女子部が新たな歴史を刻もうとしている。早慶レガッタで築き上げた連勝記録は、実に29。そして今年、節目の30連覇が懸かる一戦を迎える。そんなシーズン最初の大一番を前に、最上級生として屋台骨となって女子部を支える、木下弥桜女子主将(スポ4=和歌山北)と南菜月女子副将(教4=新潟南)のお二人に、今年のチーム事情、早慶戦への思いなどを語っていただいた

※この取材は3月13日に行われたものです。

「4年生だけ頑張ろうではなく、みんなで目標に向けてやっていこうと意識している」(木下)


新体制について語る南

――新体制が始動されてから時間がたちましたが、現在の調子はいかがですか

木下 私たちの代は、上の代に米川さん(志保、平31スポ卒=現トヨタ自動車)がいたように、飛び抜けて強い選手や代表選手がいないので、それをカバーするために全員でコミュニケーションをとって、全員で高め合っていこうと新体制を始動しました。新体制が始まって5カ月くらいたちますけど、陸上でのエルゴ(メーター)の漕力評価も全員が自己ベストを更新したり、私たちの目標に向かってしっかりと進められている感じがあります。

――早慶レガッタを1カ月後に控えて現在はどのような練習をされていますか

木下 U23日本代表候補に挑戦する選手が3人いて、その選手が抜けて別で練習をしているので、エイトには乗らずに、4人で乗ったり、2人で乗ったり、1人で乗ったりする練習をしています。

――昨季は2年連続の早慶レガッタ完全優勝でした

 おととしの早慶戦がワセ女史上最も危ないレースだったこともあって、エイトの難しさを痛感したので、相手が誰であろうと盤石な態勢で大会を迎えようと準備をしっかりと重ねてきたものが早慶戦当日に出せたかなと思います。

木下 正直な感想としては、ほっとしました。2年生の時に私も乗っていて、早慶戦完全優勝を成し遂げて、それまでは完全優勝ではなかったので、先輩方のチームで完全優勝をできて、3年生になった時に完全優勝を引き継げるのかというプレッシャーをみんな感じていたと思うので、私は出場していないんですけどほっとしました。

――シーズン後半戦では全日本大学選手権(インカレ)での総合優勝などがありました

木下 (早慶レガッタ)完全優勝からスタートして、目標が女子はインカレ総合優勝、全日本(全日本選手権)でクォド(舵手なしクォドルプル)優勝と2種目表彰台を掲げている中で達成するのはすごく難しいことだと思うんですけど、1つ上の代の先輩方は米川さんは飛び抜けた力があったり、その他の先輩方もまとめていく力があったり、この人たちに付いていこうと私たちは思っていたので、インカレ総合優勝ができてすごくうれしかったのと、次は私たちの代に連覇が懸かっているので、それを考えると総合優勝したいな、しなきゃなと思いました。

――その中で昨季ご自身で成長を感じた部分はありましたか

木下 メンタル面の理由で2年生の夏から冬にかけて休部させてもらったことがあって、そこで自分を見つめ直して復帰に向けてもう一回頑張ろうと思えました。もう一回ボートを楽しもうと考えて部活をして、復帰してから初レースが東日本(東日本選手権)のペア(舵手なしペア)のレースで、それがいい方向に向いて、もう一回初心に戻ることができて部活に挑めたことが良かったです。

 3年生で上級生としてチームを引っ張る立場になる機会が増えて、その中でいかに自分の発言に責任を持って、チームをまとめ上げて、それによって部の方向性を示していくというところが自分は成長したと思います。

――逆に課題であると感じた部分はありましたか

木下 インカレと全日本で、どちらも4位になってしまって、決勝はいったものの、どちらのレースも水をあけて負けてしまって最下位だったので、そこがすごく悔しかったです。自分たちのやってきたことは間違っていなかったし後悔はないけど負けてしまったため、それは何でだろうという難しい問題で、まだそこは試行錯誤中です。後半にかけてのレース展開とかペース配分とか、もう少し自分たちで研究してできていれば良かったです。

