アリエル・ミランダにとって、昨シーズンはまさに怒涛の1年だった。キューバ共和国のハバナ出身の左腕は、シアトル・マリ…
アリエル・ミランダにとって、昨シーズンはまさに怒涛の1年だった。キューバ共和国のハバナ出身の左腕は、シアトル・マリナーズ傘下の3A・タコマでプレーしていたが、ソフトバンクと契約するため7月4日に解雇が決まった。そして来日すると、先発投手としてパ・リーグの激しい優勝争いに加わった。

昨年のシーズン途中で来日し、6勝をマークするなど日本一に貢献したミランダ
ソフトバンクに入団してから8試合で6勝1敗、防御率1.89。リーグ優勝こそ逃したが、ポストシーズン進出に大きく貢献。チームはクライマックス・シリーズ(CS)を勝ち抜き、広島と日本シリーズを戦うことになった。
1敗1分で迎えた日本シリーズ第3戦。ミランダの好投でシリーズ初勝利を挙げたソフトバンクは、そこから4連勝を飾り、2年連続日本一に輝いた。
ミランダにとっては、日本の文化や言葉に慣れる暇もなく、ただ生き残ることに精いっぱいの4カ月だった。
だが、今年は違う。2月1日のキャンプに合わせて、心身ともにリラックス状態で来日した。今年こそゆっくり日本の野球に溶け込みたいとミランダは思っている。
ミランダを見て、まず驚かされるのが右手にはめるグラブの小ささだ。なぜ188センチもあるミランダが、こんな小さなグラブを選んだのかを聞くと、こんな面白いエピソードを教えてくれた。
「昔はもっと小さいグラブを使っていました。しかし、マリナーズに移籍して、あるピッチングコーチに言われたのは、セットポジションに入って、グラブのなかでグリップ(握り)を決める時に、相手から見られる可能性があると。そうなると球種がわかってしまうので、もうちょっと大きいグラブを使ったほうがいいんじゃないかとアドバイスされました。それで大きめのグラブに変えたんです」
グラブは手のひらの下の部分から指先までの長さをインチで測り、メジャーでは捕手以外のポジションは13インチまでという規定がある。現在、ミランダは11.5インチの小さなグラブを使っているが、マリナーズのコーチに言われるまでさらに小さい11インチのものを使っていた。それは手の大きさよりもわずか2、3インチ長いだけのものだった。
ミランダは2015年からボルチモア・オリオールズとアマチュアFA契約を結び、翌年の7月31日にトレードでマリナーズに移籍。つまり、28歳の時までずっと特殊な小さいグラブを使っていたわけだ。
「小さいグラブのこだわる理由は、素早く動くためです。私は反射、反応というものを大事にしていて、そういう部分でも小さなグラブが役立っています。『大きなグラブにしろ』と言われて変えた時は、違和感がありました。そこから徐々に慣れていき、今ではあまり気にならなくなりました」
たった半インチの違いだけでも違和感があったという話を聞けば、ミランダがいかに繊細な人間かがわかる。これまで多くの外国人選手が細かい日本の野球に苦労してきたが、ミランダの性格なら十分に対応できるはずだ。
そしてミランダには、もうひとつ大きな武器がある。キューバから亡命し、アメリカでたった3年しかプレーする経験がなかったにも関わらず、日本の文化に触れる機会が多かったことだ。
「マリナーズに移籍した2016年、青木(宣親/ヤクルト)、岩隈(久志/巨人)、それに日本人ではありませんが李大浩(韓国プロ野球のロッテ)がチームメイトになりました。彼らとはコミュニケーションをとっていましたし、いい関係を築けていました。3人とも日本でプレーした経験がありましたし、いろんな話を聞いていました。それに去年はイチローがマリナーズに復帰し、さらに日本文化に対して馴染みが深まりました」
日本の文化について、気に入っているものは何かと問うと、ミランダは笑顔で「アリガトウ」と言って、こう続けた。
「とくに感じるのは、あいさつです。日本人は毎回いつも丁寧にあいさつしますし、常にリスペクトの気持ちを持ちながら過ごしていると感じます。そのあたり、すごく教育に熱心な国なんだと感じます。私も日本人のチームメイトだけでなく、同じラテン系のチームメイトに対しても、必ずあいさつします。気持ちいいですね」
すぐに日本球界に溶け込めた背景には、小さなグラブだけでなく、積極的に日本の文化を学ぼうとするミランダの姿があった。