2018年12月25日、4年生にとって最後の公式戦の幕開けとなった“沼ノ端アイスアリーナ”。関口直人(法4)は1年半前の夏を思い出していた。


体勢を崩しながら、味方へパスをだす関口

1度目の沼ノ端へ

何かに一心に打ち込んだ経験がなかった。高校まで、部活に所属していてもどこか本気になれない自分がいた。そんな関口とアイスホッケー部との出会いは偶然。きっかけは第二外国語で一緒の安保(法4)だった。「安保がアイスホッケーやるっていうから俺もやってみようって」。なんとなく軽い気持ちで、アイスホッケーという競技に足を踏み入れた。そこからは必死の日々が続く。バックスケーティングの速さとDFの少なかったチーム状況をみた監督からの指示で、DFに抜擢。しかし、任されたことの嬉しさとは裏腹に、ポジションへの悩みは尽きなかった。失点に直結するポジション、試合をつくる重要な役割。FWとして同期が試合に出始めてからもなかなか出場できなかった。「初心者からはじめてDFになったっていう先輩はあんまりいなかったから」。だからこそ、こんな思いが胸によぎる。「なんだかんだ言って、このまま(公式戦には)出られないのかな」。

そんな関口に公式戦の出場チャンスがまわってきたのは3年夏のことだった。新入生(現2年生)を迎え、DFの2セット回しが可能に。それでも試合出場への手掛かりはなかなかつかめない。そんな時期のサマーカップでやっとスターティングメンバーとして名前を呼ばれた。ずっと待ち望んできた試合出場。でも、沼ノ端アイスアリーナで迎えた初戦はイメージとは違っていた。「自分から抜かれて失点して、いらない反則して、チームにすっごい迷惑かけてしまって」。苦くて空っぽな沼ノ端での思いは1年半たった今も関口の胸の中に残っている。

2度目の沼ノ端は

苦い思いを味わってもなお、試合に出場できることが嬉しかった。レギュラーになって初めて「成長出来たし、ホッケーを楽しめるようになった」。アイスホッケーと向き合い、向き合い、向き合う日々が始まった。入部してからの必死な練習を振り返っても、「今考えれば、もう少し力入れられたんじゃないかって」。そう思うほどに、アイスホッケーにのめり込み、楽しみ、成長している自分がいた。

2018年12月25日、関口ら4年生にとって最後の大会であるインカレは、1年半前、苦い思いを味わった沼ノ端アイスアリーナで幕を開けた。「この場所で引退するんだなって思うと怖さもありつつ」。そうもらしたが、リンクに立った彼の姿は、1ミリの不安さえ、感じさせなかった。むしろ堂々と、頼もしい背中を後輩に見せていた。「チームは大敗していたんですけれど、個人としては“いつも通り”、このシーズンの自分が出せた。そこは成長できたのかな」。“いつも通り”、トレードマークの笑顔がチームに明るさをもたらす。苦くて空っぽだった沼ノ端の思い出は、いつか4年間の努力が実った確かな満足感へと変わっていた。


真剣な表情でプレーする関口

後輩に向けた眼差し

「初心者から始めた後輩の姿が数年前の自分と重なることはありますか」。リーグ最終試合・日大戦が終わった後のインタビューで、彼にこんな質問をぶつけてみた。「重なるっていうよりは、真逆の存在だなと思います」。初心者から始めた久保(コ2)の名前を挙げて、柔らかな笑顔でこう続けた。「自分は試合に出られるようになってからホッケーがもっと面白いって思って成長することができたんですけれど、久保はずっと出たいと思いながら、ずっと真摯にアイスホッケーに取り組んでいるので」。自身が過ごした必死の4年間があったからこそ。苦い思いを噛み締めた日々があったからこそ。いかにも関口らしい眼差しで、これからも後輩の活躍を見つめている。「絶対自分よりうまくなると思うし、なってほしいです」。

いつも愛された4年生、リンクにたくさんの笑顔を届けてくれた存在へ、最後に感謝を送りたい。関口さん、4年間本当にお疲れ様でした。
(3月30日 取材/編集:日野雅由子)