“メグ・カナ”ブームで、女子バレーを大ブレイクさせたうちのひとり、栗原恵が、2018-2019シーズンにプレーしたJTマーヴェラスを5月末に退団する。4月26日に更新されたチームの公式サイトで、栗原は「今シーズン…

“メグ・カナ”ブームで、女子バレーを大ブレイクさせたうちのひとり、栗原恵が、2018-2019シーズンにプレーしたJTマーヴェラスを5月末に退団する。4月26日に更新されたチームの公式サイトで、栗原は「今シーズンをもちましてチームを離れる決断をしました。前向きな決断として受け止めていただけましたら幸いです」とコメントした。

 東レアローズに敗れた、5月5日の黒鷲旗全日本男女選抜バレーボール大会準決勝が、「JTでのメグ」の最後の姿となった。試合後には、チームメイトに胴上げされて涙を浮かべる場面も。この胴上げは予想外のことだったらしく、栗原は「驚きました」と口にしつつも、その表情は晴れやかだった。




5月5日の試合後、チームメイトと抱き合って涙を流した栗原

 その後の記者会見では、公式サイトで発表した「前向きな決断」の意味を問われた。しかし栗原は、再び目に涙を浮かべながら「言葉どおりに受け止めていただければ」と追求をかわし、次のように続けた。

「退団を決める前に吉原(知子)監督と長く面談させていただき、『もったいないんじゃないか』など、ありがたい言葉をたくさんいただきました。それでも自分は、今後どうしていくかを考えた上での前向きな決断として、ひとまず『退団』の発表をさせていただいた。深い意味はないのですが、マイナスに捉えてもらいたくないなという意味で『前向きな退団』という表現をしました。今後については、またあらためてお話しできればと思います」

「JTでの1年を振り返って」という質問にも「まだ5月31日までマーヴェラスの一員ですし、振り返ることはできません」と回答。それでも、「そこをなんとか」という報道陣の声に、噛みしめるように言葉をつないでいった。

「移籍を何度も経験させていただき、入って1年目は難しい部分があるということは、今までの経験上思っていました。ですが、みんなのフランクな雰囲気に早く馴染むことができたので、感謝しています。

 リーグを通して、あまりコートに立つことができませんでしたが、 練習からストイックに頑張るみんなの姿を練習から一緒に見てきましたし、『勝ちたい』という一体感が強いチームだと思っていました。 自分もストイックなチームメイトに影響されて、年齢も関係なく自分を追い込み、試合に向けていい準備をしようというところを、みんなから学ぶことができました。それを最後まで貫くことができたと思います」

 JTに入団する前に、4年間プレーした日立リヴァーレを退団した際は、引退を考えたという。しばらくバレーから離れ、ヨガなど競技とは別のところに興味を持ちはじめていたが、それを翻意させたのが吉原監督だった。2004年のアテネ五輪の際には全日本女子の主将を務め、Vリーグではパイオニアレッドウィングスでも共に戦った吉原監督は、熱く栗原を勧誘した。

 熟考の末、その熱意に応えることを決意した栗原。5月5日の会見に同席した吉原監督は、「まだ本人の口から引退とは言っていないので、頑張ってもらいたいという気持ちはあります。年齢を重ねても本当にひたむきで、何に対しても真っ直ぐで一生懸命に取り組む、後輩のいい見本になれるような選手。チームとしても栗原という存在は貴重だったと思います」とチームへの貢献を称えた。

 5月12日に開催されたJTのファン感謝祭でも、栗原の今後についての明確な発表は避けられた。最後の挨拶で、他の選手たちと同じように出身高校のユニフォームを着用して登場し、「JTのメンバーとスタッフに恵まれて充実したシーズンを過ごせました」と明るく感謝の意を表しただけだった。

 これまで栗原は、中学時代に地元の学校に入学後、姫路の強豪校から誘われて転校したのを始め、何度もチームを移っている。社会人として初めて入団したチームはNECレッドロケッツだったが、わずか1年で退社し、パイオニアレッドウィングスへと移籍。その後はロシア1部のディナモ・カザン、岡山シーガルズ、日立リヴァーレ、そしてJTへ。

 海外のプロ選手であれば、毎年のようにチームを変えることはそんなに珍しいことではないが、日本人選手では極めて稀だ。果たして「次」はあるのか。それとも、ついに現役生活に終止符を打つのか。栗原の「正式な発表」に注目が集まる。