インディカー・シリーズ第12戦、アイオワの8分の7マイルオーバルでのレースは、雨によってスタートが4時間半以上も遅れた。オーバルでのレースは雨だと行なうことができない。雨の降り具合によって路面が急激に変化し、1周前とでさえコンディショ…

 インディカー・シリーズ第12戦、アイオワの8分の7マイルオーバルでのレースは、雨によってスタートが4時間半以上も遅れた。オーバルでのレースは雨だと行なうことができない。雨の降り具合によって路面が急激に変化し、1周前とでさえコンディションが大きく変わることがあるため、高速のレースはリスクが高すぎるのだ。

 この時期のアメリカの日没は、デイライトセービング(サマータイム)採用で8時半過ぎ。予定の夕方6時にスタートすると、陽のあるにうちにレースは終わるはずだった。ところが、大きな雨雲が通過。懸命の乾燥作業が行なわれたあと、完全に太陽が沈んでからスタートが切られ、最初から最後まで照明を浴びながら争われる完全なるナイトレースとなった。



スタートが遅れ、深夜のレースとなったアイオワでのインディカー

 プラクティスも予選も日中だったため、誰もが暑いなかでしか走っていなかったが、レースは気温、路面温度とも想定していたより断然低いコンディションでの戦いになった。さらに、今回からルールの変更でターボのブースト圧が上げられ、マシンはパワフルになっている。こういう状況下での戦いで強いのはエンジニアリングのしっかりしたチーム。チーム・ペンスキーが有利だろうと予想されたが、それが当たった。

 雨が降ると観客も大変だ。雷が発生するとスタンドで待つことは禁止されるため、グランドスタンドの下で雨宿り、となる。1、2時間ならワイワイと過ごしていられるが、今回は雨も強く、「自分の車に戻ってください」とアナウンスがあった。暴風・大雨・雷の3点セットで、スタンドの下も危険と判断されたためだ。

 悪天候といえば、2016年のテキサスは雨で延期になった。午後2時過ぎにスタートの予定だったが、夜中近くまでレース開始を待って粘った結果、23時半に延期が発表された。今回より長い9時間超の待ち時間となったのに、結局、レースのスタートは切られなかった。翌日、レースはスタートしたが、71周でまた雨……。72周目からは約2カ月後に開催されることになった。

 世界最大のレース・インディ500はこれまでに3回、雨により予定していた日にレースを開催できなかった。最初は1915年で、悪天候により2日後に延期。1987年のレースは雨で翌日に延期。だがその日も雨で、次の土曜日を待って開催にこぎつけた。1997年も1日順延となり、翌日スタートを切ったが、15周で雨に。レースを終えたのはその翌日の火曜日だった。

 雨でレースが中断するケースも多々ある。今回のアイオワでもレース中に短い中断があったが、2004年と2007年のインディ500は雨によってどちらも2度の赤旗中断があった。結局、2004年は450マイル、2007年は425マイルと、500マイルを走り切らずにゴールとなった。

 インディカーでは、ストリートでのレース延期という珍しいケースもあった。2014年のトロントは雨量が多く、水はけも悪くてペースカーがスピン。レース不可能と判断され、翌日開催となった。2010年のセント・ピーターズバーグ、2011年のサンパウロ(ブラジル)のストリートレースも雨で翌日開催になっている。2000年4月のナザレス(すでに閉鎖されたペンシルベニア州の1マイルオーバル)では、CARTインディカー・シリーズのレースが雪のために延期。その週末の開催は不可能と判断され、レースは9月開催まで5カ月も延期になった。

 とにかくアメリカの雨は、驚くほど強く降ることがある。落ちてくる水の量が尋常ではなく、フリーウェイを走っていたら、突然、視界が悪くなって、時速70マイル制限の道で、全員がいっせいに40マイル以下にスピードダウン……などということがよくあるのだ。一瞬にして道路は水浸しとなり、タイヤがかきわける水の量の多さをハンドルに感じると、ちょっと恐怖を感じる。

 インディカーの場合、アイオワのほか、ゲイトウェイ(イリノイ州)、インディ500(インディアナ州)あたりでは竜巻も発生する可能性があり、そっちはもっと怖い。我々はメディアセンターなどの建物の中で待機できるので、身の危険を感じるほどではないが、こうなると観客も命がけだ。

 さて、天候に翻弄された今回のアイオワだが、ウィナーはポイントリーダーのジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)だった。開幕戦セント・ピーターズバーグ、第7戦デトロイト、第9戦テキサスと、すでに3勝を挙げており、2017年にチャンピオンとなった時と同じ4勝に早くも手を届かせた。残るは5戦。2度目のタイトルが現実味を帯びてきた。

 2位はポイントで4番手につけているスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)。一時は20位近くまで後退、周回遅れに陥っていたが、そこから驚異的な追い上げを見せた。涼しいコンディションがマシンに合い、燃料セーブ作戦によりライバル勢より新しいタイヤで走れるチャンスをつかんだのが大きかった。3位は去年のウィナー、ジェームズ・ヒンチクリフ(アロウ・シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)で、今年初の表彰台となった。

 佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は予選でペンスキー勢のすぐ後ろの4位をゲット。レースではスタートダッシュで2番手に浮上したが、1回目のピットストップまでそのポジションを保つことができず、その時点でほかのマシンより1回多いピットストップで戦う作戦に切り替えた。

 新しいタイヤを装着すると、古いタイヤで奮闘しているドライバーたちを次々とオーバーテイク。このペースならピットが1回多くても勝てる可能性は十分にあると見えた。だが、競り合って並んだ2台のマシンの後ろで乱気流を浴び、アクセルを戻したところに後続車が追突。琢磨のマシンはアンダートレイが壊れ、レース続行は不可能となった。