6月8日に行われた全日本ラリー選手権第5戦MONTRE 2019は、初日のSS10までを終えてスバルWRX STIの新井敏弘/田中直哉がトップを快走中。2番手には同じくスバルWRX STIの鎌田卓麻/鈴木裕、3番手には三菱ランサーエボリュー…

6月8日に行われた全日本ラリー選手権第5戦MONTRE 2019は、初日のSS10までを終えてスバルWRX STIの新井敏弘/田中直哉がトップを快走中。2番手には同じくスバルWRX STIの鎌田卓麻/鈴木裕、3番手には三菱ランサーエボリューションXの奴田原文雄/佐藤忠宜がつけている。

ラリーは群馬県嬬恋村のパルコールつま恋リゾートを拠点に、全18SSで行われる。グラベルラリーではあるものの、全SS距離の3割近くがターマックであり、路面グリップの変化やタイヤマネージメントへの対応力も試される一戦だ。初のAPRC併催となった今大会では、従来使ってきた大前須坂グラベル、四阿、群馬坂、峰の原といったSSに加え、『松代(MATSUSHIRO)』を新たなステージとして導入している。岩と泥にまみれた新ステージは、レッキの時点から多くのドライバーから「最大の難所」という声が上がっていた。競技初日はSS1〜10までの10SS。昨晩まで降っていた雨は上がり、曇り空のもと各車SSへと出発していった。





JN1クラスは序盤のSS1、SS2を新井敏弘が連取し、主導権を握る展開に。新井敏弘は新ステージのSS4松代でベストタイムをマーク。ラフなコースで後続に大きな差をつけることに成功した。さらにSS6、SS9も制する強さを見せ、SS10までを終えて2番手の鎌田卓麻に21.6秒差をつけて初日を終えている。鎌田はSS4を攻めきれず一時総合5番手に後退するも、その後は安定した好タイムを重ねポジションアップし、レグ1を終えた時点で2番手にまで挽回。3番手は奴田原。タイヤ選択のミスによりSS10で遅れた新井大輝/小坂典嵩を逆転し、僅差ながら表彰台圏内に入った。

新井は、「トップで帰ってこられましたね。(SS7が全車スルー走行となり)松代をやるかやらないかで大きく変わってきますね。あのラフなステージでは、トップにいてもひとつのミスやバーストでまったく関係なくなりますから。午後の峰の原で少しミスしてしまいましたが、あとは良かったと思います」と手応えを感じている様子でコメントを残している。





JN2のトップは眞貝知志/安藤裕一(TGR Vitz GRMN Rally)。2番手にはグラベルラリーを得意とする上原淳/漆戸あゆみ(ホンダ・シビック・タイプR)、3番手にはトヨタ・ヴィッツGRMNの中村英一/大矢啓太が入っている。ラリー序盤にリードを築いたのは上原。SS4松代では中村がベストタイムをマークして、一気にクラス首位に躍り出た。しかしターマックステージのSS5峰の原に入ると、眞貝が本領を発揮。このSS2番手タイムの上原に39.1秒差をつけるベストタイムでクラス首位の座を奪う。眞貝は2度目の峰の原(SS8)でもベストタイムをマーク、この日最後のSS10も制して、2番手の上原に55.0秒ものマージンを築くことに成功している。

眞貝は「松代の2回目(SS7)がスルーになってくれたので、クルマをセーブするという意味では良かったと思います。明日はこれまでの貯金を使いながら、しっかり走りたいです。ラフなステージもありますし、とにかくここを無事に切り抜けないと、どうにもならないので……。マシンは足まわりを変更しながら、少しずつ方向性が見えてきています」と語っている。





トヨタ86勢が上位を争うJN3クラスは、曽根崇仁/木村裕介が首位。2番手には山口清司/澤田耕一、3番手に山本悠太/山本磨美というトップ3となった。ラリー序盤は山本がリードするも、SS4松代で大きくペースダウン。パンクこそなかったものの、リタイアを警戒するあまりリズムをつかみ切れなかった。このSS4でベストタイムをマークした曽根が逆転してクラストップに立ち、その後も首位を守り続けることに成功。初日を終えて、曽根の16.3秒後方に2番手山口、その1.0秒後方に3番手山本がつけるという僅差の展開となった。

