14日、全日本スーパーフォーミュラ選手権(SF)第4戦の決勝レースが富士スピードウェイで行なわれ、今季新人のアレックス・パロウが雨中の独走で初優勝を飾った。パロウ所属のナカジマレーシングおよび中嶋悟監督にとってこのカテゴリーでの優勝は9年ぶ…

14日、全日本スーパーフォーミュラ選手権(SF)第4戦の決勝レースが富士スピードウェイで行なわれ、今季新人のアレックス・パロウが雨中の独走で初優勝を飾った。パロウ所属のナカジマレーシングおよび中嶋悟監督にとってこのカテゴリーでの優勝は9年ぶり。

決勝日、雨は一時完全にあがったのかと思えることもあったが、結局は微妙な雨量変化を伴いながらほぼ降り続け、午後1時45分に始まったSFの決勝レースは終始ウエットコンディションに。ドライ用タイヤの出番はレース中に訪れず、セーフティカー(SC)先導で始まったレースは予定の55周を消化する前に規定の最大競技時間95分を迎え、53周で決着することとなった。

巻き上がる水煙のなか、燃費やレインタイヤのもちといった諸条件を雨量変化とともに各陣営が入念に睨みつつのレース展開。3周終了時点でSCが撤収してレースが戦闘状態に入ってからも、序盤~中盤は上位に関しては膠着状態に近い流れとなる。そのなかで予選19位から猛攻を見せたのが#18 小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG/トヨタ)だった。さすがの走りで場内を沸かせた#18 可夢偉はこのレース、最終的に6位に入賞する。

レース終盤になって入賞圏内(トップ8)での順位的な動きも活発化してくるが、ポール発進の#64 A.パロウ(TCS NAKAJIMA RACING/ホンダ)はそういったこととはほぼ無縁の快走を演じ続けた。もちろん彼も燃費セーブ等を意識しつつのレースではあったが、一時は後続を約15秒引き離すなど、終わってみれば終始レースをコントロール下においてのポール・トゥ・ウインと評せる快勝だった。それができるだけの速さを、パロウと64号車の組み合わせは有してしたことになる。

「今はすごくハッピーな気持ちだよ。チームがとても頑張ってくれた」と初優勝を喜ぶ22歳のスペイン人ドライバー。昨季まではキャリア面で幸運に恵まれないところもあったパロウだが、ビッグチャンスを得た今季、開幕前のテストから速さを示し続け、参戦4戦目で初勝利を実現してみせた。

2日前の金曜、予選前日のコース専有走行(路面ドライ)でトップタイムをマークした時に、彼は「レースでの目標は優勝しかないし、予選ではもちろんポールを狙う。ドライでもウエットでも自信がある」と話していた。まさに有言実行、「言ったことを現実にできたね」と笑顔で語り、「僕たちのチームのマシンは今シーズンとても速いし、(開幕前に公式テストがあった)鈴鹿と富士に関しては特にいいと分かっていたんだ」と、パロウはあらためて自信の高さを示す。「次のツインリンクもてぎがどうかは分からないけど、僕はチームのエンジニアやメカニックを300パーセント信頼しているし、もちろん自信はある」とも。

パロウが全幅の信頼を置くチームは、日本人初のフルタイムF1レーサーとして広くその名を知られる中嶋悟監督が率いるナカジマレーシング。このカテゴリーの名門だが、近年は勝利から遠ざかっており、これが2010年以来の勝利。着実なチーム再建策と、#64 パロウに#65 牧野任祐(今回決勝10位/開幕戦ポールシッター)という若手気鋭の新人コンビがうまく機能し、大輪の花を咲かせるに至った。中嶋監督も「チームスタッフも(前回優勝時から)かなり変わっていますので、若い彼らが初めて勝って喜ぶ姿を見られて嬉しいです」と笑顔だ。

中嶋悟さんといえば、F1現役時代、1989年オーストラリアGPでの雨中の4位入賞&決勝ファステストラップ(FL)樹立が有名だが、今回雨で快勝したパロウの今季カーナンバーである「64」は、当時中嶋さんがFLを記録したのが64周目だったことにちなむチーム伝統のナンバー。「雨の中嶋」の異名もまた有名だが、1997年生まれのパロウも「もちろん知っているよ。ナカジマさんがそう呼ばれていたことも、僕の大好きな64番の由来も知っている」。チーム一丸、新生された名門の門出となる圧勝劇だった。