 木下も言っていたんですけど、インカレと全日本でスイープ種目で女子部は弱いところがあると感じました。スカル種目は毎年いい成績を残せるんですけど、去年からインカレでスイープ種目が増えたり、全日本のエイトで優勝から遠ざかっていて、他大に劣っていると痛感しました。自分たちは9月にクロアチアに行かせていただいて、そこでスイープにつながるような指導をしてもらって、全日本は短時間でうまく合い切らなかったんですけど、そこを今年は全員で学んだことを生かせていけたらなと思っています。

――クロアチア遠征は収穫が多かったということでしょうか

 現地のコーチにコーチングをしていただいて、練習内容もそうなんですけど、現地の人たちの雰囲気やボートに対する向き合い方、日本では感じることができないいろいろな刺激を受けたことによって、視野が広がりました。今まできちんと向き合ってきたつもりだったんですけど、狭い向き合い方だったなと思ったので、それをどのように後輩たちに伝えられるかなと考えるようになったので、クロアチアに行ったことは収穫でした。

――今シーズンのチームと個人の目標を教えていただけますか

木下 女子部全体の目標は、インカレ総合優勝と全日本クォド優勝と2種目表彰台です。私自身の目標としては、女子部の目標とかぶるんですけど、インカレ総合優勝が一番の目標です。いつも総合優勝の表彰の時に、女子部全員で集まって、主将がトロフィーを持って写真を撮るんですけど、その写真を撮りたいです。

 インカレで優勝したいというのが強くて、インカレだけ決勝にいったことがないので、引退レースになると思うのでラストチャンスで今まで積み重ねてきたものを全て出し切りたいです。もう一つとしては、どの大会でも部員が1人でも多く勝ってほしいと思っているので、そういうところで自分たち二人が引っ張っていって、今年の女子部は笑顔で大会を終えられる人が増えたらいいなと思います。

――最上級生として意識されていることはありますか

木下 早慶戦完全優勝、インカレ総合優勝、という目標をチームで掲げているので、4年生だけ頑張ろうではなく、みんなで目標に向けてやっていこうと意識しています。例えば陸上の練習の時に全員で一斉に始めて、「頑張っていきましょう」と声を掛け合っています。高校の部活は全員でやっていこうという意識が強くあって、大学では違うイメージがあったので、練習を楽しく、全員で頑張ろう、全員で高め合おうと意識してチームをつくっていけたらなと思っています。

――4年生のプレーヤーがお二人ということで役職はどのように決められましたか

木下 トップダウンで(笑)。

 指名制で(笑)。

木下 1つ上の先輩方と監督、コーチ陣で話し合っていただいて、役職が振り分けられました。

――今年から新たに取り組まれていることはありますか

木下 女子部は練習の効率化として、やった練習をもったいないものにしないように、食事とか栄養面に力を入れています。大学で栄養学を教えている方に来ていただいて、練習前や練習後の食事でどういう栄養を取れば筋肉がつくのかというのを3回くらい講義していただきました。掃除に関しても変えて、女子部は練習後に毎日掃除をやらなければいけないという決まりがあって、20、30分かかってしまっていたんですけど、そうすると練習後から食事までの時間がすごく空いてしまって、練習の効率化に良くないということで、掃除をするタイミングをいつでもよくしたのと、水曜日は思い切ってなくしました。

――全日本選手権が5月になったことはどのようにお考えですか

木下 早慶戦が4月でそこから1カ月ほどで全日本ということで、短時間だとユニホーミティーだったりとかを合わせるのが難しくなってくるので、(時期が)早いなというのがありますね。

「大事な相談はいつも彼女(木下)にする」(南)


笑顔でお互いの紹介をしてくれたお二人

――お互いに他己紹介をお願いします

木下 真面目という言葉では表せないです。ボートに一番真剣に取り組んでると思います。こだわりもあって、ボートに真摯(しんし)に向き合っています。あと私が結構抜けているところがあるので、副将としてフォローしてもらっているかなと4年生になって思います。

 一番の印象としては、彼女がいると女子部が明るくなります。練習の時も彼女は主将でリーダーを務めることがあって、それに対して強い軸を持ってチームを引っ張っていけるところは自分も頼れる主将だなと思います。練習以外でも、練習が終わって着替えたりする時に更衣室でワイワイするんですけど、そういうところで彼女は明るくしてくれます。そういうメリハリがしっかりとついている、いいお手本だと思います。