「松代の2本目がなくなったのは、クルマへのダメージを考えると良かったですね。あとは無理せず、マージンを取って走りました。明日に備えて、もう一度作戦を練って、トップでゴールできるように頑張ります」と曽根はここまでの戦いを振り返った。





スズキ・スイフトスポーツやホンダ・シビック勢が上位を占めるJN4クラス。トップは関根正人/草加浩平、2番手には須藤浩志/新井正和と、スイフトスポーツ勢がスピードを見せる。3番手は香川秀樹/松浦俊朗のシビック・タイプR。ラリー序盤は関根と、ここまで連勝を挙げている高橋悟史/古川智崇(スイフトスポーツ)が首位を争うが、SS4で高橋が前走車の影響によりコース上を現れた岩にヒットしてリタイア。この時点でスイフトスポーツの古川寛/大久保叡がトップに立つが、続くSS5でベストタイムを刻んだ関根が首位に返り咲いて、リードを拡大した。

関根は「SS3で余計なスピンをしましたが、午後からは順調にリードを広げることができました。明日は余裕をもってラリーを戦えるはずです。マシンは1日労って走ることができました」と笑顔でコメントしている。





JN5クラスは岡田孝一/小林剛(マツダ・デミオ)がトップ。2番手には小川剛/佐々木裕一(ホンダ・フィット)、3番手は石川昌平/竹藪英樹(トヨタ・ヴィッツ)という順位となっている。今季ここまで天野智之が連勝を重ねてきたが、今回ついにそれが途絶えることとなった。多くのドライバーが警戒していたSS4松代で岩にヒット、競技続行を諦めざるを得なくなってしまった。これでトップに立ったのは石川だが、続くSS5峰の原では、岡田がベストタイムで一気にクラス首位に浮上。岡田はSS8でもベストタイムをマークし、首位で初日を終えることに成功している。

岡田は「マシンにも問題なかったですし、トラブルもなく、悪くない走りができています。全体的にはいい1日になりました。天野選手がいないのは残念ですが、このまま1位が獲れるように頑張ります」とこの日の走りについて語った。





JN6クラスは大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)が大きくリード。2番手にはいとうりな/大倉瞳(トヨタ・ヴィッツCVT)、3番手に伊藤隆晃/大高徹也(日産ノートe-POWER NISMO S)というオーダーとなっている。サミーSSやスポーツランド信州のようなショートステージではモーターの特性を活かした伊藤がベストタイムを獲るが、通常の林道では大倉がベストタイムを連発し、大きくリードを拡大した。

「全然乗れていないですね。やはりグラベルが今シーズン初なので、クルマの動かし方がまだ良く分かっていない状態です」と、午前中は慎重なコメントを残していた大倉。この日の走行を終えて、「ロングステージが2本走れなかったので、不完全燃焼です。もう少しグラベル走りたかったですね。マシンは良くなっているんですが、特に短いステージではe-POWERにやられてしまっているので、ローギヤが欲しいですね」と初日を振り返っている。

ラリー2日目はSS11〜SS18の計8SS。初日に多くのドライバーが警戒した松代のステージは逆走で使われるため、明日もドラマのような展開が起きる可能性があり、目の離せないラリーとなりそうだ。

モントレー2019 全日本ラリー選手権 SS10終了時点結果
1. 新井敏弘/田中直哉 スバル WRX-STI JN1 52:13.9
2. 鎌田 卓麻/鈴木 裕 スバル WRX-STI JN1 +21.6
3. 奴田原文雄/佐藤忠宜 三菱ランサーエボリューション JN1 +24.7

9. 眞貝知志/安藤裕一 トヨタ・ヴィッツGRMN JN2 +5:55.4
10. 曽根崇仁/木村裕介 トヨタ86 JN3 +6:11.9
11. 関根正人/草加浩平 スズキ・スイフト JN4 +6:26.0
20. 岡田孝一/小林 剛 マツダ・デミオ JN5 +8:03.7
21. 大倉 聡/豊田耕司 トヨタ・ヴィッツ JN6 +8:07.5