ここ一番という場面以外ではできるだけ負荷をかけないように使っていくという。それは、不用意なペナルティを受けず、真剣にチャンピオンシップのランキング争いに向き合っている証でもある。

 それゆえに、真っ向勝負で2強チームに対して勝ち目がないパワーサーキットでは、最初から割り切って5位・6位という「チーム3番手」のポジションを確保することを目標とする。必要以上にエンジンを使わないという戦い方もアリ、という考え方だ。

 ただし、17番グリッドスタートのアルボンが、想像以上にすばらしい走りを見せた。加入したばかりのレッドブルで、チームとマシンの習熟を第一に週末を過ごしながらも、決勝では次々とオーバーテイク。最後は他車の脱落にも助けられて、中団グループの全車を抜いて5位まで浮上することに成功した。

 ターン8でルノーのダニエル・リカルドにインをブロックされると、一旦は引いて立ち上がりでクロスラインを仕掛け、次のターン9でアウトから抜き去った場面。そして、最終ラップのケメルストレートで幅寄せされて芝生にタイヤを落としながらも、レーシングポイントのセルジオ・ペレスを抜き去った場面……。

 まだマシンに「完全に慣れきっていない」と言うアルボンだが、こういったバトルの場面でアグレッシブにオーバーテイクを成功させていった。なによりすばらしかったのは、その最中も冷静に状況を見極めてバトルを制していたことだ。

 時速300kmオーバーで芝生にはみ出て、あわやという場面に見えたペレスとのバトルも、アルボンは冷静に駆け引きをして、あのチャンスを生み出していた。



ベルギーGPでスペック4を投入したレッドブル・ホンダだったが......

「僕のほうが大きなペースアドバンテージがあったけど、ストレートはレーシングポイントがすごく速いから抜けないと思って、バスストップシケインでチャンスが来るのを待っていた。

 バスストップでサイドバイサイドになったけど、あそこにはDRS(※)の検知ポイントがあったから、少し引いて彼に先にDRSラインを越えさせたんだ。そしてDRSをゲットして、次のケメルストレートで追い抜きを仕掛けたら、芝生まで押し出されながらのバトルになった。すごく楽しんだよ」

※DRS=Drag Reduction Systemの略。追い抜きをしやすくなるドラッグ削減システム/ダウンフォース抑制システム。

 使い古したミディアムタイヤのペレスに対して、フレッシュなソフトタイヤのアルボン。タイヤの差も大きく、低速コーナーからの立ち上がりで間合いを詰め、効果の大きいDRSを使って確実に抜いた。

 パワーだけでなく、あらゆる要素が組み合わさったうえでのオーバーテイクの連続だったと、田辺テクニカルディレクターは説明した。

「パワーユニットも寄与していますけど、アルボンもクビアトもプライム(硬いほうのタイヤ)でスタートして、それを引っ張って最後にオプションで(タイヤのアドバンテージを生かして)抜いていった面もあります。ここはトウ(スリップストリーム)が効きますから、最終シケインでしっかりと前に着いていけば、ターン1の立ち上がりで離れたように見えても、(ケメルストレートでは)あっと言う間にトウで引っ張られる」

 アルボン自身は、これまで親しんできたトロロッソのSTR14と大幅に異なるレッドブルのマシンに対し、「まずは慣れることが第一」で、まだそれはできていないと言う。マシンに絶対の信頼が置けて、自分の手足のように自然に扱えるようにならなければ、最後のコンマ数秒を削っていくことはできない。

「正直言って、まだ気持ちよく走れてはいない。『気持ちよくない』というより、これまで乗っていたトロロッソのクルマとは『違う』と言ったほうが正しいね。

 トロロッソのクルマで掴んだドライビングスタイルをリセットし、レッドブルのマシンが持つ『速く走らせるためのトリック(セッティングツール)』を理解する必要がある。それには時間がかかるよ。クルマをうまくドライブするだけなら、F1ドライバーなら誰でも相当なレベルにある。そこからさらにコンマ数秒を稼ぐためには、ドライビングだけでなく、クルマのセットアップ面について深く理解する必要があるんだ」

 だからこそ、5位という結果を手にしてもなお、フィニッシュ直後に我々の前に姿を現わしたアルボンの表情は満面の笑みではなかった。

 それでも、あれだけの走りができたことは間違いなく大きな収穫である。今後に向けて期待が持てる内容だった。

 そして、ホンダのスペック4も、最初から優勝争いは難しいと割り切るパワーサーキット以外では、シーズン前半戦のように再び優勝争いに絡んでいけるだけの力を有していそうだ。とはいえ、パワーユニットでも車体でもまだトップではないからこそ、今後に向けた改善は急務となる。田辺テクニカルディレクターはこう語る。

「『去年はあそこが得意だった、ここが不得意だった』と言っても、今年はそれが違うケースも出てきていますし、得意・不得意をはっきり出しているチームもあります。また、その不得意を不得意のまま後半戦も引きずってくるとも限りません。

 我々もできるだけのことはやりますし、チーム側もいろいろと手を考えています。それが簡単なことではないということもチーム全員が承知していますから、パワーサーキット2連戦のあとに向けて、そこをどう克服していくかが我々に求められていることだと思います」

 まずはパワーサーキット2連戦でスペック4を投入し、その後のシンガポールや鈴鹿へ――。そこで本領を発揮するための道のりを、今、歩み始めたばかりだ。