昨年の早慶レガッタで2年連続完全優勝を成し遂げた早大。しかし、選手たちに慢心はない。今回は3年連続の栄光に向けて牙を研ぐクルーに、大会への意気込みを語っていただいた。お話を伺うのは、ストロークを務める坂本英皓副将(スポ4=静岡・浜松北)、6番に乗る堀内一輝(スポ4=山梨・富士河口湖)、3番に乗る田中海靖(スポ3=愛媛・今治西)。大会の花形である対校エイトに出場する彼らは、今何を思うのか。

※この取材は3月14日に行われたものです。

「レースに臨むに当たっての自信になった」(田中)


昨年は2年生ながら対校エイトクルーに選出された田中

――坂本副将と田中選手に伺います。昨年、対校エイトのメンバーとして出場された早慶レガッタを振り返っていかがですか

坂本 練習からとてもいいものを出せていて、勝つ自信を持ってレースに臨めたので、ほっとしたという気持ちがあります。

田中 去年はストロークを務めさせていただきました。初めてのストロークで不安もあって、終わった時はほっとしたというのが一番だったんですけど、その時「来年もまたこの気持ちを味わいたいな」と思いました。

――レースで得られた最も大きい経験はなんですか

坂本 インターハイ(全国高校総合体育大会)とか、たくさんの観客の中で漕いだことはあったんですけど、あれだけの大歓声の中で勝ったという経験が自分は初めてだったので。たくさんの早稲田の関係者に勝った姿を見せられたという意味でも、大きい経験でした。

田中 高校まではインターハイくらいの大会にしか出ていなかったんですけど、(早慶レガッタは)また違った雰囲気の中で漕げたので、今後自分がレースに臨むに当たっての自信になったかなと思います。

――堀内さんは、これまでの早慶レガッタ出場の中で得られた大きな経験はありますか

堀内 クルーの課題を個人の課題にしないということですかね。単純に言えば、『誰かのせいにしない』ということです。そうすれば人間関係も円滑に進みますし、クルーのレベルアップも早いので。それを生かして2年次の種目のセカンドは良い感じで漕ぐことができました。

――あれだけ大勢の観客の中でレースを行う経験は、他では得られないものなんでしょうか

坂本 そうですね。ボート競技ってけっこうマイナーで、競技人口が8000人くらいなんですよ。他の大きい大会でも(観客は)5000人いかないくらいなんですけど、早慶戦(早慶レガッタ)はそれだけで1万人以上集まるので。観客規模としては日本最大級だと思います。

――独特の緊張感などはありますか

坂本 そうですね、ロケーションもいつもと違うし、相手も慶応しかいないので。2位だった、3位だったということがなくて、ただ『勝つか負けるか』なので、そういう意味で全く違う緊張感がありますね。

――初めて対校エイトに出場して、特に大変だった点はなんですか

田中 自分はエイトの経験もそれほどなかったんですけど、いきなりストロークを任されたので。ストロークは特にリズムづくりが重要なので、そこが一番難しかったです。自分がこうしてほしい、ということを発信していかないと、みんなもどう漕いでいいのか分からないので。でも最終的には先輩方が支えてくれたおかげで、しっかりと自分のリズムをつくっていけたかなと感じています。

――そのような早慶レガッタで始まった、昨シーズン全体を振り返ると、どのようなシーズンでしたか

堀内 例年通りの早稲田と言いますか。早慶戦は勝てるんですけど、その後全日本(全日本選手権)、インカレ(全日本大学選手権)と負けて……。ここ最近の悪い流れを、大きく変えられなかった感じです。

