NBAトレード・デッドライン@ウェスタン・カンファレンス編 多くのチームが思惑どおりに補強を成功させてトレード・デッドライン(トレード期限)を迎えたなか、明らかに負け組となったチームがある。それは、ウェスタン10位のロサンゼルス・レイカーズ…

NBAトレード・デッドライン@ウェスタン・カンファレンス編

 多くのチームが思惑どおりに補強を成功させてトレード・デッドライン(トレード期限)を迎えたなか、明らかに負け組となったチームがある。それは、ウェスタン10位のロサンゼルス・レイカーズだ。

 トレード・デッドライン後、笑うのはレイカーズだと、誰もが思っていた。

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今季からレブロンが加わり、ついにレイカーズ復活かと思われたが......

 時間を巻き戻せば、現地1月29日、ニューオーリンズ・ペリカンズのアンソニー・デイビス(PF)の代理人が公(おおやけ)にトレードを要求したため、デイビスは労使協定違反でリーグから5万ドル(約550万円)の罰金を科せられた。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 もちろん、デイビスも代理人も労使協定の内容を知らないわけがない。つまり、罰金を科せられてもペリカンズを離れたいという、強い意思表明だ。そして、そのデイビスのトレード最有力候補と言われていたのが、レイカーズだ。

 昨年9月、デイビスはリッチ・ポールという人物と代理人契約を結んだ。デイビスの移籍の意思が固いことをメディアに伝えたこの人物は、レブロン・ジェームズ(レイカーズ/SF)の代理人としても有名である。また昨年、デイビスはロサンゼルス郊外に750万ドル(約8億3000万円)の家を購入した。それらの事実を照らし合わせると、デイビスがパープル&ゴールドのジャージーを着るは時間の問題と、誰もが思うだろう。

 デイビス獲得のためにレイカーズはなりふり構わず、驚くような条件をペリカンズに提示したと言われている。その内容とは、ロンゾ・ボール(PG)、ブランドン・イングラム(SF)、カイル・クーズマ(PF)、ジョシュ・ハート(SG)、イビツァ・ズバッツ(C)、さらにはドラフト1巡目指名権2枠を提示したというのだ。

 しかし、ペリカンズはさらに1巡目指名権をもう2枠、計4枠を要求。これにはレイカーズもさすがに割が合わないと、デイビスから手を引かざるを得なかった。そして最終的に、デイビスはペリカンズに残留することになった。

 補強の予定が狂ったレイカーズは、その後、外角シュートがうまく、レブロンとの相性がよさそうなレジー・ブロック(SG)を獲得。さらにビッグマン2選手を放出し、マイク・マスカラ(C)を獲得することでロースター枠をひとつ空けた。この動きは、シカゴ・ブルズから解雇されたカーメロ・アンソニー(SF)の獲得に動くためと言われている。

 デイビスは獲得できなかった。だが、レイカーズは無難な補強でトレード・デッドラインを迎えたようにも思えた。しかし、事態はそれほど単純ではなかった。

 2月に入り、ペリカンズとの交渉が大々的にメディアに報じられると、レイカーズのアウェーゲームではブーイングが巻き起こるようになった。それは、クーズマやイングラムらに「レブロンがお前をトレードする!」とあおり、彼らの動揺を誘うようなものだ。

 その結果、トレード候補に名前の挙がったレイカーズの選手たちは、ゲームに集中できない日々が続くようになった。この影響によって完全にリズムを崩し、レイカーズは直近の10試合で3勝7敗と大きく負け越し。ウェスタン10位まで順位を下げ、プレーオフ出場圏内からも脱落してしまった。

 たまらず、球団社長のマジック・ジョンソンは選手たちとミーティングを行なったという。

「トレードで名前が挙がるのは、プロアスリートとして当然のこと。私は今のチームに満足しているし、今、ここにいる選手たちのことが大好きだ」

 マジック社長はそう言ったと報じられているが、一度離れた選手の心を再び掴めるかは未知数だ。レブロンを獲得し、名門復活の狼煙が上がったと思われたが、今回のトレードの不成立を機にレイカーズの未来は怪しくなってきた。

 一方、効果的なトレードでチーム力を着実に上向かせたのは、ウェスタン5位のヒューストン・ロケッツだろう。ディフェンス能力が高く、ロングレンジからのシュートも得意なイマン・シャンパート(SG)の獲得は、ジェームズ・ハーデン(SG)中心のロケッツのオフェンスにピッタリとフィットしそうだ。

 今季のロケッツは優勝候補とされながらも、スタートダッシュにまさかの失敗。チームにフィットしきれないカーメロ・アンソニーを早々と退団させるなど、迷走しているように思えた。

 しかし、クリス・ポール(PG)が故障したタイミングでオースティン・リバース(PG)を補強し、クリント・カペラ(C)が負傷で欠場を強いられたタイミングでケネス・ファリード(PF)を補強するなど、的確な動きでチームの立て直しに成功。カペラも復帰間近で選手層の厚くなってきたロケッツがどこまで順位を上げてくるか、プレーオフまで注目したい。

 そして今回のトレード・デッドラインを経て、来季以降に大きな可能性を秘めたチームと生まれ変わったのが、ウェスタン11位のダラス・マーベリックスだ。

 今季のマブスは、ルーキーのルカ・ドンチッチ(SF)が予想を上回る活躍でいきなり大ブレイク。今後はドンチッチを中心にチームを作ろうと決意したようだ。

 デアンドレ・ジョーダン(C)、ウェズリー・マシューズ(SG)、デニス・スミス・ジュニア(PG)、さらには将来のドラフト1巡目指名権2枠と引き換えに、ニューヨーク・ニックスからクリスタプス・ポルジンギス(PF)と3選手を獲得(マシューズはトレード後にニックスを解雇されてインディアナ・ペイサーズと契約)。また、ドンチッチ以前のエースだったハリソン・バーンズ(SF)も放出し、メンツを一新させた。

 ポルジンギスは現在、断裂した左ひざ前十字じん帯の治療中で、今季はこのまま全休する可能性が高い。だが、身長221cmの長身ながらスリーポイントシュートも打てる、リーグ期待のビッグマンが万全の状態でコートに復帰できれば、「ドンチッチ&ポルジンギス」という無限の可能性を秘めたデュオが完成する。

 さらにマブスは、今季オールスター初出場を飾るオーランド・マジックのニコラ・ブーチェビッチ(C)の獲得にも動いているという。それが成功すれば、スロベニア代表のドンチッチ、ラトビア代表のポルジンギス、モンテネグロ代表のブーチェビッチという、異色の「欧州代表トリオ」チーム誕生となる。

 現在、ウェスタイン・カンファレンスの首位を走るのは、リーグ連覇中のゴールデンステート・ウォリアーズ。そのウォリアーズを引きずり落とすチームが現れるのか、リーグ後半戦も注目したい。