逆境から本来の輝きを取り戻し、DeNAの黄金ルーキーが帰ってきた。ドラフト1位左腕。今永昇太が7日の中日戦(横浜)で7回7安打1失点の好投を演じ、今季の12球団新人トップとなる6勝目をマークした。■恩師から受けた言葉を胸に―、逆境乗り越える…

逆境から本来の輝きを取り戻し、DeNAの黄金ルーキーが帰ってきた。ドラフト1位左腕。今永昇太が7日の中日戦(横浜)で7回7安打1失点の好投を演じ、今季の12球団新人トップとなる6勝目をマークした。

■恩師から受けた言葉を胸に―、逆境乗り越えるドラフト1位ルーキー左腕

 逆境から本来の輝きを取り戻し、DeNAの黄金ルーキーが帰ってきた。ドラフト1位左腕。今永昇太が7日の中日戦(横浜)で7回7安打1失点の好投を演じ、今季の12球団新人トップとなる6勝目をマークした。

 2万8964人の本拠地の大声援に包まれ、掴んだ1勝は6月11日のオリックス戦(京セラドーム)以来、実に2か月ぶりだった。

 開幕から先発ローテを守り前半戦だけで5勝。ところが、6月に入ると疲れが目立ち始め、同18日の楽天戦(横浜)で4回KOされてプロ初の2軍落ちした。1か月の再調整を経て、1軍復帰3試合目でようやく辿り着いた復活勝利。その重みは、格別なものがあった。

「不甲斐ないピッチングが続いていたけど、このハマスタでなんとか勝つんだと、強い気持ちを持って臨んだ。いろんな人に助けられて、抑えることができた」

 お立ち台で実感を込めながら話した今永の顔は、2軍暮らしの苦労を示すように真っ黒に日焼けしていた。

■グラブに刺繍した「逆境こそ、覚醒のとき」

「逆境」を経て、強くなる――。それが、今永昇太という男なのかもしれない。象徴的なことが、座右の銘に挙げる「逆境こそ、覚醒のとき」という言葉だ。北筑高時代に野球部の恩師から言われたフレーズという。

 怪我やスランプなど「逆境」を経験し、それを乗り越えるために努力し、成長することが「覚醒」の原動力となる。そんな意味が込められた言葉を駒大時代からグラブに刺繍し、常に支えにしてきた。

 北筑高時代は全国的には無名な存在。高3夏は福岡大会4回戦で敗退し、甲子園はテレビで見るだけだった。駒大に進むと素質が開花し、一気にプロから注目される逸材となったが、進路を決断する上でもっとも大事な4年春に左肩を故障。1年間、リーグ戦では勝ち星を手にすることなく、プロに進まざるを得なかった。

 プロに入っても、苦難は続いた。開幕から毎試合好投を続けながら、打線の援護が5試合33イニングでわずか2点と極端に少なかった。それでも腐ることなく、6試合目にプロ初勝利を挙げると、そこから破竹の4連勝。先発投手として自信を深める結果となった。

■テレビで見ていた同学年のエリート選手と新人王争いへ

 そして、今回も同様だった。勝てなかった時期の弱点を見直した。春先のように、持ち前のキレのある直球で「圧倒」できる強さに頼りすぎることなく、緩いカーブを交えながら「翻弄」する巧さを身に着け、投手として一段と成長した姿をマウンドで披露してみせた。

 そのステージごとに訪れる「逆境」にぶち当たりながら、ゆっくりと、でも着実に乗り越え、成長していく。それが、今永の野球選手として最も秀でた能力だと思わされる。高3夏、テレビ画面の中で甲子園制覇に沸いていた日大三・高山(現・阪神)ら、同学年のエリート選手とも、今や堂々と新人王争いを繰り広げている。

「これにほっとすることなく、ここから全部勝ちたい」と意気込んだ今永。この男なら、どんな「逆境」も乗り越えてエースへ「覚醒」し、DeNAを支える大黒柱となる日も遠くないかもしれない。