坂本 コーチに、どうやったら効率よく船が進むのかみたいな課題を整理していただいて。新たな発見があったシーズンだったんですけど、(教えてもらったもので)自分たちの中に落とし込めていたと思っていたものが、落とし込めていなかったです。インカレでも(早慶レガッタと)同じものを出そうとしたんですけど、うまくいかない感覚が残ったままレースを迎えてしまって。それと全日本とインカレはいい結果を出せなかったんですけど、(いい結果を出せた)早慶戦との決定的な違いは、レース本番を想定したトレーニングの量だと思います。早慶戦であれば、3回隅田川に実際に行ってレースのシミュレーションをするんですよ。でもインカレとは全日本は、2000メートルのリハーサルがあまりできなくて。早慶戦は課題を全部洗い出してレースに臨めたんですけど、去年のインカレは予選を含めてレースを重ねながら修正するようなかたちになってしまったので、予選の前に課題を解決できていればまた違った結果になっていたと思います。なので、今年のインカレの前には、2000メートルを何回も練習したいと僕は思っています。

――田中選手はいかがですか

田中 (坂本副将が)全部言ってくれたので……(笑)。

坂本 俺、自分で付け加えられるんだけど(笑)。

田中 じゃあお願いします。

坂本 全日本の前に3年生が全員クロアチア遠征に行って新しいことを教えていただいて、それを新しいクルーも含めて練習していたんですけど、それをうまく身につけることに苦戦していました。今まで日本になかった漕ぎを早稲田に浸透させるのが難しくて、そのまま全日本に出て予選敗退というかたちで4年生を引退させてしまったので、(レース自体には)課題も収穫もあったんですけど、それが申し訳なかったです。

――それを踏まえ、オフシーズンにみなさんが特に力を入れて取り組まれていたことを教えてください

田中 基本的にオフシーズンはロングディスタンストレーニングといって、長い距離を低めの強度で漕ぐ練習が多いんですけど、その中でも個人として『一本一本の質を上げる』ということを意識していました。練習の質が低いとレース本番でもミスが出てしまうので。

堀内 個人としてはパワーを付けるためにウエイトトレーニングに力を入れていて、除脂肪体重を増やすというか、筋量を上げることを意識していました。あと新しいメニューとして、高負荷の短時間トレーニングであるHIITを取り入れていました。

坂本 僕はいろんな人が自主練しているところに混ぜてもらうことが多かったので、一つのことを積み重ねるというよりは、いろいろなことをやっていましたね。


これまでの早慶レガッタを振り返る堀内

――ここからはプライベートな質問をさせていただきます。まずは他己紹介をしていただきたいのですが、田中選手がどんな方なのか、お二人に教えていただきたいです

坂本 一言で言うなら、『シャイなプレイボーイ』です。

田中 ……(苦笑)。

坂本 真面目に言いますね(笑)。真面目に言うと、すごくいい子なんですよ。誰にでも優しくて、自分で頑張れる強さもあるし。いいことしか言えないです。

堀内 じゃあ僕も。えっと、しょげている時がすごく分かりやすいですね(笑)。あ、今日調子悪いんだなっていうのが顔に出る(笑)。

――続いて、堀内選手がどんな方なのか教えてください

坂本 一輝(堀内)は、仲間に対する優しさがすごいです。色んな事に気前が良くて、自炊したものを食べさせてくれたり、手伝ってほしいこともすぐ手伝ってくれるし。そういうところがい良いですね。

田中 優しい先輩で、練習の中でも『やるときはやる』姿が印象的です。

――最後に、坂本副将がどんな方なのか教えてください

堀内 一言で言えば、嘘つき(笑)。辛いときもこういう(明るい)感じなので、それだけで周りの雰囲気も変わりますし。でもたまに、どうでもいいことで嘘をつくので。

坂本 悪いところを言うな(笑)。

堀内 やっぱ、ちょっとね。

坂本 いいじゃん(笑)。俺も一輝の良いところしか言ってないんだから。

堀内 まあ、そういう。本人が意識して雰囲気を良くしようと思っているのかは分からないですけど、結果的にすごく良くなっているので、そこをすごく尊敬しています。

坂本 雰囲気は意識してるよ。俺就活の自己PR、『雰囲気を良くする男』だもん。

一同 (笑)。

――田中選手はいかがですか

田中 僕はルームメイトなんですけど、すごく嘘をついてきます。でも最近どれが嘘でどれが本当か、大体分かるようになってきました(笑)。いいところは、先輩としての威圧感を出してこないので、対等に関わってくれる感じがしてすごく喋りやすいです。

坂本 これを機に、印象に残ってる嘘を聞かせてほしい!

