東邦の優勝で幕を閉じた平成最後のセンバツ。投打で活躍した石川昂弥(東邦)を筆頭に、1試合17奪三振の快投を演じた奥川恭伸(星稜)など、多くの逸材が甲子園を沸かせた。あらためて、今年のセンバツに出場したなかでベストナインを決めるとすれば誰になるのか? 甲子園を取材した記者に独断と偏見でセンバツのベストナインを選出してもらった。



9番打者ながら2回戦の高松商戦では2安打3打点の活躍を見せた市和歌山の壹岐有翔

■安倍昌彦氏

投手/岩本真之介(市和歌山)

捕手/内山壮真(星稜)

一塁手/桜井亨佑(習志野)

二塁手/宗山塁(広陵)

三塁手/小深田大地(履正社)

遊撃手/角田勇斗(習志野)

外野手/吉納翼(東邦)

外野手/来田涼斗(明石商)

外野手/壹岐有翔(市和歌山)

 おそらく投手だったら、総合力で奥川恭伸(星稜)、将来性なら及川雅貴(横浜)あたりが有力だろうが、個人的に魅力を感じたのが岩本真之介。

 最近、彼のようなフニャフニャした投手を見ると、ワクワクしてくる。今の柔軟性と、しなやかさと、球持ちのよさを維持しながら体ができてきたら、はたしてどんなボールを投げるんだろう…。高校1年の時に菊池雄星(花巻東→西武→マリナーズ)を初めて見た時のような”トキメキ”がある。

 ショートは候補者の宝庫だったが、フィールディングがいちばん頼りになりそうとの理由で習志野の角田勇斗を挙げたい。

 外野も逸材が揃ったが、藤原恭大(大阪桐蔭→ロッテ)のように走攻守においてプロ級の外野手になると予想して来田涼斗。また、村上宗隆(九州学院→ヤクルト)みたいにパワフルなスラッガーになる可能性を秘めた吉納翼も入れておきたい。

 捕手の内山壮真と二塁手の宗山塁のふたりは、本来は遊撃手だがあえてこのポジションで選出した。実際、内山は星稜中学時代に捕手として全国大会の経験があり、最上級生になれば”捕手転向”の構想があると聞いたことがある。内山の三遊間からの送球を見ると、捕手としてのプレーをぜひとも見てみたい。

 宗山の野球センスとバネがあれば、セカンドは難なくこなしてしまうだろう。宗山の最大の特長はスナップスロー。力強さと正確性を兼ね備えたスナップスローは高校生のレベルを遥かに凌駕している。ダブルプレーをたくさん奪えるセカンドがいれば、バッテリーにとってこれほど心強い存在はいない。

 今回のセンバツを見て、将来的にいちばん楽しみにしているのが壹岐有翔だ。センバツでは9番打者として出場したが、とてもじゃないが”9番打者”のバッティングではなかった。体を開かずに、バットのヘッドを走らせてセンター方向へ弾き返すバットコントロールとスイングスピードは秀逸。187センチ、83キロの大型選手なのに、俊敏性があって、ボディバランスもいい。本人の意欲次第では大変身の予感すら漂っている。



準々決勝の智弁和歌山戦で先頭打者&サヨナラ弾を放った明石商の来田涼斗

■楊順行氏

投手/奥川恭伸(星稜)

捕手/東妻純平(智弁和歌山)

一塁手/桜井亨佑(習志野)

二塁手/表悠斗(明豊)

三塁手/石川昂弥(東邦)

遊撃手/熊田任洋(東邦)

外野手/根本翔吾(習志野)

外野手/来田涼斗(明石商)

外野手/福岡大真(筑陽学園)

 投手は、初戦の履正社戦で自己最速の151キロをマークし、強豪相手に3安打完封、しかも17奪三振の快投を見せた奥川恭伸。大会ナンバーワンという評価にふさわしい投球だった。

