写真:森薗美咲/提供:TリーグTリーグのファーストシーズンを終えた森薗美咲(TOP名古屋)に、1番印象深かった試合について尋ねると、間髪入れずに「石川佳純選手との一戦ですね」と返ってきた。運命の一戦昨年の12月26日、森薗率いるTOP名古屋…

写真:森薗美咲/提供:Tリーグ

Tリーグのファーストシーズンを終えた森薗美咲(TOP名古屋)に、1番印象深かった試合について尋ねると、間髪入れずに「石川佳純選手との一戦ですね」と返ってきた。

運命の一戦

昨年の12月26日、森薗率いるTOP名古屋は、石川佳純を主力とした木下アビエル神奈川と対戦。試合直前は集中力を研ぎ澄まし、いわゆる“戦闘モード”に入るという森薗だが、この日ばかりは普段と感覚が違ったという。試合前のオーダー交換で石川との対戦が決まった瞬間、会場の高砂市総合体育館で感傷に浸ったという。

「私の中で彼女の存在は大きいし、Tリーグで一番対戦したかった選手。試合前は、あぁこの舞台で対戦出来るんだと珍しく物思いにふけりました。もちろん試合がはじまれば余計なことを考える余裕はなかった。とにかく集中して向かっていった。負けはしましたがTリーグの舞台で彼女と試合が出来て良かったです」。

同級生でもあり、幼少期から幾度となく試合会場や遠征で一緒になった石川佳純とは今でも親交があり、会えばたわいもないガールズトークが止まらないという。

「本当に内容を覚えていないくらい、くだらない話をずっとしてます。卓球の話はほとんどしませんね。最近だとBack Number が共通の好きなアーティストなのでその話をしたり、好きな歌を教えてもらったりしました」

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#すきです

森薗美咲/Misaki Morizonoさん(@m.morizono416)がシェアした投稿 – 2018年12月月9日午前2時47分PST

森薗と石川は2010年の世界ジュニアのダブルスでペアを組んで銀メダルを獲得。同大会の団体では共に日の丸をつけて戦い、7連覇中の中国を破り日本に金メダルをもたらした。また実業団の日立化成時代にはレンタル制度で石川がスポット参戦した際にダブルスを組んだこともある。

人生変えた盟友の大逆転劇

「今でも一番覚えているのは、あの大逆転ですね」

時は2009年に遡る。森薗は丹羽孝希と混合ダブルスを組み、世界選手権に出場していた。

「残念ながら、1回戦で負けてしまって。その後は他の選手の練習相手や、サポートに回っていました。佳純ちゃんが帖雅娜(ティエヤナ・中国香港)に大逆転した試合、あの試合を観客席ではなく、マッサーの方と2人で台のすぐ脇で見てたんですよ。あと2本で負けちゃうというところからの大逆転で。本当にスゴいなって思って、興奮しながら見てました」

当時16歳で世界ランク99位だった石川は、世界ランク10位の強豪に対し、ゲームカウント0-3の3-9と追い込まれた場面から大逆転。勢いそのままに世界選手権シングルス初出場でベスト8に入り、一気に世界トップランカーの仲間入りを果たした。

「人生が変わった瞬間ですね。悔しいという感情はなく、純粋にすごいと思ったし、自分も頑張ったらなれるのかな?と思わせてくれた。一方でこのままじゃダメだと思い、頑張れた。あの試合は今でも私のモチベーションの源です」




写真:森薗美咲/提供:Tリーグ

“動いてフォアで決める”が森薗スタイル

森薗のプレースタイルはシェークハンドの前陣速攻型だ。フォアに回転のかかる裏ソフトラバー、バックにスマッシュのしやすい表ソフトラバーを貼り、フォアとバックの球質の変化に加え、高い攻撃力で得点を重ねる。今年の全日本選手権の決勝を争った伊藤美誠や木原美悠らと同じ、バックに表ソフトを使う速攻型だが、森薗は動き回ってフォアハンドで連続攻撃を多用する、男子に近いパワフルなプレースタイルが特長だ。




写真:森薗美咲/提供:©T.LEAGUE

「はじめた時からこのスタイルですね。バックは裏ソフトと表ソフトを両方試しました。表(ソフトラバー)の感覚がフィットしたから直感で決めました」と5歳で卓球を始めた頃の意思決定を回想する。

世界選手権で2度の銀メダルを獲得した木子(ムズ・中国)のプレーを研究し、取り入れているという。「木子選手は私と同じフォアを多く使うバック表の選手なので参考になります。よく動画を見てますね。サーブで崩してフォアで決める。バックでチャンスを作ってフォアで決める。古いスタイルかもしれませんが、このフォアハンドを軸としたプレーが私の卓球です」。

台の中央に立ってフォアとバックの両ハンドで器用にボールをさばく女子選手が増えている中、森薗のフォアハンドで動き回るプレースタイルは躍動感があり、見るものを熱くさせる。

そんな森薗には女性アスリートならではの大きな悩みがあるという。(#3に続く)

文:川嶋弘文(ラリーズ編集長)