先日、トヨタ・ヤリスWRCでWRCトップカテゴリーへの出場が発表された勝田貴元に、その時の心境やそれぞれのラリーに対する印象、今後の目標などを聞いた。ヤリスWRCでの参戦が予定されているラリーは、第10戦ドイツと第12戦スペインだ。 ──…

先日、トヨタ・ヤリスWRCでWRCトップカテゴリーへの出場が発表された勝田貴元に、その時の心境やそれぞれのラリーに対する印象、今後の目標などを聞いた。ヤリスWRCでの参戦が予定されているラリーは、第10戦ドイツと第12戦スペインだ。

──ヤリスWRCで出場するプランを聞かされた時の心境を教えてください。
「トミ・マキネン・レーシングにいる時、トミの部屋に『ちょっといい?』みたいな感じで呼ばれて、プランを伝えられました。もちろんうれしさもありましたが、正直ビックリしましたね。
2019年はシーズン前からメンタルトレーナーやコ・ドライバー、ラリーチャレンジプログラムに携わっている人たちとミーティングを重ねて、入念にプランを練ってきました。そんななかでのヤリスWRCでの参戦は、自分で立てていた目標よりも半年ほど早いタイミングとなるので、ここでもう一度、何をすべきかしっかり考え直さないと、という気持ちもあります」

──参戦するラリーはドイツとスペイン。ドイツは初めての参戦になりますが難しいラリーですね。
「最初は“スパルタだな”と思いました(笑)。でもその後、なぜそのようなプランを立てたのかという考えを聞かせてもらいました。目的は、今後WRCのトップカテゴリーで戦っていくために、しっかり経験を積むこと。トップカテゴリーで得られる経験が今後のカギになっていくはずなので、それを踏まえたプランにしたと。
両方とも難しいラリーですが、自分ができること、やるべきことを理解していれば、それを経験につなげられるはず。そう考え始めてからは決心がつきました。
まだターマックでヤリスWRCに乗ってはいませんが、これまでの感触だと、R5より自分に合っている部分もあるのではないかと感じています。ヤリスWRCは挙動がクイックでパワーも十分。クルマの限界がものすごく高くて、乗っていて楽しい。“まだいける”という感覚が、レースの予選で1周1周タイムを詰めていく時の感覚に似ているなと。今までレースで培ってきたものが今後使えるのではないか、という気もしています。もちろんペースノートやドライビングの引き出しがあってのことですが、その点については自分のやってきたことは間違いではなかったなと」




──少し先ですが、両ラリーの目標は。
「両方ともまずは走り切ること。これは絶対条件です。今後に向けての糧にできるよう、とにかく走り切って距離を稼ぎ、クルマの動きを少しでもつかみたいですね。
ドイツでいえば、最初のステージから最終日のパワーステージまで、トップの選手との差をどれくらい詰められているかを重視してみたいと思います。スプリットタイムでもそういう部分をみていけたらいいかなと。それができればスペインでもさらに自信を持って走れるのではないかと思います。
スペインもその延長線上で、アプローチを大きく変えるつもりはありません。地道に続けていけば、いずれその経験はものすごく活きるはずなので。去年一昨年と抑えて走っていた経験が、間違いなく活きているという実感もあります。そのおかげでプッシュしなくても上位で走ることができていますし、実力を自分で理解している分、徐々にペースアップをしていけたらと」

──参戦体制はTOYOTA GAZOO Racing WRTの4台目となるのでしょうか?
「チャレンジプログラムとしての参戦ですので、トミ・マキネン・レーシングからのエントリーです」

──直近のラリーは新型フィエスタR5で臨むエストニア(7月12−14日)とWRC第9戦フィンランドです。この2戦の抱負を聞かせてください。
「フィンランドは僕のホームと言えるラリーのひとつですから、結果を求めていきたいと思っています。ただ、気合いを入れすぎると空回りする傾向があるので、そこはバランスをみながら(笑)。
あとはフィエスタR5がどうアップデートされているか楽しみですね。まずはエストニアでクルマの感覚をつかみ、フィンランドでしっかり性能を引き出すことを目標に頑張りたいと思います。そうすれば結果はついてくるはずですから。
(カッレ)ロバンペラや(ヤリ)フッツネン、(エイリーク)ピエタリネンなど速いライバルがいるなかで、どういう戦いができるか今からワクワクしています。シーズンのなかでもハイレベルなラリーになると思いますので、いい走りをして存在感を示したい。ぜひ注目していただきたいですね」

──最後に、日本のファンにメッセージを。
「これまで応援してくださったたくさんの方々に感謝を伝えたいですね。こうしてスタートラインに立てる、大きな一歩を踏めるということに感謝しています。ただ、重要なのはここからです。皆さんの期待に応えられるかという意味も含め、これからの方が大事になってくると思っています。最後まで応援していただけたら僕も気持ちを強く持てますし、必ず最後までやり遂げたいと思いますので、よろしくお願いします!」