取材=神高尚 写真=Getty ImagesターナーとCJ・マッカラムがチームを窮地から救うタフな戦いを繰り返してきた中でお互いの手の内も分かりきっているGAME7は、ブレイザーズが26本中4本、ナゲッツが19本中2本しか3ポイントシュート…

取材=神高尚 写真=Getty Images

ターナーとCJ・マッカラムがチームを窮地から救う

タフな戦いを繰り返してきた中でお互いの手の内も分かりきっているGAME7は、ブレイザーズが26本中4本、ナゲッツが19本中2本しか3ポイントシュートが決まらない現代NBAらしくない展開になりました。

前半39点しか奪えず、最大17点差をつけられる劣勢を強いられたブレイザーズは、一つの明確な決断を下します。それはディフェンスの要でありながらポール・ミルサップに苦労していたアル・フォンク・アミヌを起用しないこと。オフェンスでもシュートが決まらないアミヌなので、得点が取れない中での決断でした。

しかし、代役となったエバン・ターナーもまたGAME5でミルサップのポストアップに全く抵抗できず、そしてオフェンスでもアウトサイドシュートがなく、このシリーズはフィールドゴール成功率25%で平均0.7点しか取れておらず、疑問の残る起用でした。

ところが、スモールラインナップになったブレイザーズに対して、ニコラ・ヨキッチとミルサップがゴール下に攻め込みますが、そのたびにターナーが素早く囲い込んでシュートを落とさせます。後半は2人でフィールドゴール22本中6本成功とゴール下で自由を与えませんでした。

加えてオフェンスでも強引なドライブからファウルを引き出し、後半だけで12点を奪います。6試合で4点しか取れていなかったターナーの予想外の大活躍は、お互いにシュートが決まらない展開の中で際立ちました。

また、ターナーはオフェンスリバウンドにも積極的に絡んで奪い取ると、常に密着マークを受けてシュートを打つことすら難しかったデイミアン・リラードが一瞬空いたのを見逃さずパスを出し、貴重な3ポイントシュートをアシストしました。

今シーズンのブレイザーズはシューターを増やし、ターナーがポイントガード的に振舞うことでシュート力を生かしたオフェンスの構築を試み、それが上手くいかなかった経緯があります。それがこの緊迫したGAME7で成功したのは、時間をかけてチームを作ってきた中での引き出しの多さだったといえます。

そして試合を決めたのはCJ・マッカラムです。リラードが13点と抑え込まれた試合で37点を奪い、チームを逆転に導きました。全体的に3ポイントシュートが決まらない中でマッカラムはアウトサイドから狙うのではなく、自ら切れ込んでのシュートを次々と沈め、残り12秒ではアイソレーションからステップバックミドルで勝負を決めたのです。

シューターのマッカラムですが、昨シーズンはリラードがベンチにいる時間は自らボールを持ってプレーを構築する機会を増やしていました。それでもフィールドゴール成功率が落ち、必ずしも効果的とは言い難いプレーになっていました。それでもリラードが自由を奪われたこの試合で、その経験を生かしたプレーを存分に披露しました。

ナゲッツは若手中心に切り替えたこの3年間、素晴らしいチームワークとディフェンスを身に着けて勝ち上がってきましたが、より長い時間をかけてチームを成熟させてきたブレイザーズが最後に差を付けたと言えます。リラードが止められても、選手構成を変更して違う手段でゲームを構築する、しかもそれをGAME7でやってのける奥深さがありました。

シーズン前を振り返ると強豪揃いの西カンファレンスにレブロン・ジェームスが参戦し、ナゲッツだけでなくブレイザーズもプレーオフ圏外との予想もありました。しかし、両チームともにシーズンを上位シードで終えると、プレーオフでも粘り強いチームプレーを披露してくれました。たとえシュートが決まらない試合でも簡単に引き下がることなく、違う手段で得点していった両チームによるタフなシリーズは、互角ではありましたが「チームとしての」経験値で少しだけ上回ったことでブレイザーズが勝利をつかみ取りました。