準々決勝で佐藤太一(社4=大分・楊志館)は仕切り線を前に萩原光(拓大)と向かい合った。萩原は今大会直前の東日本学生個人体重別選手権(東日本体重別)で佐藤をはじめ、鳥居邦隆(社1=愛知・愛工大名電)を撃破している実力者。それでも佐藤は「…

  準々決勝で佐藤太一(社4=大分・楊志館)は仕切り線を前に萩原光(拓大)と向かい合った。萩原は今大会直前の東日本学生個人体重別選手権(東日本体重別)で佐藤をはじめ、鳥居邦隆(社1=愛知・愛工大名電)を撃破している実力者。それでも佐藤は「前に出る」といういつもの意識通り、終始攻め立てて寄り切った。115キロ未満級で全国3位を決めた。その瞬間、佐藤は大きくうなずいた。そこには因縁の相手に勝ったうれしさと、会場の歓声への感謝の気持ちがあった。


初戦で渾身(こんしん)の押しを見せる佐藤

 初戦から佐藤のペースでの相撲展開だった。鋭く踏み込み、取組の主導権を掌握。その後も「手を休めないでいく」という意識通り、最後まで下からの突きに徹した。そして二度のいなしにも崩れず付いていき、勢い殺さず相手を押し出した。続いては勝てば全国3位となる準々決勝。立ち合い低く当たると、すぐに右を差し、四つ相撲に。相手に深い左上手を取られても、前への動きを止めなかった。動き勝ちした佐藤は相手の左にピタリとつき、横からの攻めで、寄り切った。自分の形で勝ちをつなげ、勢いに乗る佐藤は準決勝に臨んだ。準決勝前、室伏渉監督(平7人卒=東京・明大中野)は佐藤に「落ち着いて」と声を掛けたという。決勝進出を懸ける相手は強烈な寄りを武器に勝ち進んできた石崎涼馬(日体大)。休む間もなく土俵に立つと、審判から両者に汗を拭くように指示があり、いったんそれぞれが土俵を下りた。主将の橋本侑京(スポ4=東京・足立新田)がタオルをもって駆け付け、佐藤の汗を拭った。そうして橋本に送り出された佐藤は部員からの声援も受けて再び土俵に上がった。立ち合いでは両者が鋭く踏み込んだものの、石崎の低さが勝り、佐藤は後退せざるを得なかった。下がりながらも土俵際で回り込んで、左からの肩透かしを試みたが、すでに佐藤の左足が土俵を割っていた。この瞬間、佐藤の3位が決まった。


石岡(日大)に寄り切られる長谷川

 今大会は好成績を残した佐藤をはじめ長谷川聖記(スポ3=愛知・愛工大名電)、鳥居、さらには相撲同好会所属の勝山烈(文構2=兵庫・葺合)それぞれの善戦が目立った。長谷川は膝を曲げて低い姿勢から、相手の突きを下からあてがい、チャンスをつくり出した。それでも、東日本王者として全国優勝が期待されるなか、初戦敗退という結果に終わった。鳥居は激しい差し手争いが始まると投げで相手を崩し、差し手争いを有利に進める瞬間があった。勝山においては、立ち合いすぐに相手の右からのいなしに崩れたが、それは勝山の鋭い立ち合いの踏み込みがあってこそのものだった。これらについて室伏監督は「8月上旬の合宿での成果が出たのではないか」と話した。

 出場した4人それぞれが健闘を見せ、佐藤に至っては全国3位という好成績を残した。今大会に出場が果たせなかった部員も直前の東日本体重別では、各部員の良さや他大学には負けない敢闘精神を光らせた。それぞれの良さが一部しか成績に反映されなかったことは残念なことであるが、部員はすでに来月の東日本学生相撲リーグ戦(リーグ戦)を見据えている。リーグ戦では今大会の個人戦とは異なり、団体で戦うことになる。長谷川が指摘するように「人数が少ない」という部の特性があるため、「一人一人が勝たないと残れない」という意識の下に稽古することだろう。早大相撲部の部員が持つ良さや敢闘精神が団体に伝染すれば、さらなる部の活躍が大いに期待できる。リーグ1部残留に向け早大相撲部はすでに動き始めている。


賞状とトロフィーを手に納得の表情を見せる佐藤

(記事 大貫潤太、写真 樋本岳、長尾佳音、望月清香)

結果

▽75㎏未満級

勝山烈(文構2=兵庫・葺合)

一回戦 ●対中野参段(桃山学院大)上手投げ

▽115㎏未満級

佐藤太一弐段(社4=大分・楊志館)

一回戦 ◯対吉田弐段(九州情報大)押し出し

二回戦 ◯対萩原参段(拓大)寄り倒し

三回戦 ●対石崎初段(日体大)押し出し

鳥居邦隆弐段(社1=愛知・愛工大名電)

一回戦 ●対大木弐段(日体大)寄り切り

▽135㎏未満級

長谷川聖記参段(スポ3=愛知・愛工大名電)

