6日、中国・呉江でのボルダリングW杯2019第4戦を戦った日本代表が帰国。到着した羽田空港で取材に応じた。

 重慶から続いた中国2連戦では、楢崎智亜が2位、1位、野口啓代が連続2位に入ると、呉江で世界選手権王者の原田海が自身初のW杯表彰台となる2位、今シーズンからW杯に参戦している15歳の森秋彩が出場3戦目にして3位に食い込む活躍をみせた。

 楢崎が今シーズン安定の要因に「考えるよりも先に、感じて登ること」への意識を挙げ、「優勝できるだけの準備はしてきたつもりだし、力もあると感じていた」と頼もしさをみせた一方、森は「信じられないことが起きすぎて、夢なのかと思った」と、対照的に初々しいコメントを残した。

楢崎智亜コメント
― 優勝から1日経っての感想は?
「スイス(マイリンゲン)も重慶も2位で終わっていたので、今回勝ちきることができて嬉しいですね。優勝できるだけの準備はしてきたつもりだし、力もあると感じていたので、それを実現できました。今年はかなりいい感じできていて、予選、準決勝、決勝と全ラウンド通してまだ4位以下を取っていないので、本当に安定してきたなと思っています」

― 以前にも増して勢いよく登っていく姿が印象的でした。
「今シーズンは、より本能的というか、自分がやってきたものを信じてトライするようにしています。考えながら登るというよりも、感じながら登る。最近、コンペは気持ちが7割ぐらいだと考えています。トップ選手にはフィジカルの差はほとんどなくて、気持ちの作り方が重要。そこを意識するようになってから、安定してきていると感じています」

― スピードの調子が上がらないように見えますが。
「直前にムーブを何か所か変えていました。新しいムーブに変えれば速くなることはパートごとの検証で分かっていたんですけど、動きをつなげると中々まとまらなくて、その状態で大会に入ってしまったので上手くいかなかったですね。今月のコンバインドジャパンカップ(CJC)までには新しいムーブを固められるようにしていきたいです」


原田海コメント
― W杯2位の感想は。
「W杯で初めての表彰台は素直に嬉しいです。今シーズン、体調は完璧な状態で臨んでいましたが、成績が出ずに悩んだ時期もありました。今回は上手く噛み合ったと思います」

― それはメンタルのアプローチがあった?それとも課題の相性が良かった?
「課題の相性が良かったのはもちろんあるんですけど、今回は世界選手権の時に似たような、冷静なメンタルで臨んだ結果が良かったと思います。自分の中で盛り上げすぎてもいけない、微妙なラインで難しいんですけど。僕はどんどん思っていることを潰して良い方法を見つけていくスタイルなので、今シーズンは世界選手権の時を引きずっていてもと思い、とりあえず試してみようとどの大会も違うメンタルで挑んでいました。それで不安定な状態だったんですけど、今回の臨み方が一番いいかなって分かった感じですね」

― 第3課題では認められなかった完登の判定が覆り、一転して認められました。
「僕的には絶対にいけたと思って、降りたらジャッジも手を上げていたんですけど、後からダメって言われて。何で?って感じでした。しかもその後登れなかったので、かなりイライラしていましたが、裏で完登が認められたと聞いて、平静に戻ることができました。(それが最終課題の一撃につながった?)どちらにしろ切り替えてはいたので、それはあまり関係なかったですね」

― 今後の抱負を教えてください。
「第5戦のミュンヘン大会はスキップして、CJCに出場します。そこで世界選手権への切符を手にしたいです」


野口啓代コメント
― 今の心境を教えてください。
「優勝はもちろん狙っていたので悔しい気持ちはあるんですが、今回すごく良いパフォーマンスができたなと思っているので、いい大会になりました」

― またもヤンヤ・ガンブレットに優勝をさらわれました。
「今シーズンはヤンヤが特に強くて、毎回彼女に勝てず2位なので、すごい高いハードルだと感じています。ボルダーだけじゃなくて、リードもすごい強い選手ですし、スピードも毎回タイムを更新していて、3種目において1番の強敵というか、現時点ではオリンピックに向けて1番強い女性クライマーだと思っています。今年の世界選手権や来年のオリンピックも、ヤンヤに勝てるかどうかになってくると思うので、長期の計画で、ヤンヤよりも速いスピードで成長していくしかないですね」

― 呉江では第2課題が登れず、ガンブレットにリードを許しました。
「後からヤンヤの映像を見て知ったんですけど、彼女は私よりも早いタイミングで足を上げていました。持っているホールドがすごい悪かったので、私は足が下の状態で進んでしまい苦労したんですけど、ヤンヤみたいにもう少し早く足を上げてから動いていたら違ったかなって感じたので、登っている最中での現場合わせというか、そういうところの差が出たと思います」

