昨オフ、ポスティング制度を利用してメジャー移籍を目指した前田健太投手は、健康問題への懸念から8年年俸総額2500万ドル(約30億円)をベースに、巨額のインセンティブ(出来高)が加わる特殊な契約をドジャースと結び、話題となった。■肩肘の健康が…

昨オフ、ポスティング制度を利用してメジャー移籍を目指した前田健太投手は、健康問題への懸念から8年年俸総額2500万ドル(約30億円)をベースに、巨額のインセンティブ(出来高)が加わる特殊な契約をドジャースと結び、話題となった。

■肩肘の健康が懸念され出来高重視の契約も「まるで岩のような存在」と地元紙

 昨オフ、ポスティング制度を利用してメジャー移籍を目指した前田健太投手は、健康問題への懸念から8年年俸総額2500万ドル(約30億円)をベースに、巨額のインセンティブ(出来高)が加わる特殊な契約をドジャースと結び、話題となった。だが、シーズン後半戦に入り、優勝争いに熱を帯びてきた今、怪我人が続出するドジャース先発陣を牽引するのは、力闘を続ける前田だ。地元紙「ロサンゼルス・タイムズ」電子版では、「ケンタ・マエダはドジャースにとってお買い得だったと証明」と題した特集記事を掲載している。

 今季からドジャースに加入した前田は、これまで20試合に先発し、9勝7敗、防御率3.25と安定感の高さを示している。そんな右腕は、すっかり新天地に順応している様子だ。地元メディアに「デビューシーズンで最も誇れる達成は?」と英語で質問されると、通訳からの説明を待たずに「ホームラン」と満面の笑みで答えたという。前田は、メジャーデビュー戦となった4月6日パドレス戦で、豪快なソロホームランを放っている。

 先日は見事なスクイズを決めるなど、打席でも大活躍の前田だが、記事では、日本人投手は適応が難しいとされるメジャーの先発ローテスケジュールを守り続ける仕事ぶりについて評価。「揺るがず頑丈な右腕は、故障者続出で不安定な先発ローテので、まるで岩のような存在だ」と絶賛されている。

■故障者続出の投手陣で光る存在感、「彼が投げると勝てる気がする」とロバーツ監督

 今季のドジャース投手陣は故障者が続出している。エース左腕クレイトン・カーショー、柳賢振、アレックス・ウッドが故障で離脱し、フリオ・ウリアス、マイク・ボルシンガー、ロス・ストリップリングは調子が不安定。前田の堅実なピッチングは、チームにとって有益なものとなっている。

 前田の安定感は、データからも読み取れる。記事によれば、これまで113回2/3を投げて115奪三振、32四球という成績を記録。9回あたりの平均奪三振数は9.11、与四球は2.53だった。

 一方、やや物足りないのは投球回数だ。先発1試合あたり平均5回2/3を投げていて、6回以上投げたのは11試合だった。記事では「自分が望むほど長い回数を投げてはいない」と指摘しながらも、「おそらく1試合を除きすべての先発試合でドジャースに勝つチャンスを与えている」と奮闘を称えている。

 デーブ・ロバーツ監督も新人右腕の働きぶりに目を細めている。「彼は我々の期待を上回っている。毎試合いいピッチングは望めないが、環境への適応など、あらゆる条件を考慮しても、ケンタはファンタスティックだ。彼が先発の時は、みんな勝てる気がしている」と絶賛。そして「先発ローテを一度も飛ばさずに投げていることは、とても心強い。自分の体のケアが素晴らしい」と話し、入団前のフィジカル検査で顕在化したと肘と肩の不安について、現在は気に掛けていないようだ。

■同僚カズミアは「守備から投球、打撃まですべて完璧に見える」と絶賛

 契約前は「先発ローテの3番手以降の投手」という評価をされた前田について、リック・ハニーカット投手コーチは「私は彼にレッテルを貼る真似はしたくない。ナンバー1を呼べる投手は、ほんの一握りしか存在しない。だが、彼は間違いなく5番手ではない。競争力の高いピッチングを見せてくれるし、それこそが求めるもの。彼は期待通りだし、まだ成長する余地がある」と語っている。

 一方、前田と先発ローテーションを守る左腕スコット・カズミアは、前田が肘に不安を持つように見えるかと質問されると、「どう答えたらいいかわからない。自分の目はそういう訓練を受けていないからね」と話しつつも、「彼の投球フォームについての質問なら、自分には完璧のように見えるよ。守備から投球、さらには打撃まで、彼のプレーすべてがそう見える」と語っている。

 メジャー1年目ながらチームを牽引する前田の奮闘ぶりは、すでにチームから全幅の信頼を獲得したようだ。