決勝2位も#39 坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING/トヨタ)が予選順位を守りきるかたちでものにし、雨中の富士戦はルーキーの1-2という結果に。「優勝できなかったのは悔しいですけど、しっかりいいレースができたと思いますので、内容には満足しています」。坪井も予選後に語った“目標”をまずは達成した格好で、今後に期待が膨らむ自己ベスト2位表彰台となった。

決勝3位は#37 N. キャシディ(VANTELIN TEAM TOM'S/トヨタ)、予選から2つポジションを上げて表彰台を獲得した。その僚友であり、前出・中嶋悟さんの長男である#36 中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM'S/トヨタ)も予選から5ポジションアップで5位に入る力走を見せた。4位は#16 野尻智紀(TEAM MUGEN/ホンダ)で、優勝経験者3人が底力を示しもした富士雨中戦だった。

前戦まで今季は優勝か2位だった昨季王者 #1 山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING/ホンダ)は、今回11位で初の無得点。ただ、依然として#1 山本はシリーズ首位に位置しており、#37 キャシディを5点リードしている。ポイント3番手は今回ポール・トゥ・ウインで11点フルマークの#64 パロウ、首位からは13点差だ。

今回がSFデビュー戦だった#15 P. オワード(TEAM MUGEN/ホンダ)は14位で完走を果たしている。

SFの次戦第5戦は栃木県のツインリンクもてぎ(ロードコース)で8月17~18日に開催される。残り3戦、タイトル争いもそろそろ候補者が実質的に絞り込まれてきそうな局面となる。

なお、今回のレースウイーク中にSFの来季カレンダーがシリーズ運営団体「JRP」から発表された。現状では各大会主催者からJAFへの「申請中」という段階のものだが、来季も国内6サーキットで全7戦(鈴鹿のみ2開催)という概要自体には変化なし。ただし、東京オリンピック&パラリンピックの自転車競技会場にもなる富士でのラウンドが例年の7月ではなく4月初旬、開幕戦へと移動することになっている(SFの2020年カレンダーは後日、JAFからの公示をもって正式化される)。

<追記:2019年9月28日>
依然として暫定開催予定の段階で、開幕戦が4月4~5日の鈴鹿、第2戦が4月18~19日の富士と変更されている。

初優勝を飾った#64 アレックス・パロウ。《撮影 遠藤俊幸》

初優勝を飾った#64 アレックス・パロウ。《撮影 遠藤俊幸》

勝利を喜ぶ中嶋悟監督とパロウ。《撮影 遠藤俊幸》

勝利を喜ぶ中嶋悟監督とパロウ。《撮影 遠藤俊幸》

#64 パロウはポールポジションからの発進だった。《撮影 遠藤俊幸》

#64 パロウはポールポジションからの発進だった。《撮影 遠藤俊幸》

決勝2位の#39 坪井。《撮影 遠藤俊幸》

決勝2位の#39 坪井。《撮影 遠藤俊幸》

#39 坪井は2番グリッド発進から2位を守りきった。《撮影 遠藤俊幸》

#39 坪井は2番グリッド発進から2位を守りきった。《撮影 遠藤俊幸》

決勝3位に入った#37 キャシディ(後ろは2位 #39 坪井のマシン。《撮影 遠藤俊幸》

決勝3位に入った#37 キャシディ(後ろは2位 #39 坪井のマシン。《撮影 遠藤俊幸》

決勝3位に入った#37 キャシディ。《撮影 遠藤俊幸》

決勝3位に入った#37 キャシディ。《撮影 遠藤俊幸》

#18 可夢偉は“13台抜き”で6位に入賞。《撮影 遠藤俊幸》

#18 可夢偉は“13台抜き”で6位に入賞。《撮影 遠藤俊幸》

富士戦を終えたSF、次はもてぎが舞台となる。《撮影 遠藤俊幸》

富士戦を終えたSF、次はもてぎが舞台となる。《撮影 遠藤俊幸》