― スピードでは、今までなかった9秒台を2大会続けて計測されました。
「重慶のW杯で自己ベストの9秒694を出すことができて、トレーニングの成果を出せました。これまでは何回も下を向いて、足を確認する動作が必要で、自信を持って登ることができなかったんですけど、2月のスピードジャパンカップ(SJC)後から地元・茨城の『たつのこアリーナ』にスピード壁ができて週に1回は練習できるようになりました。そのおかげで足を見ないでも進めたり、ホールドの位置を体で覚えられるようになったことが大きいですね。またSJC王者の池田雄大選手にコーチに付いてもらい、練習の質も高まっています」

― (同じ茨城県出身の)森選手と一緒に表彰台に立ちました。
「正直びっくりしました。今シーズンはW杯最初の年ということもあって、予選通過が厳しそうだったんですけど、今回準決勝に初めて残れて、決勝に進んで、表彰台にも乗って。チャンスを全部モノにしていった印象です。本人もすごい喜んでいて、秋彩ちゃんはもともとリードが得意な選手なので、自信を持った状態でリードのW杯にも参加できるんじゃないかなって思います」


森秋彩コメント
― 3位の感想は?
「準決勝に残ることが目標で、決勝や表彰台に上がることは全然想像していなかったのでびっくりしています。スイス、重慶と悔しい思いをしていたので、今回は絶対に準決勝に残ってやるという思いでした。1日に沢山登ることに関しては、練習でも慣れているので、そこはあまり大変ではなかったんですけど、信じられないことが起こりすぎて、パニックというか、夢なのかなと思いました」

― 憧れの選手たちと決勝の舞台で競いました。
「スイスでヤンヤと写真を撮ってもらったんですけど、まさか表彰台で一緒に写真を撮るとは思っていなくて(笑)。あとは同じ課題を登ることによって、映像で見るよりも強さが分かったので、すごい良い経験になりました。(フラワーセレモニーでは)今までハグされたことがなかったから、どうしていいか分からなくて(笑)。棒立ちになってしまい恥ずかしかったです」

― W杯出場で得たものは?
「国内大会はピリピリしているけど、W杯はみんな楽しんでいる感じで、どんなにレベルが上がっても、楽しむことが一番大事だとわかりました。それで今回は緊張もしませんでしたが、初めての決勝だからこそ、この成績が残せたのかなとも思います。それと、日本は(ホールド間の)距離が近くて手が悪いんですけど、海外は逆で、距離が遠くて日本より手は良いと感じています」

― 登れなかった第2課題、完登して逆転での3位となった第4課題を振り返って。
「第2課題は体全体のパワーとか、身長も少し関係しているのかなと思います。決勝に残っているメンバーを見ているとみんな体つきとか身長とか、アスリートっぽいというか。貫禄があって自分はまだまだだなと感じました。第4課題は飛びつく動きだったんですけど、そういう動きが元々苦手で、沢山練習してきたので、その成果が出せたと思います。昔は、苦手な課題が出てきた瞬間に無理だと思って諦めちゃっていたんですけど、今回はあれだけ練習してきたから出来るはずだと思って、1分前になっても諦めずに登れた課題がいくつかありました。そういう気持ちの変化も出てきたので、そこは大きいと思います」

― W杯3戦に出てみて、世界での立ち位置はどう感じている?
「今までは何度か大会に出ていれば自分の立ち位置が分かると思っていたんですけど、実際に出てみると、課題の傾向によって全然順位が違いました。1戦1戦で自分の強さがどれくらいかっていうのは決まるものじゃなくて、その時の自分に合っている課題なのか、合わなかった課題なのか。でも、その中で世界にまったく敵わないわけではなくて、少しは活躍できたかなと思えたのは良かったです」


野中生萌コメント
― 今シーズン初出場で4位となりました。
「かなり久しぶりのW杯で、最初は緊張していて登りもガチガチで、中々自分の思うようなクライミングができなかったんですけど、準決勝2位通過して、ファイナルにも行けて、悔しい気持ちももちろんありますが、とても嬉しく思っています」

― 負傷した左肩の状態は?
「まだ痛みはあるんですけど、確実に良くなってきています。ファイナルまでいけたのも、休んでいた期間の成長かなと思います。ただ、まだ肩に対する不安感は常にあるので、そこを克服しない限りは思いきった動作ができないと思います。クライミングでは肩を使うシーンがたくさんあるので、今大会でも、様々な場面で肩を使えない難しさを感じました」

― 怪我をしてから、気持ちの落ち込みはあった?
「右肩に続けてというのと、ボルダリングジャパンカップでも優勝することができて、調子も上がって今シーズンどうなるか楽しみというところでの怪我だったので、相当落ち込みましたね。安静が必要だったので、2ヶ月くらい壁から離れていました。積極的に外に出て人と話した方が良いと言われていたので、なるべくそうしたりして過ごしていました」

― 今後の抱負は?
「次はCJCがあるので、そこでしっかり決勝に残って、世界選手権の出場権を獲得したいと思います」

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編集部