写真提供=共同通信■2017年以来2度目の10勝一番乗り 2019年のパ・リーグで、最初に飛び出したのは昨季最下位だった楽天だった。開幕戦は1点差で敗れたが、2戦目から5連勝を飾ると、その後も白星を先行させ、4月17日の西武戦に勝利してリー…

写真提供=共同通信

■2017年以来2度目の10勝一番乗り

 2019年のパ・リーグで、最初に飛び出したのは昨季最下位だった楽天だった。開幕戦は1点差で敗れたが、2戦目から5連勝を飾ると、その後も白星を先行させ、4月17日の西武戦に勝利してリーグ10勝一番乗り(10勝5敗1分)。開幕7カード中5カードに勝ち越し、4月23日終了時点では20試合で13勝6敗1分の首位に立っていた。

 毎シーズン必ず報道などで目にする「10勝一番乗り」。たかが10勝ではあるが、単なる10勝ではない。過去10年の両リーグの10勝一番乗りの球団と最終順位(表1)を見ると、昨年の西武、広島が首位のままゴールテープを切ったように、計21球団中8球団が優勝を飾り、21球団中19球団がAクラス入りを果たしている。

 このデータを今季に当てはめると、好スタートを切った楽天の優勝確率は38パーセントで、CS進出確率は90パーセント。4月24日から5連敗を喫して順位を2位に下げたが、まだまだ勇気と希望を抱えた状態で令和の時代の戦いに挑むことができる。


■逆転勝利の数と取り戻した本拠地での強さ

 では、今年の楽天の強さはどこにあるのか。4月30日時点で、チーム打率.249はリーグ3位で、チーム防御率4.05は同4位と平凡。個人成績を見ても、打率3割以上をマークしているのは茂木栄五郎のみ。ウィーラーがリーグ4位タイの6本塁打、同3位の23打点をマークしているが、爆発的な活躍を見せている訳ではない。出塁率.381の「つなぎの4番」島内宏明に象徴されるように、チーム一丸となって得点を奪い、則本昂大、岸孝之の先発2枚看板が離脱する中、リリーフ陣がフル回転しながら粘り強い闘いで白星を重ねた。

 その粘り強さを象徴する一つが「逆転勝利」の数だ。今季ここまでの13勝中7勝が逆転勝ち。過去10年の年度別逆転勝利数(表2)を見ると、日本一となった2013年以来の逆転勝利数リーグ1位(4月30日時点)となっている。2014年以降は他球団と比べても逆転勝ちする試合が極端に少なかったが、今季は現時点で“ひと味違う”チームであることを見せ付けている。


 同時に本拠地での強さも取り戻した。昨季は本拠地で22勝50敗と大きく負け越し、ファンからブーイングを浴びて最下位に沈んだが、今季はここまで本拠地・楽天生命パークで開催された14試合で8勝6敗と勝ち越しに成功。5連敗を喫する前の4月23日時点では8勝3敗であり、この本拠地での強さが開幕ダッシュに繋がった。

 楽天の過去10年の本拠地成績(表3)を振り返ると、日本一に輝いた2013年は本拠地で勝率.600と圧倒的な強さを誇ったが、翌年から2年間は勝率5割を切り、昨季は勝率.306。まだ試合数が少ない段階ではあるが、今季の勝率.571は非常にポジティブな数字であることは間違いない。


■5連敗から再浮上するために

 5連敗で2位転落となったとは言え、4月を終えて13勝11敗1分という成績は悪くない。まずは連敗の原因を特定させ、再び上昇気流に乗りたい。

 今季のチーム打撃成績(表4)を見ると、楽天打線が5連敗中に不振に陥った訳ではないことは、チーム打率が.241から連敗中の5試合で打率.277に上昇していることからも分かる。ただ、得点圏打率が連敗前の.283から連敗中は.240へと下降しており、拙攻が目立つ。やはりチャンスでの一打が何よりも重要であり、それが勝敗に大きな影響を与えることになる。


 それ以上に問題なのが、投手陣だ。今季のチーム投手成績(表5)を見ると、5連敗中のチーム防御率が7.71と崩壊状態。特に気になるのが「四死球」と「得点圏被打率」。セオリー通り、無駄な走者を出さず、勝負所で粘れるかどうか。則本の復帰は早くても後半戦になる予定だが、岸は復帰間近という中で、まずは投手陣を立て直すことが先決だ。

 5月は26試合中、ホーム開催は10試合(盛岡、弘前の計2試合を含む)のみ。チーム全体として“つなぎ”のバッティングで高い出塁率をキープし、得点圏での勝負強さを取り戻すこと。そして総崩れの投手陣が、再び勇気を持ってマウンドに上り、味方打線の逆転劇まで粘りのピッチングを続けることができるか。イーグルス、下克上の戦いは、まだ始まったばかりだ。

※データは2019年4月29日時点

データ協力:データスタジアム株式会社
文=三和直樹