【写真提供=共同通信】秋田中央-立命館宇治  立命館宇治に敗れ、整列する松平(右端)ら秋田中央ナイン=甲子園

 100球だとか、登板間隔だとか、休養日だとか、サイン盗みだとか高校野球周辺は何かと騒がしい。そこで今日はささやかに考えてみたい。
 高校球児の髪型についてだ。

 今大会、出場しているチームで髪型を自由にしてるのが花巻東と2日目に登場した旭川大と秋田中央の3校だ。
秋田中央の佐藤幸彦監督は4月、坊主頭禁止を生徒たちに提案した。
高校球児はみんな坊主頭。意思を持ってそうしているのか。ヘアスタイルも考えてやってみよう、と。

 佐藤監督は91年夏、秋田の主将として出場し2回戦、北嵯峨戦にサヨナラ勝ち。3回戦は優勝した大阪桐蔭に惜敗した。教員として郷里に戻り、03年夏、母校を甲子園に導いた。4年前に秋田から秋田中央に異動して来た。

 秋田は学生服で坊主頭、秋田中央はブレザーに坊主頭で、ちょっと違和感を覚えたらしい。それはともかく、坊主頭だとひと目見て高校球児と判断される。だらしなくても野球部員だから、しっかりした人間だと思われる。周囲のそういう視線に甘えていないか。そんな心配もよぎったそうだ。

 発意に後藤弘康部長も賛同したと言う。
「監督が来て4年目。この間、いろんなことを考えていたと思いますよ。実は私も以前の高校で監督をしていた時に、坊主でなくていいよと言ったことがありました。だけどその時は本人たちが坊主がいいと。それで今回、私にも異存はなかったです。髪型に限らず、考えて行動しろ、ということです」

 最初、戸惑った生徒もいたという。坊主がいいです、という生徒もいたとか。そして選手たちも一週間、話し合って脱坊主を決断する。

 秋田の県民性はわりと、古風らしい。負けたら何を言われるかわからない。髪を伸ばしているからだ、とか。
「世の中にはいろんな人がいるよ。負ければ頭のことを言われるよ。その時にやるべき役割をやるべ、と生徒たちには言って来ました」と佐藤監督。
できる努力を最大限やって、結果、負けたら仕方ない。認められる日も来る。それまで高校球児のベストを尽くそう。

 立命館宇治との第4試合は努力の実った好ゲームだった。

 エースの松平涼平(3年)は毎回のように無死から走者を出すが守備陣も含めて無失点で凌ぐ。
「松平は3年生でチームを背負って、ピンチばかりだったんですが、ナイスピッチングだったと思います。頑張ったのに助けてあげられなくて、ベンチの責任ですね」と監督は讃えた。

 7回表、秋田中央の攻撃。
 2四球と安打で無死満塁のチャンスを迎える。6番、齋藤椋平(3年)はピッチャーゴロ。7番、佐々木夢斗(3年)はショートへの併殺打で先制の好機を逸した。

 その裏、1死2塁のピンチ。セカンドへのゴロを二塁手の佐々木が痛恨のトンネルをして、立命館宇治が逆に先制点を挙げる。
「けっこう速い打球で追いつけないと思っていたんですが、正面に入れて、安心してしまった。ボールが自分の思ったより下を通った」(佐々木)

「ミスが出ないことはない、といつも言って来ました。ランナーがいないところでミスが出ないように練習をしてきた。でも大事なところ出ちゃいましたね。それが今のチームの力なんで。彼が一番、反省している。それを今後に生かしてくれれば」
 監督は佐々木をかばった。

「県大会から6試合目。6パターンのゲームがあって、同じ展開にはならないから、どんな展開になっても慌てるな」(佐藤監督)
そう言って臨んだゲームだったが、結局、散発3安打で0対1で完封された。相手投手の高目のストレートに伸びがあったことも想定外だっただろう。世の中に同じ展開はないのだ。

 坊主頭を捨て、自主性を得つつある秋田中央の球児たち。

 まず部長が苦笑いをしながら言う。
「今日はピンチの時の前進守備も、送りバントもベンチからの指示です。自主性は一歩進んだぐらいですね。
髪の毛を伸ばしたことで、春から夏の大会までいろいろ言われて・・・。古い慣習がある方が変な話かなと」

 そして監督の評価。
「坊主をやめたのは主体性を身につけて欲しいからです。まだ三ヶ月ぐらいですからね。ただ、僕がいう前にポジショニングの確認をとったり、お互いにいろんなことを指摘しあって来ている。自分たちでやらなくちゃいけない、という思いは芽生えてきたのかと思います。
自主性の浸透度としては5、6割じゃないですかね。でも、ずっと変化が起こってます。いい意味で彼らはプレッシャーにしてますし、いつか変わるだろうと思います」

 最後に佐藤監督はこんな言葉で締めくくった。
「頭髪のことが話題にならないような高校野球になって欲しいなと思います」

文・清水岳志