一回戦 ●対石岡参段(日大)寄り切り

コメント

室伏渉監督(平7人卒=東京・明大中野)

――今大会全体を振り返っていかがですか

4年の佐藤が最後何とか入賞することができたので、それはほんとにうれしかったなと思います。だだ、長谷川が1回戦で負けたっていうのは、ちょっと残念だったなと思います。

――8月の上旬には合宿をされたと思うのですが、この大会にむけて特に強化されてきた点はありますか

この大会というより、秋のすべての大会において、どうやって力を出せるか。今までの自分たちの良かった部分だとかを考えて、おのおのの課題を見つけようということで、やったので、それなりに成果は出たんじゃないかなと思います。

――佐藤選手は、個人として初めての全国大会だったと思いますが、3位入賞を果たされました。準決勝の前には、直接声掛けがあったと思いますが、どのような言葉を掛けられましたか

あの時は、「ほんとに落ち着いて」というか、「自分の気持ちを負けないよう」にと。どうしてもやっぱり、だんだん試合を上がっていくと、疲れも出てきますし、弱気になると負けてしまうので。ただ、相手も勢いある選手だったので、(負けたには)しょうがないかなとも思います。

――長谷川選手は、東日本王者として迎えられたと思いますが、立ち合いが合わないこともありました。特別な緊張感がありましたか

というより、相手も実は2回やって2回とも勝っている相手なので相当研究してきたんじゃないかなというふうに思いました。なので、それはしょうがないので、相手も一番一番研究するっていうのは、それだけ研究されるような選手になったんじゃないかなというふうに、逆にプラスに捉えてやってもらえればなと思います。

――これから東日本学生リーグ戦や、全国学生選手権がありますが、それに向けての意気込みをお願いします

やはり(東日本学生)リーグ戦は1部に何としてでも残りたい。9人制ですけど、助っ人借りながら何とか残りたいという思いです。それとインカレ(全国学生選手権)では、何とかベスト8、優勝トーナメント、Aクラス。まずは予選を通っていけるように、そこを目指したいと思います。

佐藤太一(社4=大分・楊志館)

――全国3位という結果を受けた今の率直な気持ちをお聞かせください

全国に個人で出場するのは初めてなので、そこは素直にうれしいという気持ちはあります。ですが、負けた試合でも、当たり自体は良かったので、もう1回、もう2回勝てたらなと思います。

――今大会に臨むにあたり、意識していたことがあれば教えてください

この大会に照準を合わせてはなかったので、特に意識したことはないです。いつも通り、前に出ることや自分の形を貫くことは一貫してやっていました。

――初戦では、何度もいなされながらも、自分のペースの突き押しができているように見えました。今のお話にあったような、自分の形に持っていけたのではないでしょうか

そうですね。ここ1年ぐらいの相撲では自分から引いて負けることが多かったので、最近は自分から攻めて、さらに攻めて、最後に引いて勝ちを決めたいと思っています。そのため、とにかく手を休めないでいくことを意識していました。

――準々決勝では勝って3位を決めた直後に大きくうなずかれていました。この時、どのようなことを思われたのですか

東日本の大会の体重別で自分は負けていて、1年生の鳥居も負けていて、二人とも負けている相手だったので、その相手に勝てたことはうれしかったです。あと、予想以上に会場に来ていた方々が喜んでくれて歓声があったので、それに対して「ありがとうございます」という気持ちもありましたね。

――次の東日本学生リーグ戦に向けて、意気込みなどがあれば教えてください

1部にはなるんですが、たくさんの相手と戦えるので、練習試合のような感覚を持ちながら臨みたいと思います。そこでは、どれほど通用するのか確かめたいと思います。また、インカレ(全国学生選手権)に向けてどのような相手がいるのか見ながらやっていければいいかなと思います。

長谷川聖記(スポ3=愛知・愛工大名電)

――きょうの取組を振り返っていかがですか

結果は満足していないですが、相手もそれなりに強い相手なので。自分なりに考えて取った相撲がああいう相撲だったので、後悔っていうのは特にはないです。

――立ち合いはいかがでしたか

自分なりに考えたんですが、相手もそれが頭に入っていたので、決まりませんでした。やはり攻めた方が強いんじゃないかなと改めて実感しました。

――東日本王者として今大会に臨まれましたが、プレッシャーなどはありましたか

特にそういうのはなくて、たまたま東日本(体重別)で優勝しただけだったので、今回も挑戦者という気持ちで戦ったのですが、やはり負けてしまったので、まだまだかなと思います。

――8月の合宿明け初めての大会でしたが、合宿ではどのような稽古をしましたか

合宿では、体の使い方を意識したトレーニングをしました。

――次の大会に向けて意気込みをお願いします

次は(東日本学生)リーグ戦だと思うのですが、人数が少ないですし、一人一人が勝たないと(1部に)残れないと思うので、そういうところを意識してこれからみんなで稽古していきたいと思います。