梅雨明けして全国的な猛暑が続くなか、スーパーGTシリーズ第5戦「富士GT500マイルレース」が開催された。富士スピードウェイを舞台とする「夏の大一番」は、通常の約2.5倍にあたる500マイル(約800km)で争われる。途中のドライバー交代は実に4回以上と、シリーズ屈指の長距離レースだ。


チームルマンが

「富士GT500マイルレース」も制して2連勝

 富士スピードウェイは早朝の段階で気温30度に達し、サーキット上はまさに灼熱のコンディション。ドライバーだけでなく、マシンにとっても過酷な環境となった。

 そんな厳しいレースのなか、GT500クラスを制したのは、第4戦・タイでチーム6年ぶりの優勝を飾ったナンバー6のWAKO’S 4CR LC500(大嶋和也/山下健太)だ。6号車のチームルマンは前回優勝により、第5戦のウエイトハンデは70kg。かなりの重量を課せられたことで、予選は11番手と出遅れた。

 ただ、予選後に6号車のドライバーから発せられた言葉は、こちらが思っていたより前向きだった。

「予選一発では厳しかったですけど、決勝でのペースは悪くないと思います。レースも長いですし、淡々と走っていけば順位を上げていけると思います」(山下)

「走り出してみると、思いのほかクルマが速かった。セッティングも決まったし、エンジンも速かったし、タイヤのフィーリングもよくて、『上位進出もあるんじゃないかな』と感じています」(大嶋)

 そのドライバーたちの予感は、決勝レースで見事に的中する。スタートから少しずつポジションを上げていき、全体の3分の1にあたる59周を完了した時点で5番手に浮上。さらに70周すぎ、発生したアクシデントの影響でセーフティカーが導入されると、レース再開時の混戦でうまく隙をついて、3番手までポジションを上げた。

 そして、レース後半に入った106周目、このレースの勝敗を決定づける出来事が起きる。

 ナンバー24のリアライズコーポレーションADVAN GT-Rが、マシンから炎を上げてストップ。その事態を収拾するため、2度目のセーフティカー導入となった。

 6号車は、ちょうどこの周に3回目のピットストップを予定していた。だが、セーフティカーが導入されてしまうとピット入口はクローズ状態となるため、作業ができなくなってしまう。

 しかし、6号車の決断は早かった。セーフティカー導入の2秒前にピット入口にぎりぎりで滑り込むと、レースオフィシャルの判定はセーフ。これによって、大きなアドバンテージを得た6号車はトップに浮上した。

 結果、この瞬時の判断が勝敗を決し、6号車は2位以下に31秒もの大差をつけて2連勝をマーク。6号車だけがセーフティカー導入のタイミングを利用して大きなアドバンテージを得たことで、レース後は物議を醸すことになった。

 だが、彼らは勝利を掴み取るために、やるべきことをしっかりとやっていた。チームを率いる脇阪寿一監督は語る。

「ラッキーと言われたら、それまでです。でも、そのラッキーを掴む準備は、100%ではないですけど、ある程度はできていたと思います。そう言った部分は、以前からチームに求めていることでしたから」

 今季TEAM MUGENから移籍してきた阿部和也エンジニアは、重いウエイトハンデでも速く走れるマシンセッティングを短い時間のなかで見出した。それを操る大嶋と山下は、完璧なドライビングを披露した。そしてメカニックも、GT500クラスでトップレベルのクオリティのピット作業を成し遂げた。

 こうした「チームの総合力」があったからこそ、あの106周目に逆転優勝を狙える上位まで進出し、セーフティカー導入前にピットに滑り込める位置を走行できていたのだ。「運も実力のうち」という言葉があるが、まさにこれがそうなのかもしれない。

 2連勝という結果に、就任4年目となる脇阪監督はレース後、感慨深い表情を見せていた。現役時代は3度のGT500王者に輝いた名ドライバーも、「チームをまとめる」という部分では苦労が絶えなかった。それがようやく、これまでの努力が形になろうとしている。

「僕はドライバーとしてある程度の成績を残していますが、監督としては(実績を)持っていない。みんなについてきてもらうために、『これは正しいのか、正しくないのか』と思いながらやってきました。でも、ようやく成績がついてきたので、これからは自信を持って(今のやり方を)貫いていけます。

 阿部の(セッティングする)クルマは速いし、ドライバーふたりも速い。メカニックは(最初は)全然ダメでしたけど、それが勝てるスタッフに変わりました。そして今回のレースで、本当に強いチームになった。みんな、ひと皮剥けたと思います」

 夏の2レースで一気に36ポイントを獲得し、ドライバーズランキングでも独走状態となった6号車の大嶋/山下組。今シーズンはまだ3レース残っているものの、ライバルも手がつけられないほどの強さを確立し始めている。