シーホース三河は22勝18敗で代表ウィークによる中断期間を迎えている。ポイントガードの橋本竜馬、エースの比江島慎がチームを去り、大幅な変更を強いられたシーズンは開幕5連敗と波乱のスタート。地区トップに立つことが当たり前の三河にとっては、初めてとも言える苦しい展開となった。それでもレギュラーシーズンの3分の2を消化した時点で、チームは勝ったり負けたりを繰り返しながらも、新しい『常勝チーム』の形を見せつつある。鈴木貴美一ヘッドコーチに、今シーズンのここまでと、これからを語ってもらった。

「育てると言いながらも、勝ちを求めて」

──橋本選手、比江島選手とチームの中核選手が2人抜けてのチーム作りがどう進んでいるのかをお聞きしたいのですが、大胆に若手を起用するという方針はどの時点で決めたのですか?

開幕前ですね。「今までいる選手を使ったほうが良いんじゃないか」という考えも、もちろんありました。前からいる選手を使って、昨シーズンに成功したこと失敗したことからルールを決めて戦えば、出だしはもう何勝かできたと思います。でも、新しく入ってきた生原(秀将)選手は若くて伸びしろがあります。そういう選手を育てるつもりがなければ、今までいた選手だけで戦うシーズンになってしまいます。もちろん、ポイントガードであれば狩俣(昌也)選手が頑張って勝てる試合もありますが、やっぱり基本として新しい選手を育てないとチームは強くなりません。

僕は金丸(晃輔)選手にしても比江島選手にしても、悪い時でも積極的なミスであれば大丈夫、というやり方で育ててきた自信があります。彼らの才能ももちろんありますけど、そうやって育てた選手が代表で活躍してきました。

昔は竹内公輔くん、それから古川(孝敏)くん、そして金丸、比江島ですね。その前には柏木(真介)選手がいました。彼は日立では2番ポジションでしたが、ウチに来てポイントガードになり、代表のスタートを任される選手になりました。網野(友雄)選手もトヨタ自動車では試合に出ていませんでしたが、ウチに来てスタートになり、代表でも先発するようになりました。

──『育てながら勝つ』は理想ですが、相手があるのでそう簡単には行きません。中地区を見ても首位の新潟とは7ゲーム差があり、2位には川崎がいます。今ここにいることに焦りは感じませんか? それとも、こんな経験は過去にもあるのでしょうか。

過去20何年かに、こういう経験が1回だけあります。佐藤信長と後藤正規。あの時ずっとプレーオフで優勝争いをしていたのに、2人が抜けた途端に5位に落ちました。佐古(賢一)がアキレス腱を切った次の年でもあり、キツかったです。でも、一番の大打撃は今回です。日本代表に選ばれるだけの2人ですよ。これが3番、4番だったらまだごまかせるんですけど、センターとガードはチームに与える影響が非常に大きい。今回は得点源の選手と、チームを鼓舞してまとめるリーダーの2人がいなくなる。今シーズンはキツいなんてあまり言っちゃうと「無理なのかな」って思われるかもしれませんが、我々はみんな1年1年勝負を懸けている。そこは育てると言いながらも、勝ちを求めてどこまで上げていけるか。僕は勝ちたいですから。そのために、今が一番仕事をしている時期ですね。

「新しい選手を育てることでチームは強くなる」

──若い選手がチャンスを与えられ、成長していく様を見るのはファンにとっても大きな喜び、見応えになると思います。その一方で、日本のエースにまで成長した選手に出て行かれるのはつらいのでは?

移籍するのは仕方のないことです。本人が自分にとってプラスになると決断したわけなので、それは誰のことも恨むわけじゃありません。それでまた新しい選手を育てていくことで、チームというのは強くなります。でも、最初はやっぱり大変でしたよ。優勝したメンバーは(桜木)ジェイアールと金丸選手しかいない。スタートの選手、しかも代表の選手が抜けるわけですから、最初は新チームを見るような感じでした。

──若い選手たちは思い切ったプレーで結果を出し、貴重な経験を積んでいます。先発ポイントガードに定着した生原選手、特別指定の岡田侑大選手、熊谷航選手をどう見ていますか?

生原くんを思い切って開幕からスタートにして。最初は彼も大変で、悩んだし苦しかったと思います。それでも、彼が良いプレーをする試合がどんどん増えてきています。彼はリバウンドが強いし、フィジカルも強い。そういう良いところを褒めながら使っていきました。1月以降は勝ち越しているので、若手で行くという選択は良かったと思っています。

岡田くんも最初は練習で戸惑っていました。チームメートは激しいディフェンスをして、ドライブで入って行こうとしても強いファウルをされて行かせてもらえないんです。いくら大学で良い選手だったと言っても、みんなプロでプライドがあります。最初はやっぱりやらせませんでした。でも、だんだんその激しさに慣れてきて、ちょっとルーズになると決めるようになってきた。結果的に、短い期間ですごく良くなりました。大学を出てプロになるのは勇気がいることですが、彼は自分の理想を貫いて結果を出しました。

熊谷くんは少し後に来たので、チームに慣れるのもう少しかかるかもしれませんが、それでもチームの良いスパイスになっています。あとは残りのレギュラーシーズンでどれだけチームを上げていくか。何とか間に合わせたいです。

「練習で一生懸命やって結果を残した選手を使う」

──若手を使うことで、これまでいた選手がモチベーションを失うことはありませんか? 例えば狩俣選手であれば「竜馬さんが出て行くなら自分が」という意気込みがあったと思います。

全く問題ありません。若手を使うと言っても、それは彼らが練習で一生懸命やって結果を残しているからです。今の岡田くんは他を納得させるだけのプレーを練習で見せています。逆に実績のあるジェイアールでも練習でダメだったらスタートから外します。実際、先日の試合でベンチに回ったのも練習であまり調子が良くなかったからです。狩俣選手があまりにもひどかった時はベンチにも入れませんでした。それで目の色を変えて練習をして、そこで結果を出したのでまた試合で使うんです。

Bリーグの中である程度強いチームには、大学の時はスターだった選手が集まっています。そこで勝ち残っていくには、まず練習で結果を出さなければいけない。僕らは練習中にプラスマイナスを付けています。この選手と組んだ時はプラス何点、というのをアシスタントコーチが全部記録する。5対5でマイナスだったら、それをどこかでプラスに持って行かないと試合では使わないと話しています。

──なるほど。日々の練習でハードにやっているからこそ、チャンスが来るわけですね。

例えば岡田くんが練習で何もできないのに、僕が「若手を育てる」と言って試合に使っていたら、チームも彼もダメになってしまいます。逆に岡田くんが練習場でみんなをやっつけているのに、若いからという理由で使わなかったら、彼は辞めますよ。

彼は何も言われなくても、練習で必死にあがくことが試合で使ってもらえることに繋がると信じてやっている。ハートで誰にも負けないのが彼の良いところで、経験のあるKJ(松井啓十郎)にも西川(貴之)くんにもガンガン行きます。

バーンとやられてるとシュンとしてしまう、これではプロとしてダメ。やられたらやり返す気持ちが必要です。そうやってプロの技術とプロのマインドを持った選手が生き残っていくんです。