写真:宮崎義仁(左)/撮影:アフロスポーツ
以前にRallys特別インタビューにも登場いただいた「卓球界のレジェンド」宮崎義仁氏(日本卓球協会・強化本部長)の特別連載。

『世界卓球解説者が教える卓球観戦の極意』(ポプラ社)も上梓した宮﨑氏が語る、知られざる卓球の裏側。第一回では、誰もが一度は考える「昔の一流選手と今の一流選手、どちらが強い?」というテーマで語って頂いた。

年齢を重ねると卓球は上手くなる? 衰える?

卓球は純粋な運動能力よりも、俊敏性や巧緻性、頭の良さ、心理面の強さ、といった要素が重要になるスポーツだ。たとえば、バレーボールやサッカーなどと比べると純粋な筋力や運動能力を使う場面は少ない。なので、卓球の選手としての寿命は、他のスポーツよりもやや長いとされている。

そうは言うもののやはり、男子であれば35歳、女子なら32歳頃からだんだん衰えてくる。しかし、卓球のさまざまな技術というのは、年齢とともに衰えることはなくむしろ伸びていく。

たとえば、体操やフィギュアスケートといった競技は、10代後半から20代前半でピークを迎えるとされている。フィギュア選手が20歳の頃に飛べていた4回転ジャンプが25歳になった今は全く飛べない、ということもよく耳にする。

しかし卓球の場合は「年齢を重ねたからこの技ができなくなった」ということはほとんどない。なぜなら卓球の技は筋力を使うことよりも感覚的に覚えることで得られるものだからだ。

これは、自転車の運転のようなものだ。補助輪なしの自転車に乗れるようになるためには、練習して何度も転ぶが、一度乗れるようになったらもう体が覚えてしまっているので、その後高齢になっても乗れなくなるということはない。

ただし、自転車のペダルを踏み込むための足の筋肉が落ちたりだとか、周囲の安全を確保し、通行人を認識して避けるといった判断力が衰えたりはある。

それと同様に、卓球の技術それ自体ができなくなるということはないが、その技術を出せるかどうかの判断や、その事前準備で体をボールの来た位置に動かす、といった瞬発力や体力が衰えるということはある。

当然それが衰えてくれば、勝負には勝てなくなるだろう。だから、技術の向上と勝負に勝つことは別問題といえるのだ。

30年前の一流選手と今の一流選手が勝負したら?

さて、いよいよ本題に入ろう。

このように、卓球選手が持っている技術それ自体が衰えることはない。しかし技術が全く衰えていない選手であっても、若手の伸び盛りの選手に勝つのは難しい。

その要因となるのが、「技の数」だ。

たとえば、「チキータ」というのは今やできて当たり前とすらされている技術だ。しかし近年に新しくできた技術なので、今35歳以上の世代では、チキータをやる選手などいなかった。

したがって、今の選手と対峙してチキータを出されたら、返せない。返し方が分からないので、対応ができないわけだ。

チキータやYGサーブなど、昔の時代になかった技術を出されると、現代の若い技術についていけない。

今は特に技術発展のスピードが速いので、逆チキータ、みまチキ、みまパンチ、カットブロックなど、新しい技がどんどん出てきている。

仮に30年前の一流選手と今の一流選手が今のルールで戦ったら、全然話にならないだろう。今の選手が圧倒的に勝つ。30年前の選手と今の選手が、30年前のルールや用具で戦ったとしても、結果は同じになるだろう。

このような比較はナンセンスではあるが、それほど卓球は進化してきているということだ。

宮﨑義仁氏プロフィール

1959年4月8日生まれ、長崎県出身。鎮西学院高校~近畿大学~和歌山銀行。現役時代に卓球日本代表として世界選手権や1988年ソウル五輪などで活躍後、ナショナルチームの男女監督、JOCエリートアカデミー総監督を歴任。ジュニア世代からの一貫指導・育成に力を注いでいる。試合のテレビ解説も行っており、分かりやすい解説が好評。公益財団法人日本卓球協会常務理事、強化本部長。卓球国際新トーナメントT2 Diamondの技術顧問も務める。

※本コンテンツは宮崎義仁氏の著書『世界卓球解説者が教える卓球観戦の極意』(ポプラ社)の一部を引用、掲載しております。

文:宮崎義仁