三年連続の日本一を狙う福岡ソフトバンクホークスの松田宣浩選手。CS、日本シリーズでスタメン落ちの屈辱を味わった昨年から…
三年連続の日本一を狙う福岡ソフトバンクホークスの松田宣浩選手。CS、日本シリーズでスタメン落ちの屈辱を味わった昨年から巻き返しを図るプロ14年目のベテランに、「熱男」の原点となる大学時代のことを語ってもらった。

松田選手は双子の兄とともに岐阜の中京高校に進学し、2年生の時に甲子園に出場した。卒業後、双子の兄は名門の社会人野球部に進み、松田選手は亜細亜大学野球部からドラフト1位でソフトバンクに入団。当時の王貞治監督に未来の主軸として期待され、1年目の2006年から開幕スタメン出場を果たしたものの、2ヶ月で2軍落ち。その後は腐ることなく猛練習を重ね、常勝軍団の主力となった。
そんな松田選手が「あの4年間が今を作っている」と語る大学時代に得たものとは……
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亜細亜伝統の「やりがい」トレーニング

——亜細亜大学を選んだ理由を教えてください
「高校の野球部の監督が亜細亜大学のOBということもあって、高校の時から亜細亜大学の練習に参加させてもらっていた。ちょうど冬休みだったので、強化合宿に参加して毎年クリスマスはずっと大学で練習していました。大学の寮に一緒に住んで、お兄さん達によくしてもらっていたので、亜細亜大学しかないなと思っていました。」
——実際に大学に入学してどうでしたか?
「大学一年の時の四年生がちょうど松坂世代で、木佐貫(洋)さんや横浜高校で松坂さんとバッテリーを組んでいた小山(良男)さんとかドラフト候補の先輩がいて、衝撃でしたね。でもその中で、入学してすぐの春のリーグ戦からサードのレギュラーで使ってもらいました。チームが強かったので春も秋も日本一になることができました。」
——亜細亜大学の野球部ならではの習慣を教えてください
「下級生がグランドの整備をしたり、雑用をするのが、学生スポーツの常だと思いますが、亜細亜大学は逆でした。下級生が先に練習を終えて、上級生が残ってグランドを整備するというのが伝統としてありました。上級生は、後輩が使いやすいグランドに、という後輩を思う気持ちが強くなりましたし、後輩だったころには、先輩に対する感謝が芽生えましたね。」
「あと、大学の時は毎日野球日誌を書いていましたね。書いて気付くこともあるし、見返すこともできる。練習のことはもちろん、本を読んで心に響いた言葉とか、ニュースで気になったことを書いていましたね。書くということは今にも繋がっていて、『今月は何本ホームランを打つ』とか目標を書いています。書くこと、書いたものを目にすることで目標への意識が明確になります。」

——他にも独特な練習方法などはありましたか?
「『やりがい』というトレーニングがありました。二人一組でする、手押し車のトレーニングなのですが、やる甲斐があるから『やりがい』と呼ばれていました(笑)。一年生の時に、木佐貫さん、小山さんと一緒に大学日本代表に選ばれたのですが、当時の亜細亜大野球部の生田コーチに『代表の合宿に行っても毎日欠かさずとトレーニングをしなさい』と言われて。僕ら三人と、それに興味を持った日大の村田修一さんとかも一緒になって、ジャパンの合宿先でも亜細亜のトレーニングをやっていましたね。今でもオフにOBで集まって練習をする時には『やりがい』をやったりしますね。」
——寮での生活はどうでしたか?
「寮では一年生から四年生まで各学年一人ずつ四人部屋で、消灯時間は22時半でした。高校生の時より野球に打ち込めたし、人生で一番多感な時期に濃密な時間を過ごせて、仲間との絆はより深まりましたね。」
——野球以外の思い出があれば教えてください。
「基本的に練習と学校の授業の往復でしたね。東京僕は坊主頭で普通に授業に出ていて、一般学生の友達もたくさんできました。大学に行かなければ出会うことのなかったような友達にも出会いましたね。」
——亜細亜大学の四年間で得たものは大きいですか?
「よく、亜細亜の野球部は厳しいと言われますが、僕は厳しいって思ったことはないですね。人間的に成長させてもらいました。あの4年間が、今を作っている、頑張らせてくれていると思っています。いい時も悪い時もありましたが、チャレンジできる精神力を作ってくれたと感謝しています。4年間、アツい気持ちを持ってやってくることができました。」

——最後に、大学野球について。
「プロにいくなら一年でも早く足を踏み入れるに越したことはないですけど、僕は大学で4年間野球をやってよかったと思っています。同級生やOBのつながりなど、今でも生きています。毎年オフに亜細亜出身のプロ野球選手で集まって大学のグランドで練習をしているのですが、そこで後輩たちに何か感じ取ってもらえれば、少しでも大学に恩返しができているのかなと思っています。毎年のように亜細亜出身のプロ野球選手が出てくるのは、先輩たちから受け継いだそういった伝統があるからだと思います。プロにいかないとしても、大学で得たことを次のステップに生かせるはずです。だからこそ、もっと大学スポーツに注目してもらいたいですね。高校野球はあんなに盛り上がるのに。野球に限らず、もっと大学スポーツが盛り上がるように、メディアにももっと取り上げて欲しいですね。」
※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]