木下 『メリハリの木下』と言われているので(笑)。

 初めて聞いた(笑)。

――お二人でオフの日に遊びに行かれたりしますか

木下 オフとかに遊びに行ったりはないんですけど、四年間一緒にやってきたので、踏み込んだ話は南さんにはできます。

 大事な相談はいつも彼女にしています。

――今年の女子部の雰囲気はいかがですか

木下 引退された1つ上の先輩に女子部の雰囲気が柔らかくなったと言われて、緩いとかではなくて、いい雰囲気になってきてると言われたのがうれしくて、そうしていきたいなと思っていたので、いい傾向になっていると思います。

――4年生ということでやはりオフの日は就職活動がお忙しいですか

木下 南さんの方が就活はしている(笑)。

 いやいや、心配性なだけ(笑)。その中でも今年はしっかりとラストイヤーで大事にしたいという思いが強いので、両立うまくコントロールしてできたらいいかなと思います。

――そうした中で気分転換にされていることはありますか

木下 オフが月曜日と金曜日の午後にあるので、そこでボートのことも就活のことも考えずに出かけています。おいしいものを食べることが一番のリラックスですね。

 私はちょっと言いづらいんですけど…(笑)。オフの時間に就活に集中したいというのがあるので、部活をしている時が一番楽しいです(笑)。好きなことを精一杯できるのはやっぱり楽しいなと思って、練習が就活からの息抜きになっています。なので私も就活が終わったらおいしいものを食べに行きたいと思っています。

――漕艇部のSNSでバレンタインデーに女子部の皆さんがチョコフォンデュを準備されたのを拝見しました

木下 実は毎年監督とかコーチの方にはみんなからお金を集めて何かを買って渡していて、部員には女子一人一人がクッキーとかチョコとかを手作りして、渡す人には置いておく感じの伝統があったんですけど、女子部で話していた時に、「弥桜さん、今年は作りますか?」と言われて、「作らないかな~」と言ったら、「私たちも作らないんですよ~」と言われたので、監督とかコーチに渡す分と一緒にお金を集めて、女子部一同からという感じで渡すことになりました。後輩からチョコフォンデュの提案があって、後輩が準備をしてくれてやりました。

――反響はいかがでしたか

木下 男子部の選手たちがご飯を食べている時に、食堂で並べてやったので、ちょっと照れ隠しみたい反応をされました(笑)。

――あしたはホワイトデーですが、男子部の皆さんから伝統的にお返しがあるのでしょうか

 いや、何も…。

木下 ほとんどいないんですけど、返してくれる人は返してくれる感じです。今年は期待しておきます(笑)。

――男子部と女子部の間でイベントなどはあるのでしょうか

木下 あまりないんですけど、新入生が入って2カ月後くらいにみんなで親睦会をやったり、インカレの後に打ち上げなどをしたりします。

 節目で部内で何かをやることはあったり、たまに日曜日の練習が終わった後に鍋をつっついていたりとかをたまに見たりします。あるところはあります。

「『ワセ女』として自信を持って勝ちにいきたい」(木下)


早慶レガッタへの思いを話す木下

――早慶レガッタとはどのような大会でしょうか

木下 インカレとか全日本でも早稲田を背負っているんですけど、早慶戦は早稲田と慶応だけで戦うので、より早稲田を背負っている感じがあって、負けられない特別な試合です。

――昨年は腹を切るアクシデントの中で勝利を収めました

 しっかり準備ができたレースでした。練習を積み重ねていたのもあるんですけど、先輩方からいろいろな早慶戦の経験を教えてもらったりしました。隅田川で漕ぐ練習が女子部は少ないので、いかに準備できるかというのが重要で、それができていたレースでした。最初に腹を切ったんですけど、そこに対して全員が冷静に対処できて、結果的に勝利ができました。

――今年のクルーの特徴を教えてください

木下 今年は私たち二人と3年生という上級生で集まっているので、ずっと早稲田の漕ぎで練習をしてきた人で組んでいるので、合わせるというところでは合わせやすくて、イメージをまとめやすいのかなと思います。

――メンバー選考はどのように行われましたか

 シングルスカルだよね?

