「試合は安全上、100パーセントの力を発揮することができない。いかに質の高い練習を積み重ねていくかということが重要なのだ」と語ったのは、小材優生主将(人4=東京・早実)だ。航空競技とは、相手と隣り合ってゴールを目指すわけでもなく、仲間の声援を力に変えて勝つというわけでもない。上空1000メートルの中、自分で考え、判断しなければならない競技だ。だからこそ、小材は「積み重ね」で経験を積むことが重要だと説いた。

 大学に入学した頃、小材は航空部に存在自体は知っていたが、入部する決意にまでは至っていなかった。しかし、他サークルなどもいろいろ見た結果、ここに入部することを決めた。その理由としては、親の影響が大きいという。子供の頃から航空会社関係で働いていた親の姿を見ていて、その姿がいつの日か憧れに変わっていた。憧れの航空に関われるようになった1年生の頃は、小材にとっては一番楽しかった時期だった。その後も順調に上達していき、2年生の夏頃に1人でフライトするファーストソロをこなした。この出来事は4年間の中でも最も印象に残っている出来事の一つでもある。


小材のフライトはまだ続く

 しかし、衝撃的な出来事が起こる。大会中の事故によって当時の主将を亡くしたのだ。それに伴って航空部は半年間の活動停止になってしまった。この事故から、自分の競技がいかに危険な競技かということを改めて認識した。小材は、2年生は良いことも悪いこともあった年だと振り返った。3年生の4月から活動が開始されたが、かなりの制限があったため、思い通りに動くことはできなかった。そんな厳しい状況の中、小材は主将になった。もともとは訓練係志望であったが、事故を経て考えが変わり、航空部のためにもっと主体的に行動したいと思うようになったことがきっかけだった。主将になってからは、何を行うにも勇気を振り絞って動かなければならず、手探り状態だったという。だが、幹部中心にいろんなことを話し合い、考えることを意識して、部をまとめていった。

 後輩に伝えたいことはという問いには、「もっと部活にのめり込んで欲しい」と即答した。大会に出るには、フライトのライセンスが必要であり、そのライセンスを取得するためには、フライトの回数が重要なのだ。つまりは、「積み重ね」が大切ということだ。事故の影響のため例年よりもフライト時間が短かった4年生だからこそ伝えたいメッセージなのかもしれない。

 卒部をすぐに控える小材であるが、戦いはまだ終わっていない。2週間後に最後の大会である全日本学生選手権がある。小材は「やるべきことをやって、万全の準備で挑む」と意気込む。大会出場の機会にあまり恵まれなかったこともあり、この大会にかける思いは相当強い。「紺碧の空」に向かい、航空部4年間の思いを乗せて飛び立つ。

(記事 関飛人、写真 村上萌々子)