昨夏の甲子園で、最速148キロ左腕の山田龍聖(現・JR東日本)を擁し、3回戦に進出した高岡商(富山)。今年も、昨年…

 昨夏の甲子園で、最速148キロ左腕の山田龍聖(現・JR東日本)を擁し、3回戦に進出した高岡商(富山)。今年も、昨年からのメンバーである森田朝陽(あさひ)、井林泰雅、石黒優希、堀裕貴らが中心となり、富山大会では3試合でコールド勝ちするなど貫禄を見せつけ、3年連続出場を果たした。



石見智翠館戦でホームランを含む3安打4打点と活躍した高岡商の森田朝陽

 甲子園初戦となった石見智翠館(島根)との試合では、2点リードの9回裏に同点に追いつかれ延長にもつれ込むも、直後の10回表に2点を奪って試合を決めた。森田は、この試合でホームランを含む3安打4打点を放ち、堂々と「日本一」を公言するチームに勢いをもたらした。

 近年の高岡商といえば、勝っても負けても印象に残る試合が多かった。

 吉田真監督がチームを率いて初めての甲子園となった2015年夏は、オコエ瑠偉(現・楽天)を擁する関東一高(東東京)を相手に3回まで0対8と大量リードされた状況から同点に追いつき、結果的に10対12で敗れはしたが、大熱戦を演じた。

 2017年春も、初戦で盛岡大付と対戦して延長戦の末に9対10と惜敗。

 この高岡商に勝利した2チームは勢いに乗り、関東一高はベスト4、盛岡大付はベスト8進出を果たした。

 そして昨年夏は、3回戦で大阪桐蔭と対戦。藤原恭大(現・ロッテ)、根尾昂(現・中日)といったドラフト1位の強打者を擁し、春夏連覇を達成した王者に対して1対3で敗れたが、山田が11奪三振の好投を見せるなど大善戦。そしてこの試合の経験が、現チームに大きな影響を及ぼした。

 捕手として山田をリードした石黒優希は言う。

「大阪桐蔭の選手は、1球ごとに声を出し合っていました。全員が監督みたいな感じで。あれを間近で体験し、自分たちもそこに少しでも近づこうとやってきました。結果的に、1球に対する執着心や集中力が格段に高まった気がします」

 吉田監督は「1対3という点差以上に大阪桐蔭との差を痛感させられました」と言い、こう続けた。

「瞬間的なプレーのなかでの対応力、送りバントの確実性、キャッチボールを含めた基本動作の精度……そのあたりの差をすごく感じました。ただそうした技術的なこと以上に感じたのは、意識の違いです。一つひとつのプレーに対しての事前の確認を、高校生ではできないようなレベルまで徹底していました」

 主将の森田は、基本の大切さを学んだと言う。

「それぞれの選手が発する言葉もそうだし、プレーにしても基本をすごく大事にしている。甲子園が決まったあとも、学校に残って練習したり、バント練習に時間をかけたり、自分たちなりにもう一度基本を見直してやってきました」

 昨年は甲子園が決まり、出発するまでの時間を選手たちの疲労回復に充てたが、今年は基礎練習を繰り返した。そうしたひとりひとりの意識の変化は、大きな成果をもたらした。石見智翠館との試合後、吉田監督はこう語った。

「これまでは、たとえば相手走者が一塁に出た時、どんなことを仕掛けてくるんだろうということを、チーム全員がわかっていなかった。要するに、チームとして意思の疎通ができていませんでした。

 この1年は、そこの部分を詰める作業をしてきたつもりです。今回は(ベンチが)一塁側でしたので、一塁の選手に指示して全体に伝達させたり、わざわざタイムを取らなくても捕手とアイコンタクトで確認したり、外野手もこっちが合図を送れば、必ずアンサーをくれたり……。大歓声のなかでも選手たちとはしっかり意思の疎通はできていたと思います」

 こうした環境のなかで、選手たちの才能にも磨きがかかってきた。初戦で外野からの好返球で強肩を見せつけた掘は、プロ入りを希望しており、昨年の山田に続きスケールの大きな選手が次々と現れるようになった。

 甲子園での敗戦を糧に、着実に全国の強豪校へと成長を続ける高岡商。近年の甲子園を沸かせている習志野(千葉)や明石商(兵庫)の”超公立校”というカテゴリーに足を踏み入れたと言っても過言ではない。

 悲願の日本一に向けて、森田はこう締めくくった。

「もちろん目標は日本一ですが、目の前の一戦に集中して、精一杯力を出し切る。その積み重ねが目標達成につながる。先を見ずに目の前の1球に集中している部分が、チームにとっての成長なのかなと思います」

 高岡商は8月12日の第4試合で、神村学園(鹿児島)と2回戦を戦う。