田中 ……。「自分は中国人だ」、って。

堀内 ……それ信じたの?

田中 いや信じてないですけど……。

坂本 (爆笑)。

――最近はまっていることを教えてください

田中 僕はスマブラです。僕のもう一つ上の先輩に一番強い人がいるんですけど、最近は坂本さんとも一緒に……。

坂本 やめろ、俺就活生なんだから。

堀内、田中 (笑)。

坂本 一日20分くらい!

田中 忙しい中でも遊んでくれます。

――お二人が最近はまっていることはなんですか

堀内 ちょっと思いつかないから先に言って。

坂本 僕がはまっていることですか?それはもう就活ですよ!

堀内、田中 (笑)。

坂本 好きではまっているというか、もう沼にはまっていますね。食事当番って、略して『食当(しょくとう)』なんですね。この前、僕と海靖(田中)が同じ食当だったんですけど、先にやっていた海靖を見て「あ、きょう食当か」って言おうとしたら「あ、きょう就活か」って言ってて。

堀内、田中 (笑)。

坂本 あ、俺もうほんとうにやばいなって思いました。

――堀内選手はいかがですか

堀内 僕も坂本と同じようなことなんですけど、就活のために土日にスーツを着て電車に乗っていると、『社畜』感が出て面白いですね(笑)。(自分は)体格もいいので、二度見されながら電車に乗っています。

「みんなのために勝ちたい」(坂本)


今年の早慶レガッタへの思いを語る坂本

――今年度の早慶レガッタに向けて、最近どのような練習をされていますか

坂本 週の初めにメニューが出されるんですけど、当日になると監督(内田大介監督、昭54教卒=長野・岡谷南)から3キロメニューが追加される感じになっているので、最近はそういう練習をしています。

――昨年に比べて成長できたと思えるのはどのような点ですか

堀内 坂本が言ったように練習メニューが急に増えることがあるんですけど、それを楽しめるようになりましたね。「3キロ追加、やったね」みたいな、そういう気持ちを持てるようになったのが成長だと思います。

田中 個人としては漕ぎのテクニックもそうなんですけど、コーチが教えてくださることを全体的に理解できてきているのかなと思います。

坂本 自分は、自分が強くなったことよりも、練習のマネジメントがうまくできるようになったことが成長だと思います。去年は4年生の先輩たちに付いていくだけだったんですけど、今年は課題と練習の狙いまで考えて取り組めているので、そこが成長です。

――現段階でのクルーの仕上がりはどのくらいですか

坂本 50%くらい?

堀内 漕ぎのスタイルを変えて、それがやっと分かってきた段階なので。まだまだあと1ヵ月頑張ろうという感じです。

――レースにおけるご自身の役割についてどのように考えていますか

坂本 本番は分からないんですけど、今は自分はストロークとして一番前にいて、僕が止まったり乱れてしまうとみんなが漕げなくなってしまうので。自分は何があっても淡々とリズムをつくり続けることを意識したいです。ムラがあるとも言われるんですけど、それをなくせるように頑張っていきたいと思います。

田中 自分は3番という後ろから3番目のポジションで前にいる5人が見えるので、自分が見ていることと、僕の後ろにいるバウと2番が言ってくれたことを伝えること。あと自分はクルーの中で漕ぎが長い方だと思っているので、それを崩さずに後ろまでしっかりつなげることも自分の役割だと思います。

堀内 僕は6番に乗っていて、担当は自分の体格を生かしたパワーで、坂本たちストロークにできるだけ余裕を持って漕いでもらうというバックアップ的な役割がメインなので。そこを頑張ろうと思います。

