明治杯3日目には3年の野本州汰(スポ3=群馬・館林)と2年の須﨑結衣(スポ2=東京・安部学院)、安楽龍馬(スポ2=山梨・韮崎工)、米澤凌(スポ2=秋田商)の3人が初戦に、4年の宇井大和(スポ4=和歌山・新宮)が3位決定戦に臨んだ。須﨑は…

  明治杯3日目には3年の野本州汰(スポ3=群馬・館林)と2年の須﨑結衣(スポ2=東京・安部学院)、安楽龍馬(スポ2=山梨・韮崎工)、米澤凌(スポ2=秋田商)の3人が初戦に、4年の宇井大和(スポ4=和歌山・新宮)が3位決定戦に臨んだ。須﨑は準々決勝、準決勝を突破し、決勝へと駒を進めた。宇井は3位決定戦へ挑んだが、第2ピリオドで得点を突き放され敗北。表彰台に上がることは叶わなかった。野本、安楽、米澤は初戦敗退を喫し、悔しい結果に終わった。

 フリースタイル50キロ級に登場した須﨑。須﨑は昨年天皇杯を棄権したため、東京五輪代表枠を獲得するには今回の優勝はほぼ必須だ。しかしそんな大事な初戦の相手は驚くべきものだった。2018年天皇杯全日本選手権の王者であり、これまで熾烈な争いを繰り広げてきた宿敵、入江ゆき(自衛隊体育学校)。優勝候補が初戦からいきなり争うこととなった。第1ピリオドでは開始1分でバックポイントを奪い、2点差をつけて折り返す。第2ピリオドでは両選手の激しい組み手争いが繰り広げられる。そこで隙を突かれた須﨑は入江の素早いタックルを受け倒されてしまう。同点に追いつかれこのままだとラストポイントで負けてしまう須﨑、タイムリミットは刻一刻と迫ってくる。しかし、残り数秒の出来事だった。須﨑が入江の腰を掴み持ち上げ、マットに投げて4点を獲得。試合終了間際に勝利を決めてみせた。ライバル入江との接戦を勝ち取った須﨑は、試合終了のブザーが鳴ると大きなガッツポーズを掲げた。須﨑は「ここで負けられない、五輪には私が行くんだっていう東京五輪への強い思いが最後逆転して勝つことができた要因だと思います」と試合後語った。須﨑のこの気持ちの強さが大逆転を生むことに繋がった。
 続く準決勝の相手は、天皇杯3位の五十嵐未帆(NSSU KASHIWA)。第1ピリオドから腰を低くし相手の足元を狙い続け、2度相手のパッシブを誘い出し得点。バックポイントも決め3点差をつける。しかし、第1ピリオド終了間際、五十嵐に足を掴まれ失点。1点差で第2ピリオドを迎えた。終始互いに素早い動きで相手に足元を捉えさせない。相手を倒しても技を決めさせてもらえない展開が続く。試合時間残り1分須﨑が仕掛ける。相手の膝を捉え横に倒すとそのまま腰を掴んでのしかかりバックポイントを獲得。結果5−2で決勝へと駒を進めた。


初戦の相手となった因縁の相手・入江を下しガッツポーズを決める須﨑

 宇井はグレコローマンスタイル67キロ級3位決定戦へ臨んだ。開始から細かく手足を動かして相手を攻めていきパッシブを誘って1点を獲得。その後場外に投げてさらに1点と、序盤から順調に得点を重ねる。しかし、折り返し間際に相手にバックポイントをとられ、同点に終わる。第2ピリオドでも相手を動かして簡単に攻めさせないようにするも、一瞬の隙を突かれ失点。残り15秒で得点するも巻き返せず、2−5と表彰台に立つことはならなかった。宇井は今まで明治杯はベスト8であったが、今回初めて準決勝、3位決定戦に到達した。「今まで目の前の表彰台に上るチャンスがなかったので、このチャンスをものにして、最後の明治杯を良いかたちで終わらせたいですね」と準決勝後語っていた宇井。4年生として最後の明治杯を表彰台に上がって終わりたかったが、果たすことはできなかった。