 東妻純平が遊撃手から捕手に転向したのは高校入学後だが、捕手としてプロ野球を経験した中谷仁監督にみっちり叩き込まれ、高校を代表するキャッチャーへと成長した。初戦の熊本西戦ではホームランを放つなど、打つ方でも進化を遂げている。

 一塁は、星稜の奥川から2安打し、準決勝の明豊戦では同点の8回に値千金の勝ち越し本塁打を放った桜井亨佑。昨年秋の大会は背番号15で、決してチームの中心選手ではなかったが、試合を重ねるごとに存在感を発揮。バッティングもさることながら、守備でも好プレーを連発しチームを救った。

 トップバッターとして横浜戦で3安打2打点の活躍でチームに勢いをもたらした明豊の表悠斗をセカンドで選出。明豊は横浜のみならず、神宮大会の覇者・札幌大谷、龍谷大平安と次々と強豪校を破り、春夏通じて初の4強入り。主将としてもチームをまとめ上げた。

 三遊間は石川昂弥、熊田任洋の東邦コンビ。今大会、石川はエースナンバーを背負い、決勝では習志野相手に3安打完封の快投を演じたが、森田泰弘監督が「野手では世代ナンバーワン」と言うように野手として選出。

 熊田は東邦の4番として19打数8安打の活躍を見せ、驚くべきは5試合で三振わずか1というミート力の高さ。守備でも抜群の安定感を誇り、センターに抜けそうな打球を何度もアウトにして見せた。

 外野手は根本翔吾、来田涼斗、福岡大真の3人。根本は初戦の日章学園戦で3安打、明豊戦ではダブルスチールで本塁を陥れるなど、走攻守にわたってセンスのよさを見せつけた。

 来田は、なんといっても準々決勝の智弁和歌山戦の先頭打者&サヨナラ弾が印象深い。これは甲子園史上初めてのことだった。高校進学の際、48校から誘いがあったほどの逸材。まだ2年生で、これからの成長が楽しみな選手だ。

 福岡大真の父・真一郎さんは1994年夏、樟南のエースとして甲子園準優勝の経験を持つ。そのDNAを受け継ぐかのように、息子も甲子園で躍動。3試合すべてでヒットを放ち、2回戦の山梨学院戦では決勝タイムリー。江口祐司監督は「夏に向けては、福岡が中心になると思います」と語っていた。



堅実な守備でチームに貢献した筑陽学園のセカンド・江原佑哉

■田尻賢誉氏

投手/奥川恭伸(星稜)

捕手/山瀬慎之助(星稜)

一塁手/佐藤樹(智弁和歌山)

二塁手/江原佑哉(筑陽学園)

三塁手/石川昂弥(東邦)

遊撃手/大平裕人(札幌第一)

外野手/長畑海飛(龍谷大平安)

外野手/飛倉爽汰(高松商)

外野手/河合佑真(東邦)

「言い訳を最小限にするためです」

 これは、「なぜ準備をするのか?」という質問に答えたイチローの言葉だ。結果は自分でコントロールできないが、準備は自分次第でどうにでもなる。たとえ高い技術はなくても、やろうと思えば、自分の意識次第でどれだけでもできるのが準備だ。そこで、準備の意識が高かった選手を選んだ。

 投手は星稜・奥川恭伸。攻撃中、自らの打順が近いときはベンチ前のキャッチボールをエルボーガード、フットガードをつけて行っていた。捕手も星稜・山瀬慎之助。先攻だった履正社戦。山瀬は5番打者にもかかわらず、試合前のあいさつでヘルメットをかぶり、エルボーガード、フットガードをつけていた。さらに右足にはレガース(山瀬は右打者)。攻撃でも守備でも準備が遅れないようにしていた。

 一塁手は智弁和歌山の佐藤樹。雨の中で行なわれた啓新戦。グラウンドコンディションが悪いなか、内野手のワンバウンド送球を2度すくいあげた。ワンバウント捕球を磨くため、毎日跳ねやすいテニスボールを使って壁当てをやっていた成果だった。二塁手は筑陽学園の江原佑哉。東邦戦で2-6-3の併殺を狙った遊撃手の悪送球、捕手ゴロの捕手の悪送球のいずれも全力でカバーリングに走ってダイレクトでおさえた。

