8月9日時点で、パ・リーグ首位のソフトバンクと3.5ゲーム差の2位につける日本ハム。今季の開幕投手を務めた上沢直之…

 8月9日時点で、パ・リーグ首位のソフトバンクと3.5ゲーム差の2位につける日本ハム。今季の開幕投手を務めた上沢直之が6月に左膝を骨折し、長期離脱を余儀なくされるトラブルに見舞われたものの、大きく下降することなく上位をキープ。流れが悪くなりそうなところを幾度となく食い止めてきたのが、投手陣の軸となっている有原航平だ。




リーグトップの11勝を挙げている有原

 2014年のドラフトで4球団が競合し、日本ハムから1位指名を受けた逸材。今季は、その能力が本格的に開花したと言っても過言ではない。ハーラーダービートップの11勝(5敗)を挙げ、防御率2.29はリーグ3位。ほかにも、121奪三振はリーグ2位、QS率(※1)75%はリーグ3位、WHIP 0.92(※2)はリーグトップと、先発投手として文句のつけようのない成績で投手陣をリードしている。

※1:先発投手が6イニング以上を投げ、自責点を3点以内に抑えた時に記録
※2:1投球回あたり何人の走者を出したかを表す指標

 昨季はキャンプで右肩痛を発症。1軍復帰後も精彩を欠き、8勝5敗、防御率4.55、QS率50%と力を発揮することなく不完全燃焼に終わったが、今季は見違えるような投球を見せている。

 有原の一体何が変わったのだろうか。

 昨季と今季の球種配分を比較してみると、明らかに投球スタイルが変わったことがわかる。最大の違いは、昨季にはまったく投げていなかったツーシーム(投球全体の約9%)の存在だ。プロ入り当初は投げていた球種だが、ここ数年は制球の不安もあって封印していた。しかし、昨季の対右打者の被打率が.297と打ち込まれていたこともあったのだろう。今季は内角攻めの際に有効となるツーシームを解禁している。

 ツーシームは、今季初登板となった3月31日のオリックス戦から威力を発揮。有原は同試合で7回1失点(自責点0)無四死球と快投したが、オリックスの主砲・マレーロら右打者はツーシームに完全に詰まらされていた。開幕直後から”ニュー有原”を印象づけたことが、その後の投球にも好影響を与えた。

 4月28日のソフトバンク戦でも、唯一のピンチだった7回ノーアウト二塁の場面で、松田宣浩の内角にツーシームを投じてセカンドライナー。飛びだしていた二塁走者も刺して併殺を完成させた。ツーシームがあるだけで右打者は内角を意識せざるをえないし、ゴロを打たせて球数を少なくできるメリットもある。

 もうひとつ大きく変わったのはチェンジアップの割合だ。昨季は約9%だったのが今季は約19%と飛躍的に増加。同球種の被打率は昨季も.214と低かったが、今季は.141とさらに低下した。

 さらに、空振り率は昨季の約18%から約25%に上昇。今季はすでにキャリアハイの121個の三振を記録しており、そのうちの37個をチェンジアップで奪っている(球種別の奪三振数はチェンジアップとフォークがそれぞれ37個で最多)。ちなみに、昨季チェンジアップで奪った三振は14個。チェンジアップが重要なウイニングショットになっている。

 右打者に有効なツーシームと、左打者に有効なチェンジアップの球数を増やしている効果があってか、今季の対右打者の被打率は.188、左打者の被打率は.194と安定感抜群の数字を残している。特に、これまで苦手としてきた右打者に対しては、ツーシームで内角を意識させ、フォークやスライダーなどで打ち取るパターンが確立されてきた。

 もともと有原はチェンジアップのほかにも、スライダーやカットボール、カーブ、フォークなど多彩な球種を持っているが、それぞれの球種の割合にあまり差がない。今季のように150km台中盤の直球が走っていることが、各変化球が生きる基本条件にはなるが、打者は非常に球種を絞りにくいはずだ。ちなみに、昨季は直球の割合が約42%だったが、今季は約31%に減少。その分、球数が急増したチェンジアップをはじめ、変化球の割合が増えている。

 球種を絞りにくいことや、勝負所での直球の威力、変化球のキレがあることで一発を浴びることも少なくなった。被本塁打率を表すHR/9(※3)は0.69。これはオリックスの山本由伸の0.46に次ぐリーグ2位の数字だ。

※3:1試合完投相当の9イニングあたり、何本の本塁打を打たれたかという指標

 前回登板の8月1日の楽天戦では、7回2失点の好投を見せるも打線の援護がなく5敗目を喫した。自己最多となる12勝目はお預けとなったものの、3回までに2点を失った後は大崩れすることなく、今季17度目の先発でQSは計12回に。余裕を感じるマウンドさばきや表情からはエースとしての貫禄を感じた。

 現在のパ・リーグは、首位のソフトバンクから5位のロッテまでのゲーム差がわずか5.5。最下位のオリックスも、CS出場圏内の3位楽天とは4ゲーム差と食らいついている。ここ数年は、この時期になるとAクラスとBクラスのゲーム差が開く傾向があったが、今季は近年稀にみる混戦になっており、激しい戦いは最後まで続くだろう。

 そうした状況となった時に大きいのが、ここ一番で頼れる絶対的エースの存在。2016年以来3年ぶりのリーグ優勝を日本ハムが果たす時、その中心には有原がいるはずだ。