 フリースタイル65キロ級に出場した安楽は、5月に東日本学生リーグ戦で戦い、接戦で敗北した谷山拓磨(拓大)と対戦。前回は苦汁を舐めたが、今回個人戦で雪辱を果たしたい。しかし、開始から思うように攻めることができず3度相手にパッシブを献上してしまう。バックポイントで同点に追いつくも場外に2度投げられ万事休す。3−4とまたも接戦で敗北を喫した。続いてグレコローマンスタイル72キロ級で登場した野本だったが、終始相手ペースで攻めに転じることができず、第1ピリオドで0−8とテクニカルフォール負けとなった。フリースタイル70キロ級に出場したのは2年生となってから公式戦負けなしと好調な米澤。相手は天皇杯ベスト8の諏訪間新之亮(国士舘大)。試合は、両選手開始から互いに守りに入りパッシブをそれぞれ獲得。残り34秒の時点で再びパッシブでもう1点獲得しこのまま逃げ切れるだろうと思われた。しかし、残り10秒で場外に押し出され試合終了。2−2と同点に終わったが、ビックポイントの差により優勢負け。攻め続けられていただけに惜しい試合となった。試合終了後米澤はマットに倒れて拳を叩きつけ、悔しさをあらわにした。


接戦で敗れ肩を落とす安楽

 見事決勝へ進出した須﨑の相手はリオデジャネイロ五輪金メダリストの登坂絵莉(東新住建)。この戦いの勝者が世界選手権代表の座を争う世界選手権プレーオフへの参加権を手にする。すでに昨年の天皇杯で優勝を果たした入江はプレーオフの出場が決定しており、須﨑か登坂のどちらかが来月のプレーオフで入江と争うこととなる。来年行われる東京五輪の代表に選ばれるにはまず世界選手権への出場をしないとほぼチャンスはなくなる。つまり、この一戦は確実に勝たなければならない。しかし、須﨑と登坂はこれまで戦ったことがなく互いに相手のデータが少ない状態。このような状況で経験豊富な登坂が強みを出してくる可能性は高い。強敵相手に優勝を掴み取ることができるか。「東京五輪には絶対私が行くんだという強い気持ちを持って、勝つ執念を全面に出して必ず優勝します」と意気込む須﨑。「気持ちの強さと執念深さ」でこの大事な一戦に勝利したい。緊張の決勝戦がついに始まる。


須﨑の決勝の相手は初対戦となるリオ五輪金メダリストの登坂

(記事 北﨑麗、写真 林大貴、涌井統矢)

コメント

須﨑優衣(スポ2=東京・安部学院)

――決勝進出という結果について、率直にどう捉えていますか

あと一つなので、しっかり気を引き締めて集中して、東京五輪に行くためにあした必ず勝って優勝したいと思います。

――初戦が入江選手との対戦となりました。組み合わせを見た時はどう感じましたか

世界選手権の時も初戦が第一シードの選手だったので、自分に流れが来ているとプラスに考えて。もう勝つしかないので、そのために思いっきりやり切ろうと思いました。

――勝因を挙げるとすれば

勝因としては、「ここで負けられない、五輪には私が行くんだ」っていう東京五輪への強い思いが最後逆転して勝つことができた要因だと思います。

――展開としては最後に逆転しようという思惑だったのでしょうか

いや、取られてからはずっと得点を狙い続けていましたね。でもなかなか距離が詰められなくて。それで最後もう行くしかないという感じでした。

――入江選手も守りに入っていましたが

執念ですね。本当に「ゆいぴー頑張れ!」っていう応援が聞こえて、それが本当に力になりましたね。ここで負けられない、東京五輪を諦めたくない、絶対に私が行くっていう強い気持ちがあの逆転を生んだと思います。

――クイーンズカップでは本調子でなかったとおっしゃっていました。明治杯まではどのような意識で取り組んでいましたか

クイーンズカップで悔しい気持ちもしましたし、半年前の天皇杯はけがで出られなくて。ここに来るまでの色々な想いを乗せて、きょう絶対東京五輪に出るために絶対に優勝しようと臨みました。

――コンディションの方はいかがですか

体重調整も今回は順調にいって、体はすごく良い感じですね。

――五十嵐選手との準決勝を振り返って

失点はしてしまったんですけど、自分の攻めでポイントを取って勝てたことはすごく大きかったです。反省点はしっかりあしたに生かして、良かったところはそのまま伸ばして、優勝して笑顔で終わりたいと思います。

――反省点として挙げられる部分は

足を触らせて、失点をしてしまったところですね。そこはしっかりと修正してあしたに臨みたいと思います。

――決勝で戦う登坂選手とは初対戦となります

直接対決は初めてなので、あした対戦できることに感謝して、その中でも必ず私が勝って、優勝してプレーオフにつなげたいと思います。

――全日本の合宿などでスパーリングをする機会もあったと思いますが、印象としては

試合と練習では違うと思うので、本当に集中して、勝つんだという気持ちを持って頑張ります。

――改めて、あすの決勝への意気込みをお願いします

東京五輪には絶対私が行くんだという強い気持ちを持って、勝つ執念を全面に出して、必ず優勝します。たくさん応援してくれる人がいるので、優勝する姿を見せて恩返しをしたいと思います。