木下 シングルスカルでみんなでタイムトライアルをして、陸上のエルゴだったり、今までの戦績とかを踏まえての選考でした。

――コースである隅田川の印象はいかがですか

木下 隅田川は今まで漕いできたことがないような水面が荒れた状態でレースをしますし、昨年は腹切りがあったりと何が起こるか分からないコースです。それにプラスして2年生の時に出場したレースでも、漕力的には早稲田が勝っていて、勝つだろうと言われていたレースで慶応に出られて、慶応が腹を切っていなかったら、どうなっていたか分からないようなレースだったので、漕力で勝っていて、戸田のコースで勝てていても、隅田川ではどうなるか分からないところが難しくて、隅田川の特徴だなと思います。

――レースプランはありますか

 代表選考のレースがあるので、それほど多い日数練習をしていなくて、プランが立てられていないんですけど、しっかりと最初からワセ女の力を見せつけられるような、ワセ女らしいレースができたらなと思います。

――今年の慶大はどのようなチームであると感じていますか

 去年よりまとまりがあるかなと思います。その分しっかりと選抜をしているそうですし、あとは私が見ると慶応さんの全体の動きが最初から合っていて侮れないなというのがあるので、自分たちは準備期間が短い中で濃い練習をしていかなければと思います。

――早慶レガッタで勝利するために、どなたがキープレーヤーになると思われますか

木下 やっぱりリズムを刻むストロークですね。隅田川のレースは1000メートルで短いので、鋭いリズムで漕いでいかなければいけないので、7番の私もそうなんですけど、リズムを刻むところでストロークが結構重要になってくると思います。

 コックスの奈良岡(寛子、教3=青森)かなと思います。やっぱり1000メートルといえど、8人の指揮を執るコックスというポジションかつ彼女は初めて隅田川でレースをするので、そこでいかに難しい状況で8人をまとめ上げて導いてくれるかということを彼女も試行錯誤しているそうなので、期待をしています。

――30連覇が懸かっていますが、プレッシャーを感じますか

木下 かなりプレッシャーです(笑)。

 節目だからね。

木下 私たちの代で30連覇したいです。シーズンが始まる初戦なので、ここで女子部は30連覇をして、シーズンにつなげていきたいです。

――早慶レガッタが最後ということに関してはいかがですか

木下 今までは先輩がつくっていくチームで、つくっていくクルーに乗って、結果を残す感じだったんですけど、今年は私たちがつくっていくチームで、つくっていくクルーで勝ちにいくので、最後の早慶戦に勝ちたいという思いよりは、つながなければいけないなという思いが強いです。

――ご自身はどのような役割を担っていきたいですか

木下 リズムを刻んでいく役割があるので、ストロークの宇都宮(沙紀、商3=愛媛・今治西)が漕ぎやすいようにバックアップしていくのと、クルーリーダーなので、9人が思っていることを共有しやすいクルーをつくっていかなければいけないと思っています。

 ちょうど真ん中のポジションなので、船のパワーとして支えるのと、前と後ろをしっかりとつなぐ役割をして、後ろのメンバーに伝えたりすることを大事にしていきたいです。

――最後に意気込みをお願いします

木下 女子エイトは人数が多いので、私たちがチームをつくる上で大事にしてきた、全員で高め合うというが感じやすいレースになると思うので、やってきたことを見せるためにも、余裕があるレースで、『ワセ女』として自信を持って勝ちにいきたいです。

 30連覇が懸かっている中でプレッシャーは大きいと思うんですけど、気負い過ぎず、油断し過ぎず、目の前のことを一つ一つこなして、最高のパフォーマンスで試合に臨んで勝ちたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 石井尚紀)


◆木下弥桜(きのした・みお)(※写真左)

1998(平10)年3月12日生まれ。164センチ。和歌山北高出身。スポーツ科学部4年。『メリハリの木下』と自他共に認められているという木下選手(本人談)。主将として女子部をまとめ上げて、早慶レガッタ30連覇へと導きます!

◆南菜月(みなみ・なつき)(※写真右)

1997(平9)年6月10日生まれ。160センチ。新潟南高出身。教育学部4年。最上級生となり、ボート競技の楽しさを再認識したという南選手。しっかり者の副将が、艇の真ん中からエンジンの役割を担ってクルーを支えます!