 三塁手は、今大会は投手として活躍した石川昴弥。逆球が少なかったのは三塁手のときからしっかりと送球していた結果だ。遊撃手は札幌第一の大平裕人。投手の一塁けん制時、全球二塁ベースにしっかりと入っていたのは大平一人だ。

 左翼手は龍谷大平安の長畑海飛。出場は初戦のみだが、走者が三塁にいると投手の投球1球ごとに全球三塁方向にカバーに動いていた。捕手が三塁に投げる構えをしないでも全球やっていたのは長畑だけだ。中堅手は高松商の飛倉爽汰。投手の投球で全球スタートしていた。コースや打者の力を見て、5メートル以上大きく動くこともあった。右翼手は東邦では中堅を守った河合佑真。捕手の一塁送球時など右側のカバーが必要な際、ほかのチームの右翼手と比べ、何十倍も走っていた。

 100の準備をして臨機応変に90を削ぎ落した人と、最初からたった10の準備しかしていなかった人とではまるで違う。準備をしていれば、たとえミスをしても後悔は少ない。自分で考え、工夫して準備をする。そんな高校球児が増えてほしい。



初戦の春日部共栄戦で13奪三振の好投を見せた高松商のエース・香川卓摩

■菊地高弘氏

投手/香川卓摩(高松商)

捕手/山瀬慎之助(星稜)

一塁手/黒澤孟朗(国士舘)

二塁手/足立駿(大分)

三塁手/石川昂弥(東邦)

遊撃手/角田勇斗(習志野)

外野手/布施心海(明豊)

外野手/来田涼斗(明石商)

外野手/野村健太(山梨学院)

 甲子園大会は1回戦が終わり、全チームが出揃ったタイミングでだいたい取材を終えることにしている。同業者から「スカウトみたいだね」とからかわれることもあるが、そんな格好のいいものではない。甲子園なんて最高の舞台で2試合以上も戦える選手たちが、うらやましくて見るのがつらくなるからだ。というわけで、初戦を見て強烈な印象を受けた選手を中心にピックアップさせてもらった。

 個人的に強く印象に残っているのは山瀬慎之助(星稜)だ。高校ナンバーワンの強肩もさることながら、今春は手首の故障が完治してパンチ力のある打撃でもアピールした。そしてセカンドの悪送球を一塁側ファウルグラウンドに滑り込みながら止めた「スライディング・バックアップ」に、この選手がいかに今大会乗っていたかが伝わってきた。エースの奥川恭伸は紛れもなく逸材だが、この山瀬がうまく引き立てていることも忘れてはならない。

 ショートに誰を選ぶかもっとも悩んだ。グラブを地面に這わせるようにして華麗にさばく武岡龍世(八戸学院光星)にはシートノック中から釘付けにされた。ただ、打撃面でインコース攻めに遭い、弱点を露呈したため見送り。西川晋太郎(智弁和歌山)は地味に見えてプレーひとつひとつの確度が高く、ふとした瞬間に井端弘和(元中日ほか)が重なることもあった。そんななか、イレギュラーバウンドを軽やかにさばき、大会を通じてラッキーボーイぶりを発揮した角田勇斗(習志野)を選出した。

 黒澤孟朗(国士舘)は柔道での骨折を経て、よくぞ復活したという意味を込めて選出。布施心海(明豊)の及川雅貴(横浜)を打ち砕いた高い打撃技術には度肝を抜かれた。野村健太(山梨学院)は2本の驚弾とキャラクター性に乾杯。

投手は悩んだ末、香川卓摩(高松商)に。身長165センチと小柄ながら、ストレートの強さを感じさせた。できるだけグラウンドに近づいて見てみたが、ボールに重量感があった。早熟に見えて、高校以上のカテゴリーでも活躍が期待できる投手だろう。