依然として強烈な熱波に包まれているドイツは、気温が40度にも達しようかという暑さ。直射日光の当たる日なたでは、ゆうに60度を超える路面温度となっている。 その暑さについて、マックス・フェルスタッペンは冗談交じりにこう言った。「チームの…

 依然として強烈な熱波に包まれているドイツは、気温が40度にも達しようかという暑さ。直射日光の当たる日なたでは、ゆうに60度を超える路面温度となっている。

 その暑さについて、マックス・フェルスタッペンは冗談交じりにこう言った。

「チームのみんなも1kgは痩せるだろうね(笑)。そうすればピットストップも速くなって、今回は1.8秒が記録できるかもしれない」



イギリスGPでフェラーリを上回る速さを見せたホンダのパワーユニット

 前回のイギリスGPでは、レッドブル・ホンダが史上最速記録となる1.9秒のタイヤ交換を成し遂げたことが話題になった。

 しかし、それ以上に注目すべきは、パワーサーキットのシルバーストンでフェラーリを凌駕する速さを見せたということだった。

 パワーサーキットで善戦を見せ、高温の状況下ではメルセデスAMGがパワーダウンを強いられることを考えれば、今週末のホッケンハイムはかなり期待が持てると言える。メルセデスAMGは冷却系に改良を加えたとはいえ、一部で報じられていたような新型シャシーを用意して冷却レイアウトを完全刷新することはできておらず、40度ともなればオーストリアGPに続いて出力低下は避けられない。

 ただし、ホンダのパワーユニットも、暑さでパワーダウンしないわけではない。実際、カナダGPでもオーストリアGPでも、前走車のすぐ後方で走り続けたフェルスタッペン以外のマシンは、吸気温度の上昇からパワーユニットを守るためセーフモードに入ったりしていた。

「正直なところ、暑さが僕らにとってプラスに働くかどうかはわからないよ」(フェルスタッペン)

 気温40度というコンディションもギリギリの線だと、ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターは語る。

「こういう(気温40度の)コンディションでは、目一杯クーリングするしかないと思っています。クルマの空力面(冷却面)のセットアップとパワーユニット側の各部の温度状況を見ながら運用しますが、セッティングできるほど余裕があるかというと、かなり厳しいかなというのが本当のところです」

 現時点での天気予報では、金曜日までこの暑さが続くものの、土曜日以降は雨の確率が高く、気温は大幅に下がることが見込まれている。

「金曜が異常に暑くて、その後の予報は日に日に変わっていますから、その後どう動くかを見ながら予選・決勝に向けて準備をしていかなければなりません。あまり(気温が)下がりすぎてもコンディションが変わってしまうので問題です。(土日は)10何度も下がるといった話もありますから、それをうまくマネジメントできるように走っていきたいと思っています」(田辺テクニカルディレクター)

 金曜は目一杯クーリングして走りながら、10度以上も涼しくなる予選・決勝に向けてセットアップを進めなければならない。また、金曜以降に予報が外れることも想定して、暑さからタイヤを守るためのセットアップも考慮しておかなければならない。

 つまり、金曜の結果がそのまま予選・決勝につながらない可能性も高い。非常に難しいレース週末になりそうだ。

 もし予選・決勝が雨となれば、それはどのチームにとっても2019年型マシンで初めて走る本格的なウェットコンディションということになる。となれば、まったく事前データのない状態で用意したイニシャルセットアップの出来と、そこから1日以内でのファインチューニングの善し悪しがレースを左右することになる。

「その点に関しては、レッドブルはいつもすばらしい仕事をしてきたので、まったく心配していないよ」

 そう語るのは、ピエール・ガスリーだ。前戦イギリスGPで上位争いを繰り広げ、ようやく長い不振のトンネルから脱した感がある。

「大きな何かではなく、すべては小さなことの積み重ね。あらゆる部分を正しく理解し、最大限のパフォーマンスを引き出せるようにすべく、チームとともに徹底的に改善した。まだパーフェクトではないけど、さらに進歩するために改善を継続しているよ」

 それは、チームとしても同じことだ。

 フランスGPではスペック3パワーユニットを投入し、オーストリアGPでは新型フロントウイングを持ち込み、イギリスGPではダウンフォースを削ってストレートで稼ぐセットアップを施して、フェラーリを凌駕した。マシン挙動がよくなったため、低速コーナーからの立ち上がりでは素早いスロットルワークが可能になり、ドライバーがラグ(出力の遅れ)を感じるところまで来た。

「マシンのグリップレベルがステップアップしたからね」(フェルスタッペン)

 ホンダはドライバーから実際の症状を詳細に聞き取り、セッティングを煮詰め直してホッケンハイムにやってきた。ホンダもそれだけスペック3の運用面で進歩してきたということだ。

「僕らがフェラーリより速いと言うなら、常に0.2〜0.3秒は速くなきゃいけないけど、そこまでではない。彼らはストレートがとても速いし、オーバーテイクするのは簡単ではないよ。でも、僕らは常に彼らと戦えるレベルにある」

 フェルスタッペンは、フェラーリに勝つことが目標ではないと語る。メルセデスAMGをも上回る速さを手に入れ、常に優勝することが最終目標なのだから、フェラーリに勝つか勝てないかはさして重要ではないというわけだ。

 しかし、夏休み前の2週連戦(ドイツGP、ハンガリーGP)を最良の形で終え、シーズン後半戦の飛躍へつなげたいのは当然の願いでもある。

 田辺テクニカルディレクターは、こう語る。

「夏休み前にキッチリと終わって、勢いを保って後半戦を戦っていきたい。シーズン前半戦のシメとなるこの2連戦は、全力で戦っていきたいと思っています」

 ドイツGPは、ひと筋縄ではいかない週末になりそうだ。そんななかでこそ、レッドブル・ホンダの強さが発揮されそうな期待が高まっている。