2018年秋の明治神宮大会で星稜(石川)の奥川恭伸に11三振を奪われ、わずか3安打で7回コールド負け(0-9)した広陵(広島)。中井哲之監督はその試合後にこう語った。

「広陵が全国大会でコールド負けをしたということをよく考え、『あの負けがあったからセンバツで勝てた』と言えるようにしたい」

 そして迎えたセンバツ初戦の八戸学院光星(青森)戦では、先発した河野佳の完封勝ちで汚名をそそいだかと思われたが……。2回戦で東邦(愛知)に2-12という大敗を喫した。

 河野は初回に2点を奪われ、3回にも4失点。この回でマウンドを降りた。リリーフに立った石原勇輝も打たれ、7回が終わった時点で0-9。甲子園大会でなければコールド負けという一方的な展開になった。




3回に東邦の石川にホームランを浴びた広陵の河野

 試合後に中井監督はこう語った。

「試合を始める前に負けてしまったような展開でした。完敗です」

 東邦の石川昂弥は強打で知られるスラッガーであり、最速143キロのストレートを持つ大会注目のピッチャーのひとりでもある。広陵打線は足を絡めて主導権を握ろうとしたが、石川に6回までわずか4安打。三塁も踏めず0点に抑えられた。8回にリリーフ投手から2点を奪ったものの、得意の競り合いには持ちこめなかった。

「河野はことごとく失投を打たれました。追い込むまでに甘い球が多くて、力のない球を打たれた。初戦がよすぎたんでしょう。これが実力です。1試合で6個も7個も盗塁されたのは初めてですね。相手は足の速い選手が多くて、思い切りもよかった。うちのやりたい野球を逆にやられてしまった」

 毎日練習を行なってきたグラウンドのスコアボードには、明治神宮大会で星稜にコールド負けした点数を残していた。あの屈辱を忘れないとの誓いを込めて。

 明治神宮大会で奥川に完璧に抑えられた後に、中井監督はこうコメントした。

「中国大会で勝つために西純矢くん(創志学園)の真っ直ぐを打つ練習をしてきたので、ストレートには対応できたんですが、131キロのフォークボールを投げられては……現時点ではお手上げです。奥川くんは変化球でストライクが取れる。ボールの速さでは西くん、ピッチングの精度では奥川くんでしょうね」

 冬場の練習の間に、甲子園で対戦する可能性のあった奥川対策を十分に練った。投手に近い距離から投げさせ、バッティングマシンは160キロに設定。しかし、センバツでは西とも奥川とも違うタイプの投手に抑えられた。

「石川くんは賢いというか、うまいというか……そういうピッチャーでした。インコースにズバッと投げておいて、外角に変化球を落としてきた。速い、すごいというピッチャーじゃない。間違ったら打てそうな気がする。初戦の映像を見た限りは『いける!』と思っていましたが、実際はストレート、スライダー、フォークをきっちり低めに投げられてしまった。低めのボールの見極めをテーマにしていたんですけどね」

 そう振り返った中井監督だが、試合途中から夏を見据えた戦いに切り替えた。この試合でベンチ入りメンバー18人のうち、17人を起用。6回で三番の金沢礼大を岑幸之祐に代え、7回に捕手の鉤流大遂をベンチに下げ、七番の渡部聖弥に新大吉を代打に出した。岑と新は見事にヒットを放ち、監督の起用に応えた。

「(今大会の)収穫は、初戦の河野のピッチングと、二番の中冨宏紀のシャープなバッティング。この試合で途中からレフトに入った岑がもう少し使えるかなと思いました。それ以外はまだまだ、すべてを鍛えていかないと。キャッチャーを秋山功太郎に代えたのは、夏の大会を見据えてのこと。鉤流と秋山のふたりで競争してもらわなくちゃいけない」

 新入生を含めれば、広陵の部員は100人を超える。夏に向けて、また競争が激しくなる。

 今のままでは全国で勝てない。いい選手がいればどんどん使う。中井監督の選手起用には、そんなのメッセージが込められていた。

「数多くいる部員の中で頑張った子がベンチに入るんです。うちにはまだたくさんの部員がいるので、もう1回、勝つために厳しい練習に取り組みます。

 試合前に選手には『楽しめ』と言いましたけど、こんな試合では楽しめない。技術があって初めて楽しめるんです。監督としてはすごく惨めだし、悔しい。でも、選手がこんな負けを経験してどう思うか。僕がいくら『やれ!』と言っても、夏の大会まであと100日もないですから。選手が敗戦の重みをどれだけ感じているのか、これからどういう取り組みをするのか、それが楽しみです。悔しさを爆発させて取り組むことが大事だと思います」

 このセンバツで歴代12位となる甲子園33勝目を挙げた中井監督は、この3カ月でどんなチームに作り直すのだろうか。