――今年の慶大の印象はいかがですか

坂本 はい。よく分からないスキーゴーグルみたいなサングラスを着けている選手がたくさんいます。

堀内、田中 (笑)。

坂本 つながった長いやつです。

堀内、田中 (笑)。

――対する今年の早大対校エイト陣の強みはなんですか

堀内 今年の強みは、体が大きくてパワーがあることなので、去年と同じかそれ以上に(クルーの仕上がりを)持ってくれば去年以上の漕ぎができると思います。そこを生かしてスピードを出せるようにしたいです。

――当日レースを観る観客の方に早慶レガッタの注目ポイントを伝えるなら、それはどのような点ですか

坂本 じゃあ僕から。3番の田中海靖君の顔ですね。

田中 (笑)。

坂本 すごく辛そうな顔をしているので、ぜひ観客の方はそこに注目していただきたいです。普段はこんなにりりしくてかわいい顔をしてるのに、レースになるとこの世の終わりみたいな表情になるので。注目です。

田中 僕はいま坂本さんから言われたので……(笑)。辛い顔をしない自分を見せたいなと思います。

堀内 僕からは、「ぜひスタート地点にいらっしゃってください」ということを言いたいです(笑)。おととしはOBの方が来てくださったんですが、そこに参加していただけたら……。ゴール前だと僕らは分からないので。スタートで応援されると嬉しいです。

――特に坂本副将、堀内選手は最後の早慶レガッタになりますが、本番に向けた意気込みをお願いします

田中 僕は来年も出るつもりではあるんですけど。まだまだ苦戦している部分はあるんですが、早慶戦までに自信を付けて、おととし、去年と続いてしまった(全日本、インカレでの悪い)流れを今年こそは変えられるように。まずは(早慶レガッタで)3連覇して、次につながるレースができればと思います。

堀内 僕は最後ではあるんですけど、最後だからといって何かをするのではなく、いつも通りに。普段通りに漕いで、4年生だからこそある余裕を持って、下級生を引っ張っていけるようにしたいです。

坂本 (意気込みは)2つあります。まずは、去年勝っても今年負けたら意味がないというか、最後まで勝ち切ってこそ「学生時代、早慶戦で勝ちました」と言えるんだと思います。ラストイヤーには大きな意味があると思っているので、そこで勝てるように死力を尽くしたいです。もう一つは、去年は自分のために戦っていたんですけど、今年は自分だけではなく支えてくれる仲間や友人、家族のために戦う気持ちでいるので。みんなのために勝ちたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 望月優樹)


◆坂本英皓(さかもと・ひであき)(※写真左)

1997(平9)年11月4日生まれ。183センチ75キロ。静岡県立浜松北高校出身。スポーツ科学部4年。明るい人柄の坂本選手ですが、実は自他ともに認める『超ネガティブ』。就活の際には面接官の方に「卑屈だね……。」と突っ込まれてしまったことも。しかしひとたび試合になると、頼れる副将として活躍。隅田川でもチームをまとめ、宿敵撃破を成し遂げます!

◆堀内一輝(ほりうち・かずき)(※写真右)

1998(平10)年2月14日生まれ。185センチ95キロ。山梨県立富士河口湖高校出身。スポーツ科学部4年。一昔前に世間を賑わせた『前澤社長の100万円プレゼントキャンペーン』。もし当たったら何を買いたかったか、という質問には、バイクメーカーducatiの『パニガーレ』を買いたいと答えてくださいました。バイクだけでなく早慶レガッタでは艇も乗りこなし、華々しい大学ラストイヤーの幕開けとします!

◆田中海靖(たなか・かいせい)(※写真中央)

1998(平10)年10月27日生まれ。178センチ73キロ。愛媛県立今治西高校出身。スポーツ科学部3年。『前澤社長の100万円プレゼントキャンペーン』にもし当たったら何を買いたかったか、という質問に、「半分を貯金して、残りの半分で家電を買ってキッチンを充実させたい」と答えてくださいました。堅実で家庭的な田中選手が、レースでもキーマンとなることでしょう!