文=神高尚 写真=Getty Images

「最後まで残った12人」というアメリカ代表

間もなく開幕するバスケワールドカップ、日本と同じ予選グループに入ったアメリカは、多くの選手を集めたキャンプを実施して開幕に備えてきたものの、ケガやシーズンに備えるための辞退者が続出し、選ばれた選手ではなく「最後まで残った12人」で臨むことになりました。テストマッチではオーストラリアに敗れており、苦戦が予想されます。

各チームのエースクラスが辞退する中で、4人を代表チームに送り出す形となったのがセルティックス。新加入のケンバ・ウォーカーにマーカス・スマート、ジェイレン・ブラウンにジェイソン・テイタムとオールラウンドな若手が顔を並べます。今回のアメリカ代表はオールラウンドに活躍する若手と仕事人的な働きをするベテランという構成になっており、ビッグネームが参加しないからこそニュースターの躍進が期待されます。

最大の注目株はドノバン・ミッチェル。ジャズの絶対的エースはヘッドコーチのグレッグ・ポポビッチにキャンプ序盤から賛辞を贈られ、将来に渡ってアメリカの中心選手となることを期待されています。ミッチェルとセルティックスの若手たちはアメリカらしい高い身体能力と強力な個人技で魅せてくれるはずです。

また若手以外のエース格としてアウトサイドから切り崩すタイプのクリス・ミドルトンとハリソン・バーンズがいて、ディフェンス3秒のない国際ルールでインサイドを固められた時でも対応できるロスター構成です。

不安材料はチームのケミストリー

周囲を固めるのは3ポイントシュートコンテストのチャンピオンになったジョー・ハリスやブロック王のマイルズ・ターナー。そして3ポイントシュートが得意な213cmのブルック・ロペスと、逆にシュート力はないけどインサイドのハードワーク専門のマイルズ・プラムリーと、特徴的な選手を組み合わせてケミストリーの構築を図っています。

日本は八村塁が加わったことで「絶対的な中心選手」がはっきりしましたが、アメリカはここが欠けているのが難点。特徴的な選手が多く混ざっているだけに、上手く組み合わせていかないとチームは途端に機能性を失います。

敗れたオーストラリア戦では、94点を奪いながらアシストはわずかに11のみ。チームとして噛み合っているとは言い難い部分がありました。足りないケミストリーを高い身体能力を生かしたオフェンスリバウンドで補っているのが現状で、オフェンスの連携という課題が解決しないままテストマッチが終わってしまった印象です。

ポポビッチが好むのは人とボールが動くオフェンスで、本来ならば完成には時間がかかるもの。妥協しない性格の名将はスパーズでもシーズン序盤に負けが先行しながら、徐々に戦術を浸透させ後半に盛り返す1年を過ごしてきました。調整期間が短いだけでなく、落とせない試合が続く代表チームという環境の中で、ポポビッチ自身もどのような対応を見せてくるのか。戦力的な問題よりもチームとしての完成度が課題になっています。

ポポビッチによる新たなアメリカ代表の第一歩

スーパースターが揃っていないとはいえ豪華メンバーに変わりはない中で、ただ1人異質なのがポポビッチの下でプレーしているデリック・ホワイト。ケガもあった昨シーズンはスパーズでもスターターとは言えない状況でしたが、12人目の代表に残りました。

ホワイトの個人としての特徴は身体能力の優位性よりも、相手の状況を把握し適切なプレーをチョイスできるクレバーな判断力です。強気に攻めていくメンバーが多い中で、一歩引いたようなホワイトのプレーはチームに変化をもたらしてくれるはず。ポポビッチの考え方を理解している司令塔は、苦しい時を打開するために出番を与えられるかもしれません。ガードとして周囲に得点させる能力も高く、テストマッチでアメリカが露呈した弱点をカバーするキーマンになる可能性を持っています。

ドリームチームの誕生以降、世界のレベルが向上したことで国際舞台で敗れることも珍しくなくなったアメリカ。そこでマイク・シャシェフスキーをヘッドコーチとして長期的展望でチーム作りを行い、オーストラリアに敗れるまでは78連勝を続けてきました。

そのサイクルが一旦終わり、ポポビッチに引き継がれて初めて迎えるワールドカップは、絶対的な優勝候補とは言えない状況で始まります。日本代表を含めた対戦相手にとっては「付け入る隙アリ」ですが、シーズンとは違う環境で若手にはブレイクが期待されるし、試合をこなすごとに連携は機能してくるはず。現時点で完成度が高いとは言えませんが、「将来への伸びしろ」を十分感じさせるチームになっています。ポポビッチの長期計画の第一歩を優勝で締めくくれれば、将来に向けた強固なアメリカの土台をつくることになりそうです。