本命なき大混戦--。 昨年はドラフト1位2人を含む4人のプロ入り選手を擁した大阪桐蔭が春夏連覇を達成したが、今年は突出したチームがなく、どのチームにも優勝の可能性があると言える。 そのなかで、優勝候補の呼び声が高いのが早くもドラフト1位確…

 本命なき大混戦--。

 昨年はドラフト1位2人を含む4人のプロ入り選手を擁した大阪桐蔭が春夏連覇を達成したが、今年は突出したチームがなく、どのチームにも優勝の可能性があると言える。

 そのなかで、優勝候補の呼び声が高いのが早くもドラフト1位確実と言われるエース・奥川恭伸(やすのぶ)を擁する星稜(石川)だ。



大会ナンバー投手の呼び声高い、星稜のエース・奥川恭伸

 最速150キロの速球が注目される奥川だが、もっとも注目すべきは投手としての完成度。セイバーメトリクスに奪三振と与四球の比を表すK/BBという値があるが、奥川は昨秋の公式戦で奪三振82に対し、与四死球がわずか5でK/BBは16.4。メジャーリーグでも5を超えれば優秀といわれるが、その3倍以上の数値を残している。

 野手も1年時から中軸を打つ主砲の内山壮真、50メートル5秒9のスピードスター・東海林航介、強肩捕手の山瀬慎之助ら力のある選手が多いだけに、初優勝の期待はふくらむ。

 課題は、ビッグイニングをつくられるなど、チームとしての安定感のなさ。昨夏も済美を7回まで7対1と大量リードしていながら、奥川、内山が熱中症で足をつり途中交代するなどで逆転負け。

 秋も明治神宮大会決勝で札幌大谷相手に接戦を取りこぼした。奥川がすべて投げ切るスタイルではないだけに、昨夏の甲子園で逆転サヨナラ満塁本塁打を打たれた左腕の寺沢孝多、神宮大会で好投しながら敗戦投手になった荻原吟哉(ぎんや)ら、ほかの投手がどれだけ奮起するかにかかっていると言っても過言ではない。

 星稜を追うのが、昨秋の東海王者・東邦(愛知)、中国王者の広陵(広島)、昨年のセンバツ準優勝の智弁和歌山、さらに投打ともに充実した戦力を誇る明豊(大分)だ。

 ドラフト上位候補のスラッガー・石川昴弥(たかや)を擁する東邦は、チーム打率.386と伝統の強打が健在。とくに石川は昨秋の公式戦17試合で打率.474、7本塁打、27打点をマーク。今大会ナンバーワン打者として注目される。

 課題は投手陣。昨秋はエースと期待した左腕の植田結喜(ゆうき)が本調子ではなく、石川がマウンドに上がり孤軍奮闘した。東海大会準決勝では中京学院大中京に9回二死まで5点リードを許すなど、星稜同様、チームとしての安定感に欠けるのが心配材料だ。

 例年同様、分厚い戦力を誇るのが広陵。新チーム結成以来、秋は練習試合も含めて34勝1敗。敗れたのは神宮大会の星稜戦だけという強さを見せた。投手陣は最速148キロを誇るエース右腕・河野佳(かわの・けい)に加え、ともに140キロ近い速球を持つ石原勇輝、森勝哉の両左腕が控える。チーム打率.341の打線は一発こそないが、外野の間へ二塁打、三塁打を量産するライナーを放つ好打者が揃う。過去のセンバツでは3度の優勝。春に強いのも好材料だ。

 昨年のセンバツ準優勝の智弁和歌山は、チーム打率.372と自慢の強打は健在。捕手の東妻純平、二塁手の黒川史陽、遊撃手の西川晋太郎は昨年から主力として活躍しており、経験は豊富。また、昨年夏を最後に甲子園最多勝の高嶋仁監督が勇退し、後任に阪神、楽天などでプレーした中谷仁氏が就任。元プロ監督の采配にも注目が集まる。

 九州大会準優勝の明豊もチーム打率.375と強力打線がウリのチームだ。九州大会は4試合すべて2ケタ安打を記録。4割打者が4人いる打線は切れ目がなく、どこからでも得点できるのが強みだ。投手陣も駒が揃っている。2年生左腕の若杉晟汰(せいた)はスライダー、チェンジアップと変化球がよく、大畑蓮、狭間大暉、寺迫涼生の右腕3人はいずれも140キロ超えの速球派だ。

 このほか、忘れてはいけないのがドラフト1位候補の150キロ左腕・及川雅貴(およかわ・まさき)を擁する横浜だ。関東大会では準々決勝で春日部共栄(埼玉)に2対9とコールド負けしながら異例の選出。それだけ戦力があると評価されている証拠だ。

 昨夏の甲子園で12打数5安打と活躍したキャプテンの内海貴斗、1年時からベンチ入りして注目される度会隆輝(わたらい・りゅうき)らが並ぶ打線はチーム打率.353を誇る。カギを握るのは及川の投球。昨秋の公式戦は1試合平均与四死球が5と不安定さが目立った。目を見張る投球をするかと思えば、3回5失点の春日部共栄戦のように打ち込まれることもある。及川の出来が悪いときにどんな試合ができるかがカギになるだろう。

 これ以外には、三振を奪える球威あるエースを持つ春日部共栄、津田学園、履正社、明石商の戦いぶりにも注目。

 春日部共栄・村田賢一、津田学園・前佑囲斗(まえ・ゆいと)はともに140キロオーバーの速球を持つ上に制球力がある。履正社・清水大成はやや安定感に欠けるが、左腕から最速145キロをマーク。好調だと手をつけられない投球をする。明石商・中森俊介は昨夏の甲子園で1年生ながら145キロを記録。ひと冬越えての成長が楽しみだ。

 冒頭に触れたように、絶対的な力を持つチームが不在。それだけに、ダークホースの上位進出も十分にありえる。平成最後の甲子園大会となる第91回センバツは3月23日に開幕。全力プレーで最後まで目が離せない接戦が続くこと、盛り上がることを期待したい。